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☆♡/弟は姉のおもちゃ ~煉獄篇~

「○□☆◇▽/弟は姉のおもちゃ ~激闘篇~」の続きです。

〈 ☆ 〉


 ユニゾンのライブに行った。

 盛り上がった。

 ライブ終了後、帰り道、電車内でのこと。


「……寝ちまったな、愛香」

「すごく楽しんでたからね。疲れたんだ」


 愛姉は隣の俺に頭をもたれかからせ、すぅすぅと寝息を立てている。

 夜の電車の長椅子に、俺、愛姉、アネキの順で座っている格好だ。


「SF同好会の奴らとも、もっと話したかったな」

「先輩たちは電車が逆方向だから」

「ま、明日の学校で会おうと思えば会えるけど。で、どうだった? 良かっただろ?」

「ライブ? うん。最高だったよ。衣留いとま先輩と使野つかの先輩が盛り上がってくれたおかげで、俺もちょっと吹っ切れたっていうか」

志乃しのの奴は直立不動の仏頂面だったけどな」

「大丈夫だったのかな夜光院やこういん先輩。使野先輩に無理に誘われたんじゃ」

「殺伐コンビはいつも一緒じゃなきゃ気が済まねーみてえだからいいんじゃねーの? それか、実は志乃は嫌がってたけど、血で血を洗う激闘の末に真桜まおが主導権を得たのかもしれねえ」

「怖い」


 かたん、ことん、とリズムを刻む電車の中。乗客は割と少なく、快適だった。


 それにしても、俺をオモチャにするとか言った割にはむしろ楽しませてくれたな……ある意味不気味だけど……


「それにしても、俺をオモチャにするとか言った割にはむしろ楽しませてくれたな……響お姉さまありがとう……」

「心を読んだ上に捏造するのをやめろ」

「そんな宗一クンにプレゼントがある。既に渡した」

「え?」

「チケットの裏を見てみろ」


 俺はライブチケットの半券の裏を見た。

 そこには手書きで“宗一をオモチャにできる券”と書いてあった。


「え?」

「今頃、蘭子や真桜や志乃もこれに気づいてるだろうな。愛香も家帰ったら気づくだろ。明日の学校、特に真桜がノリノリでいろいろやりそうだな」

「は?」

「ま、そういうわけで」


 姉貴は凶悪な笑顔で俺の肩を叩いた。


「生きて帰れよ」






〈 ♡ 〉


 自室で呆然としていると、「弟くーん」という声がしたので、窓を開ける。


 胸元の開いたパジャマを着ている愛姉が、隣家の窓から顔を出していた。


「……愛姉、どうしたの」

「チケットの裏にこんなのが書いてあったんだけど、これなに?」

「ひぃぃぃっ!?」

「尋常じゃない反応!?」

「ご、ごめん……。それ、姉貴の悪戯だよ。適当に捨てといて」

「えー、思い出のライブのチケットだし、とっておきたいな」


 姉貴の奴、チケットの捨てにくさも利用しやがったな……。


「そ、そう……。で……まさかそれ、使わないよね?」

「使わないよ~。弟くんがかわいそうだもん。もー……響と弟くんが仲良いのはいいけど、あんまり度を越したいたずらしないようにって響に言っておかなきゃね」

「天使……」

「えっ?」

「な、なんでもない。じゃあ……今日はありがとう」

「あ、待って!」

「ん?」

「ハーフパンツ、前後ろに穿いちゃってるよ」

「……ああ、ほんとだ」


「もう……」

 愛姉は窓の柵に腕を乗せ、その上に胸を乗せ、そのまた上から体重をかけて呆れるように微笑んだ。

「しょうがない子だなあ、弟くんは」


 むにゅ、と潰れてぷりん、とした胸から必死で目を逸らし、「直しとくよ。おやすみ」と答えて窓を閉める。オモチャのように心を転がされた俺は、電気を消して、寝た。

 明日は愛姉の言葉を支えに、先輩たちの猛攻を乗り切ろう……。

「♪†▼/年下は年上のおもちゃ ~爆轟篇~」へ続きます。

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