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元勇者の嫁ですが、なにか?  作者: (=`ω´=)


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面談ですが、なにか?

 いろいろと話し合いをした結果、

「型どおりの面接をするよりは、一度時間を取ってお互いの考え方なんかを確認してみよう」

 ということになった。

 完爾とユエミュレム姫、千種とその白石さんとで食事でもして、少し長めにお互いの思っているところを軽くはなしてみて、正式な決定はそのときの感触次第、ということになる。

 そういうやり方の方が、お互いに納得できるだろうしな、と、完爾も思う。

 すぐに千種がみんなの時間を調整し、都内の小料理屋の個室を予約した。


 数日後、集合場所に現れた白石さんは、履歴書の写真で見るよりは若く見えた。千種のはなしでは中学生になる息子さんがいるということだったが、とてもそんな年齢には見えない。ついでにいうと、外資系の企業でバリバリ働いていたキャリアウーマンという経歴からなんとなく想像する外見からも少し隔たっている気がした。

 ちょっと丸っこい顔と体型をしていて、近所の気さくなおばさん、という印象だ。

 とりあえず、挨拶をして名乗り合ったあと、予約していた小料理屋へとむかう。

 千種が予約していた小料理屋は、内装が落ち着いた感じの、いい雰囲気の店だった。照明が少し暗めで、ビジネス関係の打ち合わせよりも親密な男女がデートに利用する方が似合っているような雰囲気もある。ま、実際にはどちらの層も利用しているのであろうが。

