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転生者は巫女と共に踊る  作者: マスター
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黒翼の魔族再び

あまりにも短かったので、連続投稿です

「なんでお前がここにいるんだよ…」


「あ?んなもん、あの土竜は俺が手懐けたからに決まってんだろ。せっかく少しばかり力を与えて暴れさせてやってたのに、そいつが気絶したようだからな。」


「死んだわけじゃないのにわかるのか、便利だな。」


「おうよ、面白そうだから来てみたが…こりゃあいい、ガキ、てめぇは殺したいと思ってたんだよ…!!」


そう言って魔族の男は体から膨大な魔力を放つ。しかしその魔力の質は、王都で出会った時よりも下がっていた。舐められている訳では無いのだろうから、恐らくほかの原因だ。


「へぇ、前より魔力の質が下がっているくせに俺を殺せると?魔族も面白い冗談が言えるんだな。」


「貴様…いい度胸だ。たかが人間に使ってやるには惜しいが、貴様の度胸に免じて使ってやる。喜べ…この黒翼の魔族、レイブンが…………」


「貴様を地獄に送ってやらぁぁぁぁ!」


そう言って男は翼を展開し、黒い霧のようなものに全身が包まれていく。攻撃系の気配ではないから恐らく魔族自身の肉体をどうにかするものだろう。今のうちに、全員逃がすべきだ。


「リア、街の人達の避難はどうなってる?」


「魔族が現れた時点でパニックですね、けど、全員魔族とは逆の方に逃げています。」


「そうか、念の為に街に行って避難を手伝ってきてくれ。俺はこいつを仕留める」


「ダメです、異能使っちゃダメって言いましたよね?私も、一緒に…」


「ダメだ!!」


思わず、強く言ってしまう。魔族の男…レイブンがやろうとしていることは分からない。けど、異能を使わないで勝てるような甘い事態にはならないだろう。それに…


リアが傷付く可能性があるなら、それは避けたい。無意識のうちにそう思っていた俺もいた。


だが…


「嫌です。私だって戦います。それに、葵くんはあの時私を守るって言ってくれました。私だって葵くんを守ります」


「…下がってろよ、あくまで相手は俺がやるから。」


「分かってます、私は、葵くんのサポートをしますから」


そう言ったリアは、戦いの最中だと言うのに笑顔だった。こうまで強く言われては何も言い返せない。目の前の魔族を倒して、生き残るのみ。



「マタセタナ、ツヅキヲハジメルゾ」


「辛うじて自我があるような状況だなおい。なんだそれ?」


「オレタチマゾクノオクノテ、キョウカダ。」


「自分の命を犠牲にして、一時爆発的な力を得るって言う、本に書いてあったあれか…。まあ、いい。こちらも本気でやらせてもらおうか…!!!」


そう言って俺は、刀に魔力を通し、杖の起動準備を始める。ぶつかり合っている中、異能抜きで魔法を使うのは不可能だろう。今のうちに、刀に使っている魔力以外の魔力のほぼ全てを使い、2つの魔法の準備しておく。


「イクゾ」


そう呟いた途端、レイブンの姿が消える。否、普通の人の目には消えたように見えるほど高速で動いていたのだ。


俺には、辛うじて見えていたが。嫌な予感がして、咄嗟に左に刀を振るう。俺の刀とレイブンの手がぶつかり、衝撃波が発生する。


「ちっ…くそ早くなりやがって!!」


そう言いながら俺は、レイブンの首に向けて刀を振る。レイブンがバックステップで交わし、反撃として首目掛けて腕を振るってくる。中々の速度だが、俺もバックステップで距離を取っていたため当たることは無い。


かん、かん、かん、と、刀と腕のぶつかり合いが幾度も発生する。ただし、全くの互角ではない。


速度も、力も、俺が劣っている。異能抜きの俺にあの速度や力は出すことができない。辛うじて致命傷は貰っていないが、かすり傷はかなり負っている。それだけで済んでいるのは自我が、理性が残っていないからだろう。攻撃が単調なのだ。だが、異能抜きではやはり押し切れない。


「せいやあああああっ!」


気合いとともに相手の右腕を下から切り上げてはじき飛ばし、そのまま振り下ろして切断した。レイブンは一旦距離を取り、魔法を使用しようとしている。


血が止まり、腕が切り飛ばされた腕がくっつこうとしている。恐らく回復魔法だろう。させねぇよ。


「デスフレア」


左手を前に出し、杖に待機させていた1つめの魔法を起動する。


「ガっ…」


レイブンが使用しようとしていた魔法が、デスフレアに燃やされて中断される。途端、レイブンが翼を展開し、デスフレアの炎の圏内から離脱し、空に逃げる。


「シね…ガ…キ…」


空にいたはずのレイブンが、後ろにいた。この速度は、間に合わない。俺が1人なら異能を使うしかなかった所だ。1人なら、ね。


「アークシールド」


リアの声とともに、俺とレイブンの間にアークシールドが展開される。


「ナイスリア!」


そう言って、俺は2つ目の魔法を起動する。その魔法は


「グラビティ!!」


レイブンの体重を重くして、動けなくする。そして俺は残りのありったけを刀に注ぎ込み、一気に解放する。


「これで、終わりだ。消え失せろぉぉっ!!!!」


眩い光に包まれた刀を、右から斜めに振り下ろす。俺の刀はレイブンの体を一刀両断にし、余り余った威力は周辺に大きな振動として伝わった。


「はっ…まさか俺様を倒すとはな…。ガキ、名前は?」


「葵だ。」


「葵、か。はっ…まさかただの人間に俺様がやられるとは、思ってもいなかったぜ。」


「そうか、そりゃどうも。」


「ガキ、ほかの魔族……魅惑の魔族には気を付けな。あいつは他の魔族にすらなにか隠してやがる…」


「なんで、敵の俺に?」


「気に入ったからだ。俺様を殺したやつに…簡単に死なれちゃあ、俺様の流廃るだろうが…」


そう言った後、レイブンの体が砂となって消えていった。


「有難うリア、助かったよ。」


「こちらこそです、有難うございました。私に攻撃が向かないように、常に私を庇いながら戦っていましたよね?」


「どうだかね。けど間違いなく、リアがいなければ異能を使っていた所だよ。異能の代償として激痛がはしれば、どうなってたか分かんなかったし。」


「役に立ったのなら、良かったです。それに異能を使ったらお説教ですから。」


それは勘弁願いたい、と笑いながら、街の状況を把握するために街に戻るのだった。

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