魔族の企み・次なる目的地
更新です。バレンタインのおまけのようなお話とはちがい、こちらは本編です
「あら、やっぱりレイブンはやられちゃったのね。」
「仕方あるまい、黒翼の魔族が片翼を切り飛ばされてはな。」
暗い密室に、2人の魔族。甘い事をしている…という訳でもないようだ。
「まあ、積極的に私達を狙っている訳でもなさそうだし。とりあえずは放置でいいと思うわよ。それよりも、魔王様復活の目処がたったわよ。」
「ほう?確か優秀な巫女の贄が必要だったはずでは?確保出来たのか?人間どもにバレたりは?」
「巫女の贄が必要だったのは、魔王様が復活に使う肉体、そして力を安定させるため。つまりこのふたつさえどうにかなれば、巫女の贄は必要がなくなる。」
「ふむ、それはそうだろう。魔王様の肉体は秘密裏に捕らえた人間どもを使えばいいだろうしな。しかし、力の安定はどうにもならないから、巫女の贄が必要だったのであろう?」
「ええ、でも、これを見て頂戴。」
そう言って、女が男の前に何かを差し出した。途端、男の表情が変わる
「これは……聖杯ではないか。あの忌々しい王国の王都最深部にあるはずの聖杯が、何故…」
「ふふ、あの子が潜入しているのは知っているでしょう?その子が聖杯を見つけ出してね、でもいくらその子でもバレずに持ち出すのは無理だから、そこは私の能力でちょっとね」
「そうか…そう言えば、絶望の魔族が潜入していたのだったな。あやつならば下手をしないとは思っていたが。」
絶望の魔族。それはかつて多くの人間を皆殺しにし、転生者が呼ばれる原因となった魔族。この世のもので彼に叶うものは居ないと伝えられるほど、絶対の実力をもつ最悪の魔族。恐るべきは潜入してもバレない様に立ち回り、あまつさえ聖杯という最重要警戒物を持ち出せるように動けるその頭の賢さか。
「あら、私だって頑張ったのよ?」
「流石は魅惑の魔族と言った所か、男を騙すのは得意という訳か。」
ふふん、と魅惑の魔族と言われた女が笑う。その動作は色気がある。流石は魅惑の、と言われるだけはある。
「では、そろそろ私は行くとしよう。魔王様復活の祭壇が、そろそろ完成しそうなのでな」
「完成したら教えてね」
そう言って男は部屋から立ち去る。立ち去ったことを確認し、魅惑の魔族が一言
「さて、そろそろ次の段階かしら…邪魔されなければいいのだけど」
そう呟いて、闇に溶けていった。
「葵くん、次の行動はどうしますか?」
「そうだなぁ…次に魔族とあった時までには、ある程度戦えるようになっておきたい。だから体を鍛えたり技術を磨きながら…」
「磨きながら?」
「居住区を改良しようかなって」
俺たちはあの後街に一泊させてもらい(戦いの疲労で動けない程消耗していた)、教会に戻ってきた。
それから居住区の改装は、今でも特別困っている訳では無いのだが、それでも古いところはあるしベッドも新しくしたい。何よりも、制作魔法の練習になる。
「なるほど、それで材料を買ったのですね。そうと決まれば早速取り掛かりましょう?異能禁止ですから、私も手伝いますからね。」
「それじゃあお願いしようかな、まずは古い柱を新しくしないと。」
そう言って取り掛かった改装、異能を使わなかったので1週間ほどかかったのだが、その分新しくなり満足の行く出来に仕上がった。それから石材などが余ってしまったので協会内部の古くなった石なども取替えた。
リア曰く、古くなった石などを取り替えるぐらいなら良いらしい。協会自体を丸々改装したいとなると、王都に通さないとダメらしいが。
さて、やる事もやったし、次の目的地を探さないとな。
「そう言えば、葵くん。サイフスと言う街に、ダンジョンがあるのは知っていますか?」
「いや、知らなかった。どんなのなんだ?」
「下に下に続いているもので、何層あるのかは不明。けど、一定階層ごとにボスがいて、そのボスを倒すと報酬として希少な金属や強力な武器、杖などが手に入るらしいです。力試しにはもってこいかと」
「まんまゲームかつテンプレなダンジョンだな…よし、そこに行こうか。確か近かったよな?」
「ええ、7時間ほどでつきますよ。明日から行きましょう、準備しますね!」
リアの提案により、目的地は決まった。今まで俺が行った街は基本魔族がいたりしたので(いなかった場合もあったが)今回も油断せずに行こう。武器の手入れをもっもしっかりしないとな。
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