 そんなくだらないことを思いつつ、完爾たちは店の人に個室へと案内された。座敷ではなく、テーブル席だった。

 四人が席に着くとすぐに飲み物を聞かれ、最初の皿が配膳された。飲み物は、せっかくの和食だし、ここはいい酒を置いていると千種がいったので、全員が日本酒を選択した。

 ユエミュレム姫もこれでなかなかいける口だし、白石さんも弱くはないらしい。


「この間のテレビ、観ましたよ」

 しばらく歓談してから、まず白石さんがそう切り出してきた。

「先輩に行方不明になった弟さんがいるってことは、以前に小耳に挟んではいたんですが……まさかこうして、直にお目にかかる日が来るとはねえ。

 しかも、こんな綺麗なお嫁さんまで連れて」

 そういって白石さんは、ころころと笑った。

 白石さんは、千種のことを「先輩」と呼ぶ。

「まあ、確かに、こいつがいきなり庭先にぬぼーっと突っ立っていたときには驚いたもんだけどな」

 そういって、千種は完爾の方を見た。

「なにせ、中学を卒業した時以来だろ? かなり面変わりしているわ、けったいな格好をしているわで、最初は気の触れた不法侵入者にしか思えなかった」

 完爾はむこうの世界に十八年も滞在していた計算になる。成長期のただ中にむこうに渡ったこともあり、背も体重もかなり増えた。外見的にも、かなり変化をしていた。

 そういわれても、不思議はないのであった。

「おれの方はすぐに姉のことがわかったから、一生懸命説明しましたが」

 完爾から見て、そのときの千種は、正直、「老けたなあ」という印象は持ったものの、さほど面変わりしているようにも見えなかった。

「それからいろいろあったわけだけど……今はこうして白石に仕事を頼もうかな、というところまできました」

 千種は、そう結ぶ。

「こんな妙なはなしを持って行ける先は、正直、あんま多く思い当たるわけでもないしな」

「魔法の普及活動、それも、より無害な方法で、でしたっけ?」

 白石さんは、また笑い声をたてた。

「去年の夏あたりからいろいろあったけど、確かに誰にでも気軽に頼めるお仕事ではないわよねえ。

 本当、うちの娘が好きなライトノベルか深夜アニメみたいな」

 それから白石さんは声を潜めて、

「それで、どこまでまかせて貰えるの?」

 と、訊いてくる。

「どこまで、といわれましても……」

 まだ、採用すると決まったわけではないんだがな……とか思いながら、完爾は答える。

「……まずは、採用する条件とかについて話し合いませんか?」

「ああ、そうねえ。

 それはそうだわ」

 白石さんはそういって、また笑い声をあげた。

 よく笑う人なだな、と、完爾は思う。

「報酬などはともかく、それ以前に、わたくしたちの想定するところを理解してくれる人でないと困ります」

 ここではじめて、ユエミュレム姫が口を開く。

「自分の思惑だけを重視して勝手に動く人は、必要としません」

 単刀直入な物言いではあったが……同時に、完爾たちが求める人材について、正確に言い表してもいた。

「ええ。

 当然、そうなるでしょうね」

 白石さんは、笑顔のまま頷く。

「まずなによりも、完爾さんやユエミュレムさんのヴィジョンを理解し、賛同する人でないといけない。

 それは、理解しています。

 なにしろ魔法といったら……悪用しようと思えばいくらでも悪用ができるものなんでしょう?」

 逆に、そう聞き返されてしまった。

「そういうことです」

 完爾は、頷く。

「悪用にも気をつけなければいけませんが、それ以外に特定の勢力を贔屓したりしてもいけません。

 情報の公開は、公平に。

 それと、世間に対する影響力を考えて、少しづつ、段階的に行おうと思っています」

「できるだけ、刺激を与えないように……ですね?」

 白石さんは、そういってまた頷く。

「完爾さん。

 ひとつ訊いていいかしら?

 年末の東京湾でやったようなことができるのなら、もっと高圧的に振る舞って、自分の言い分を通すこともできたでしょうに……なぜ、そうしなかったの?」

「正直なところ、波瀾万丈な生活はむこうで飽きるほどしてきましたんでね」

 完爾は、憮然とした表情になってそういった。

「せめてこれからくらいは、平穏な生活を送っていきたいと思っています」

 その完爾の返答を聞いた白石さんは、盛大に笑い声をあげた。

「先輩の弟さん、想像していた以上に面白い子ねえ」

 ひとしきり笑ったあと、白石さんはそう続ける。

「でもその答えは、とても真実味がありますし納得もできます。

 そうよねえ。やっぱり、平穏な生活が一番よねえ。

 いいでしょう。

 その平穏な生活を守るための魔法普及活動、微力ながら協力させて貰います」

「ええと……いいにくいのですが、こちらはまだ、白石さんを採用するとは決めていないのですけど……」

「あらやだ。

 そうよねえ。まだ採用されていないんだった!

 わたしったら……」

 白石さんは、また、声をたてて笑う。


「今回募集しているのは、今後の方針などについても有用な意見を積極的に提案してくれるような、一種のブレーン的な役割を果たす人材です」

 完爾は、淀みなく説明をする。

「おれたちもいろいろと頑張ってきたつもりですが、おれは社会経験が不足しているし、ユエはこちらの世界の事情にあまり明るくはありません。

 こちらの姉もいいアドバイザーではありますが、別に本業を持っていますし、いつまでも頼りっぱなしというわけにもいきません」

 頭の中で何度か反芻して練習してきた説明なので、スムーズに口にすることができた。

「その辺の事情は、先輩から一通り説明を受けています」

 白石さんも、頷いてくれた。

「あなた方夫婦の意向に沿って、円滑に、トラブルを極力減らしながら、効果的に魔法を普及させるため……ですね?」

「そうです。

 今まで、こうした身内でなんとかやってきましたが、これからは世界中を相手にしてやっていかなければなりません。

 いや、それはもうすでにはじまっているのですが、これからはますます忙しいことになるでしょう。

 だから、そろそろ身内だけではなく、仕事量に見合った組織作りが必要になってくるのではないかとわれわれは考えています」

「そうですね。

 仕事量を考慮すると、なんらかの組織は必要となってくるでしょうね」

 白石さんは、いつの間にか真顔になっている。

「やはり、会社形式を考えているのですか?」

「人を集めて使う場合、会社形式が一番やりやすいと思います」

 完爾は即答した。

「魔法の存在自体、ようやく周知されはじめたばかりですし……会社なら、普通に求人をすればいいだけですから」

「そうねえ。

 今の段階だと、いきなりNPOとかは難しいか」

「それと……魔法の知識は、どう考えてもお金になります。

 工業とかに応用すれば、かなり画期的な製品ができるそうですし。

 ここで供給源のおれたちが変に無欲な態度を取りはじめたりしたら、かえって猜疑心や反感を買います」


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