掴んだ勝利、必要な犠牲
俺が放ったデスフレアに全身を焼かれるカルマ。その隙に俺はカルスが持っていた剣を拾う。ちょっと借りるぞ。
「デスフレアが使えるとは…油断した。だが、その程度で俺は倒せんぞ?そもそも魔族は魔法に対する耐性を持ってるんだ、完全には防げないまでも致命傷にはならねぇ」
「いい事を聞いた、物理攻撃なら効くんだな?」
「なっ!?いつの間に!?」
そう言って俺は、カルスの剣術をコピーする。あの極められた剣術、その全てをコピーし…ぶつける。
「調子に…乗るなぁぁぁぁ!!!!」
「なっ!?」
突如、身体が重くなる。やべぇ、動けねぇ……
「重力制御魔法、グラビティ。流石にこれに対抗は出来ねぇようだな。少しは楽しめたぜ?あばよ…」
突き出される剣。避けることも出来ない。俺はこのままでは死ぬ…どうすれば…どうすれば…待てよ、重力制御…制御?
そこまで考えて思いつく。そしてそれを実行する。
「ぐら、びてぃ!」
思った通り、グラビティは重力を制御する。重くすることも、反対に軽くすることも出来るようだ。
「ふう…グラビティ、克服完了」
「化け物か貴様、なぜグラビティを使える!?魔力量はどうなっている!?」
「ンなもん知らねぇよ…さて、上級魔族とやら、覚悟しろよ??」
そう言って、グラビティで重力を軽くし一瞬で後ろに回り込む。そのまま、剣で切りつける。当たる瞬間グラビティで重くし、威力を引き上げる。さっきまでとは違う、一方的な展開。このまま行けば危なげなく勝てるだろう。だがそう簡単に行くとは思えない。
「こうなれば…全力を持って貴様を葬ってやる…見せてやる、これが魔族の奥の手…魔獣化だ。その代わり自我を失うが…もう関係ねぇ。テメェらをけし…て…ぐ、がああああああああぁぁぁ!!」
やはり、簡単には行かなかった。自我を失う代わりに、自らを高める魔法…か、これは真似したくないものだ。そう考えながら、俺はカルマを睨む。
「確かにこれは化け物だ…勝てる気が全くしない。少なくとも、5分前の俺ならな。」
そう言ってグラビティを起動し、相手を重くする。同時に自分を軽くし、突っ込む。心臓を壊せば流石に死ぬはずだ。だが…
「がっあぁぁぁぁ!!!!!!!」
「くっ!?グラビティを抜けやがった…!?っ、しまっ!?」
迫り来る刃、今から避けるのは間に合わない。腕の1本は切られる覚悟で、心臓に穿つためにそのままつっこむ。
「葵くん!!!」 「葵さん!!」
そんな声が聞こえる。左腕は切り落とされた。だが想定の範囲内だ。こちらの刃も、届いている。
「左腕1本ぐらいなら、いくらでもくれてやるよ。残念だったな…俺の、勝ちだ」
「がっぁぁ……」
ばたん、と音を立てながら倒れるカルマ。起き上がってくる気配はない。倒した、守り抜けた。向こうからリアが掛けてくる。何か言っているが何も聞こえない。そのまま俺は意識を手放した。




