大物との遭遇、事態の悪化
教会に戻ってきた俺は、傷口を綺麗な水であらって、寝る事にした。朝起きるとリアは…
「…この傷口、どういうことですか」
怒っていた。黙って行動したのだから当たり前だ。
「散歩中に転んだんだよ」
と言ってみたものの、嘘を見破る力をもつリアにそんな嘘が通用する訳もなく
「勝手な行動は絶対ダメですからね!!!」ときつく怒られてしまったものの、そのあとは何事もなく2日ほど経過した。
この2日間、国のことや魔獣のこと、文字や宗教について教えてもらったかいもあってある程度は理解できるようになっていた。だがこの2日で魔獣に何か異変があったらしく、ついに事態が動き出した。
「…なあリア、魔獣の鳴き声が聞こえないか?」
「そうですね、そしてもうすぐこの近くまで来ると思います。1体や2体ならまだしも、それ以上となると相手にできるのも限界があります。どうしますか、葵くん」
「ひとつは逃げる、もうひとつは戦う…逃げるにしろ、どこにって話だからな、戦うしかないんじゃないかとは思うけど…問題は出来るかどうかだな」
ここに思い入れなどなければ、必要な物だけもってすぐに逃げる所だ。必要のない時まで戦うことは無いと思う。が…思い入れがあるのなら話は別だ。
「本当なら逃げるのがいいのですけど…逃げたくは、ないのでしょう?」
「まぁ、な…戦うとしようか。」
そう言いながら、警戒しつつ外に出たのだが…
「葵くん」
「分かってる…なんで、死んでるんだ?」
リアにそう返し、周りを見渡す。これは明らかに誰かがやった後だ。となると近くにいるはずなのだが…
「おうおう、久しぶりだなリアの嬢ちゃん。そっちの坊主は初めましてか。悪いな、たった今終わった所だ。」
「…誰だ?助かったから礼は言うが…ここに来れること自体、普通の人間じゃありえないんじゃなかったか?」
魔獣を、あの一瞬で倒してしまったという実力の持ち主。ここに入れるということ。明らかにやばいオーラを放っている、男の手に握られた剣。只者ではないことぐらいバカでもわかる。
「俺の名前はカルス。何、王都で騎士団の団長をやっていてな。偶然近くに居たもんでよ、ギルドから直接の依頼があってな…。この森に魔獣がいるなんざ普通じゃねぇ。付き添いが神官なもんで、ここに入れたんだよ。」
騎士団長…超、大物だった




