何事もありませんでした
「さて、葵くん、行きましょうか。その、はぐれると危ないので…手を、繋いでもいいですか」
「ん?ああ、いいよ。繋ごうか。」
そんなやり取りをして教会を後にする。森を歩いている間は
「よく迷わないなリア、何か場所でもわかってるの?」
「いつも通っていれば慣れちゃいますよ、そのうち葵くんも慣れますよ」
「そういや、葵さんから葵くんって呼び方になったよな」
「い、嫌…でしたか?」
「いや、逆。さんよりくんのほうが距離が近くなった気がして嬉しいよ。だからそのままでいい」
「良かった…」
なんていう何気ない会話をしながら仲良く歩いていた。
街には数時間かかるので、持参している水を飲んだり、途中休憩を取ったりしながらだいたい4時間後に街に着いた。
「これが…街……って、広くねぇ!?」
「そりゃあ街ですから、村ではないですし。それでも、このシーフの街は王都ほどではないですが広い方ですけどね」
「王都、ここより広いのか…と言うか、俺その辺知らねぇなあ…後で教えて貰ってもいい?」
「帰ったらお勉強ですね、では、まずはギルドに行きましょうか」
「りょーかい、付いてくよ、女の子1人だと危ないだろうし」
「心配してくれるのはありがたいですが、神官に手を出す馬鹿は居ませんよ。」
「ここがギルドか…思ったより広いな」
「ついてきてください、離れないでくださいね。」
リアに手を引かれるまま、ギルドの中に入る。
「いらっしゃいませー!…って、神官様ですか?何か用ですか??」
「魔核の買取をおねがいしたいのですが」
「かしこまりました、では物を見せて頂けますか?」
そんなやり取りを俺は見ながら、神官ってもしかして凄いのかな…と今更ながらに考えていたのだが
「これは…ブラッドウルフの魔核ですね、まさかブラッドウルフが森に?」
「ええ、偶然遭遇してしまったので…私の横にいる葵くんと共に倒しました」
「…弱そうなのに、強いんですね」
「ずいぶんな言い草だなおい…否定はしないが。それで
、早い話いくらなのよ、それ」
「核の状態が限りなくいい…そうですね、金貨1枚で」
「だそうだけど…リア、どう?」
「かまいません、それでお願いします」
そう言いながら金貨1枚を受け取り、何事もなくギルドを後にする。他の奴らから絡まれるのを警戒していたのだが、後で聞いた話によると神官とその付き添いには一切の手だしをしないらしい。教会に行けなくなるとのことだ。
「んじゃあ、買い物しよっか、リア」




