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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第八章 王者・無双編

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735/735

735 念話


 いよいよ試合場にAブロック一回戦第一試合を戦う面々が現れた。

 試合場は周囲を鋼鉄の壁で覆われた円形で、観客席はその壁より上方、すり鉢状に設けられている。

 四方に巨大な篝火が焚かれ、炎に照らされて敷き詰められた白砂が照り映えていた。

 戦士たちの血がより引き立つために撒かれた白砂だ。

 鋼鉄の壁の高さは五メートル。

 厚さは五百ミリ。

 常識的に考えれば道具もなしに飛び越えるのは無理な高さだ。

 だがコロッセオの現チャンプであるウシツノの脚力であれば跳躍のみで乗り越えることも可能だろう。

 ほかにもアーカムの誇る戦闘怪人ケンプファーは多彩な能力を持つ集団だ。

 カエル族でなくとも超えるだけの身体能力を有する者がいてもおかしくはない。

 そのため大会ルールとして試合中いかなる理由であろうとも壁を越えて客席に降り立った時点でその者は失格となる。

 また逆に観客席より第三者によるサポートを受けた時点でも該当者は失格となる。

 万がイチ相手を貶めるために狂言サポートを演じた場合はその者に極刑が下される。

 多大な金が動くギャンブルの対象となる大闘技会キングストーナメントでは、過去同様の事件が頻発したことを受け、妖精女王の厳命により重罰が科されるようになったのだ。

 それは単に命を奪われるとか、長い期間の拘禁、又は過酷な地での労役などといった生易しいモノではないらしい。

 というのも実際に罰せられた者の運命を知る者はごく少数に限られ、恐ろしい伝聞ばかりが広まっているからだ。

 その恐怖をあおる噂が功を奏したか、ここ五大会、およそ五十年もの間、あまり大きな不正は起きずに済んでいた。

 そのこと自体は多くの関係者、観客にとっても歓迎すべきことであった。

 ルールさえ順守すれば大会は最高のエンターテインメントであり、最大のドリームギャンブルなのである。


 一回戦を戦う二チームが顔をそろえた。

 それぞれが〈風神門〉〈雷神門〉と名が付いた入場口から登場した。

 風神門から出てきたのは今大会一番人気の剣聖ウシツノ率いる闘技場チャンピオンチームだ。

 メンバーは歴代最長不敗記録を誇る豹頭族パンテラの黒豹ことアナトリア。

 一年近く前に颯爽とデビュー以来、瞬く間にコロッセオのアイドルとなった剣の舞姫ダーナの二人である。

 対するは何の因果か、アナトリアと同種族、パンテラの若き三人の傭兵崩れだ。

 この三人は組み合わせ決定以来、不遜な態度でアナトリアに臨んでいた。

 それは試合開始が近付くほどにより顕著に表れており、ダーナはそれが気に入らなくてイライラしていた。

 だが当のアナトリアは平然としている。

 三人が自分を卑しめる何事かに思い当たる節でもあるのだろうか。

 向かい合う二組のその様子は観客たちにも伝わっているらしく、一回戦から俄然盛り上がりを見せ始めていた。


 試合会場を最も高い位置から見渡せる場所にひときわ豪奢な観覧席が設けられていた。

 このブースはアーカムを支配する妖精女王ティターニアと、今大会の景品ともいえる姫神、藍姫のサチがいた。

 女王同様に煌びやかなドレスを着せられたサチはあまり興味もなさそうに一段奥まった座敷に引っ込んでいた。

 女王ティターニアは試合場をじっくりと見下ろせる位置に腰かけている。

 その女王にそっと耳打ちをしている者がひとり。

 内務卿のデルフィーンだ。

 改造手術を受けたイルカ型のケンプファーであるが、戦闘力よりも知能がより発達を遂げたため、内政が主な役目となったこの国での変わり種だ。


「邪龍オベロンより念話が。ロカ王国を発ったドワーフ族の新造戦艦を捕捉、追撃したところ、ガム・デ・ガレ内にて消息を絶った由にございます」

「いつじゃ」

「は、それがその、二日前でして……」

「ずいぶんと遅い報告ではないか」


 邪龍オベロンはアーカムの領空全域、および周辺を巡回する守護龍である。

 アーカムに接近する敵対勢力、又は未知の脅威に対して独立した防衛行動を許可されている。

 その成果は逐一念話という、道具を一切必要としない妖精、あるいは精霊にのみ行使できる連絡手段でティターニアの元へと届けられていた。


「は、さすがに超磁気嵐の影響は無視できず、さらにヴァルフィッシュとも交戦したようでして」

「負傷したのか?」

「致命傷とまではいかないそうですが、しばらく眠りたいと」

「フム」


 しばし妖精女王は思考にふけった。

 邪魔をせぬようデルフィーンはその場でジッと待機する。

 一歩でも動いて女王の思考を邪魔したとあっては如何なる咎めを受けようものか。

 会場の熱気とは裏腹に、デルフィーンは肝を冷やすことのないよう努めることに集中した。

 しかし不思議なもので、耳をつんざくような歓声や会場の興奮も女王の思考を阻害することはないのである。

 それでもデルフィーンは静かに待った。


「おそらく不時着しているはずじゃ。いずこか」


 女王が静かに声を発したのでデルフィーンは氷のような待機時間から解放されたことを知った。


「航路から推察するにフィフスよりだいぶ南側、我がアーカム北端に近いノンゴッズ砂海かと」

「ディバマンド山にも近いか」

「はい」

「そのあたりの国境線は曖昧じゃったな」

「マハラディア亡国の跡地ですので」

「捜索隊を送るのじゃ。指揮はホイシュレッケの隊にさせるがいい。名目上は救援活動じゃが、ただしロカ王国に連絡は不要じゃ」


 デルフィーンがあくどい笑みをこぼした。


「新造艦の秘密を奪うのですな?」

「まずは友好的にじゃ。強情なようであれば必要と思われる技術者だけ連れてくるがいい。他の者の口は封じてな」

「かしこまりました。そうそう、オベロンからもうひとつご報告がありました」

「なんじゃ?」

「飛空艇にはハイランドの聖賢者も同乗していたそうでございます。おそらく目的地はここであったかと」

「そうか」


 内務卿が退出すると女王は再び試合場に注目した。

 今にも試合開始の銅鑼が鳴り響かんとしていた。


「聖賢者が行方不明と知れば、あの剣聖はどんな反応を見せてくれるかのう」


 会場中の興奮とは別種の、異質な歓喜を覚えて、妖精女王はほくそ笑んだ。


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