2人目の神官
カルスと名乗った男の言っていることが嘘ではないことをリアに確認し、自己紹介を済ませた俺達は付き添いの人がここに来るのを待つことにした。
「そう言えば…なぜカルスさんがこの近くに?魔獣の事を知っていたのですか?」
「いや、それは知らなかった。俺がここに来たのは虹りんごを回収するためだ。」
「虹りんご…?それって、光リンゴの木から取れる虹色のリンゴか?」
「そう、その虹リンゴだ…葵、だっけ。もうすぐそれが成る時期だからな、虹リンゴは魔獣を引き寄せる性質がある、その護衛に来たのさ。」
「やっぱりそうか…虹リンゴには、魔獣を引き寄せる力が…。 カルスと言ったか、虹リンゴにならもうなっているぞ。」
薄々考えていた、虹リンゴの魔獣を引き寄せる可能性。だからここに魔獣が寄ってきたんだな。
「何…?そんなことはねぇ、時期まではまだ1週間ほどあるはずだ。見間違えたんじゃねぇか?」
「そうですよ、まだ時期まで時間がありますから、疲れていて見間違えたんじゃ…」
リアにまで言われているが、そんなことは無い。あれは確かに虹だった。
「見間違えるかよ、これでも目はいい方だ。2日ぐらい前に、木の周辺に魔獣…ブラッドウルフが数体表れてな。そいつら自体は浄化したが、そいつらは明らかに虹リンゴを狙っていた。何かの理由があるのかまでは知らないが、時期が早くなった可能性はあると思う。」
「その少年が言っていることは正しいですよ、カルス。」
「…誰だ!?」
後ろからそんな声が聞こえ、思わず誰何しながら振り返る。と、そこにはいかにも美人と言う言葉が似合う女の人がいた。
「警戒すんな坊主、俺の仲間だ。美人だろ?」
「確かに美人な女性だとは思うが…仲間か、済まん。」
「美人だなんて上手いことを。私はイシス、リアと同じく教会に仕える神官です。」
「イシスさんは私のお姉さん的な方でもあります、強くて頼れるかっこいい人ですよ。」
リアとイシスが感動の再会で喜んでいる、が今はそんな暇はない。後でにしてもらおう。
「楽しんでるとこ悪いけど、今はそんな場合じゃない。イシスさんは何をしてたんだ?」
「…っと、そうでしたね。虹リンゴの確認をしてきました。ついでに魔獣のお掃除を。」
「とりあえずあんたら2人が実力者ってことだけはわかった。」
「お前が思ってるよりつえぇよ、俺もイシスも。で、イシスよ…虹リンゴの時期が早い理由、分かったか?」
「辺り一帯の結界が破られようとしていたけいせきがありました。恐らくその影響で大気のマナが減って、早めに時期を迎えたのではないかと。」
「なるほど…結界が弱まったから、魔獣が抜ける事が出来た。んで魔獣は引き寄せられてここに来たって事だろうが…おい坊主、お前戦えるか?」
「ブラッドウルフが相手でいいなら、自衛できる程度には戦えるとは思うぞ。けどそれ以上だ。俺はこの間出たブラッドウルフが初戦闘だ、戦力として期待されても困るかな。」
「前線は俺とイシスでなんとかなる、俺とイシスが気付かない所のフォローを、坊主。お前とリアの嬢ちゃんに頼みたい」
「私は大丈夫です、お二人がいるのなら安心ですし」
「俺も構わない、が…敵の場所、分かってんのか?」
「ある程度はな、恐らくは森の奥…もうひとつ、神を祀る神殿があってな。使われていないが、それでも神殿は神殿だ。そこにある聖なる物が目的だと、俺らは睨んでる。」
「一応聞くが…行くか?」
「黙って見てるより行った方が安全だろ。」
こうして、敵陣に乗り込むことに決めたのだった。




