第百二十五話 敗走
冒険者や騎士たちがざわめく中、第一王子がパンパンと手を叩く。
「そういう事だ。これから街に戻り、地下のシェルターを使えるようにする。我が国では、あの災厄をどうする事も出来ない。高額の討伐報酬を冒険者ギルドに提示し、誰か英雄が倒してくれるのを待つしかない」
そりゃそうだな。流れ星をぶつけても死なないような真性の化け物だ。アレを倒すにはあの流れ星の魔法より凄まじい攻撃が出来ないと難しい訳で。ボロボロになってた第二王子が手にしていた宝剣も朽ち果ててしまっていた。あれならもしかして期待してたんだけど。
異論を挟む者は無くいようだ。第一王子と何人かは何か話し合ってるようだけど、それ以外は帰り始めている。
「おいハルト。俺たちと来い」
帰ろうと思っていた僕たちに、ボロボロな集団が声をかけてくる。ジェイルたちだ。全員ドラゴンのブレスを浴びたみたいで、破れかけた服にほぼ下着状態だ。
「あんたたち、まだそんな事言ってるの? ハルトは言ってるじゃない。一緒には行かないって」
エリが前に出て僕をかばう。言ってないんだけど。なんだかんだでジェイルたちは強い。ドラゴン戦では最初しか目立ってなかったけど。来いって言ってるって事はどっかに行くって事なんで、ドラゴンが戻ってくるこの国から逃げようと思ってた僕は、少しそれもありかと思った。
周りの冒険者や騎士は僕たちに構う事なくうな垂れながら帰っていく。
「嬢ちゃんには聞いてない。俺はハルトに聞いてるんだ。嬢ちゃんはハルトの事が好きなんだろ。それならハルトの好きにさせてやるべきだろう?」
おお、ジェイルが真面っぽい事言っている。
「悪いけど、少し考えていいかな」
ジェイルたちに付いて行ったらどうなるだろう? 昔と変わらない日々、雑用をこなしながらただジェイルたちに付いていく。最低限の衣食住は保障されている。金魚のフンと言ってもシルバークラスの冒険者パーティーの一員。パーティーから離れた時は少しはチヤホヤされるかもしれない。
今まで通りエリたちと一緒に行ったら……何かのはずみでエリに殴り殺されたり、何か不興を買ってエリに殴り殺されたり、ラッキースケベのツッコミでエリに殴り殺されたり。うん、殴り殺される未来しかみえない。
命は大事だ。何物にも代えられない。
「ハルトッ! 考える事なんか無いでしょ。この人たちはあなたの事を殺そうとしたのよ。それにあなたは強い。ジェイル! ハルトと戦いなさい。あんたが勝ったらハルトを好きにしていいわ」
えっ、考える事も許されないのか?
「ほおぅ。嬢ちゃん二言は無いな」
ジェイルが僕に近づいて来る。おいおい、怪我してんじゃないのかよ。素手で万全じゃなくても僕如きは楽勝だと思ってるって事か。
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