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異世界の迷宮都市で治癒魔法使いやってます  作者: 幼馴じみ


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27/89

歯。

 「......シキ、行ったの? しかも、貸しきりにしたの? ひ、一人で?」


 俺は娼館に行こうとしたけど行ってない。

 貸しきろうと思ったけど貸し切ってない。

 特に使い道も無いし、十万ゼニー全部使ってしまおうかと少し考えはしたけれど、考えただけだ。

 まだやってない。

 未遂だ。

 無実である。


 「そ、それは、ほら、まぁ、なんていうかさ......」


 俺は膝の上に座るユエルの後頭部に視線をやり、そしてルルカに視線を送る。

 アイコンタクトだ。

 今、その話は不味い。

 ユエルの前では、詳しいことは話せない。


 ゲイザーは俺を娼館に誘った。

 しかし、それをユエルに知られてはいけない。

 ユエルのご主人様は金で女を買うような、そんな人間ではないからだ。

 清廉で、高潔で、優しいご主人様なのである。

 娼館なんかには誘われないし、行こうとも思わない。

 うんちだってしない。


 そうでなければユエルのあの、キラキラとした尊敬の視線は得られない。

 ユエルに持ち上げられることは、今の俺の楽しみの一つなのだ。

 ただでさえ、最近はエリスの態度がきつくなってきている。

 ユエルの笑顔で癒されないといけない。

 尊敬の視線を浴びなければいけない。

 ユエルの理想のご主人様像を壊すわけにはいかないのである。


 俺のアイコンタクトにルルカはゆっくりと頷く。

 わかってくれただろうか。

 ルルカは察しが良い。

 きっとわかってくれるはずだ。


 「わ、わかってるよ。うん、シキも......男、だもんね? そういうことしたいときもある、よね? しょうがないって、ちゃんとわかってるから」


 全然わかってない。


 ルルカは顔を赤らめ、しきりに指を組んだりほどいたりしながら、目線をあっちにこっちに向けている。

 ふと目が合うと、パッと顔を逸らされた。

 駄目だこれ。


 「わかってない! お前は絶対わかってない!」


 「わ、わかってるから。ちゃんと分かってるから。男の人は、その、た、溜まっちゃうから......そういうところに行きたくなるんだって、わかってるから」


 わかってくれてありがとう。

 でもそっちじゃない。

 いつもは胸を触らせたり押し付けたりしてくるのに、なんで今に限ってこんな反応なのか。

 純情か。


 気を遣ってくれているようで、ユエルにわかるような決定的な単語が出てこないことだけが救いだろうか。

 ユエルは話の流れがわからないようで、首を傾げて何か考えこんでいる。

 これならユエルの方は後で適当に誤魔化せそうだ。


 あとはルルカの勘違いをどう正すかだけれど......。


 「勘違いなんだよ、そうだ、後で、後で話そう!」


 「う、ううん、いいから、誤魔化さなくても大丈夫だから。わたしはそういうの、気にしないから!」


 気にしないでくれてありがとう。

 でも誤魔化しているわけじゃない。

 俺はそもそも娼館に行ってない。

 貸し切ってお代官プレイをしてみたい気持ちはあったけれど、行ってはいないのだ。


 どうする。

 どうやって誤解を解く。

 いや、そもそも気にしないと言ってくれているんだから、誤解を解く必要は無いのかもしれない。

 しかし、このままだとルルカの中で、俺は娼館に通う人間。

 しかも、臨時収入があればその金で娼館を貸し切って豪遊するような駄目な人だと思われてしまうだろう。

 事実俺はそういう人なわけだけれど、他人からそう思われるのはよろしくない。


 やはり、誤解は解かねばならない。

 そんなことを考えていると――


 「え、えっと、ヒュージスライムの件は残念だったけど、何かおいしい話があったら誘ってね? ま、また来るから」


 ――ルルカはもう用はすんだからとばかりに椅子から立ち上がろうとしていた。

 立ち上がって引き止めようにも、膝の上にユエルが乗っているためすぐには立ち上がれない。


 「ちょ、ちょっと待っ......」


 俺は、逃げるように治療院から出て行くルルカを、そのまま見送るしかなかった。





 ルルカが帰ってから、ユエルに花屋の話は秘密にするように言い含めたり、「男の人は溜まるって、何が溜まるんですか?」なんて聞いてくるユエルの頭を撫でて誤魔化したりしていると、買い物に行ったエリスが帰ってきた。


 そして夕食。

 エリスが作った料理が、テーブルの上に並べられている。


 「なぁエリス、俺のシチュー、肉が少なくないか?」


 テーブル越しに正面に座るエリスの表情は、不機嫌そのものだ。


 「さあ、気のせいじゃないかしら」


 最近、エリスの態度には棘が混じるようになった。

 治療院を買い戻した直後は凄く優しかったのに。

 以前、風呂場でエリスが悲鳴を上げた時、心配で風呂場の様子を見に行ったことがあったあたりから機嫌が悪くなった気がする。

 どうやら風呂場に蜘蛛の死骸があったらしく、エリスはそれが俺の仕込みなんじゃないかと疑っているらしい。

 とんでもない話である。

 もし冤罪だったらどうするんだろうか。


 まぁ、冤罪か冤罪じゃないかは置いておくとしても、最近エリスの機嫌はすこぶる悪い。

 このあたりである程度ご機嫌をとっておかなければ、以前の二の舞になってしまうだろう。


 というわけで――


 「エリスって、本当に美人だよな。スタイルも良いし、まさに理想の女性って感じがするよ」


 ――エリスを褒めることにした。

 女性関係で困ったら、とりあえず褒めておけば良い。

 褒める動機には打算しかないが、別に嘘をついているわけじゃない。

 エリスも、褒められて悪い気はしないはずだ。


 「......だから、お風呂を覗いたの?」


 機嫌の悪そうな、苛立ち混じりの声。

 ......どうやら、エリスは大分根にもっているようだ。

 そう簡単には許してくれそうに無い。

 少なくとも、キメ顔で「エリスだからだよ」なんて言える感じでは無いだろう。


 しかし、ここにはユエルだっているのである。

 俺がエリスの風呂を覗いていたなんて、そんな根も葉もないことを言われては困る。


 「覗いたなんて、そんなわけないだろ? エリスの悲鳴を聞いて、何かあったんじゃないかって思ってさ。それだけなんだよ」


 俺がそう言うと、無言で、ゴミを見るような目で睨んでくるエリス。

 今すぐにでも舌打ちしそうな表情だ。

 やっぱり誤魔化されないか。

 日頃の行いが悪すぎたのかもしれない。

 少し話題を変えた方が良さそうだ。


 「あ、あー......そうだ、このシチューの肉.......ファングラビットだろ? あの筋張った肉をここまで柔らかくするなんてエリスは凄いな。口の中でほろほろ崩れる感じで、凄く美味いよ」


 「それ、ただの鶏肉よ」


 「......んんっ、いやぁ、それにしてもこんなに美味しい料理が作れるエリスは本当に凄いよ。濃すぎず薄すぎない味付けで、バランスも取れてる。食べる人のことをよく考えてるよな。いつも感謝してるよ。きっと良いお嫁さんになるな」


 エリスはムッとした顔で返事こそしないものの、皮肉で返したりはしない。

 この調子だ。

 何度も褒めていけば、「もういいわよ、しょうがないわね」なんて言い出すかもしれない。

 とりあえず、もう一押ししてみよう。


 「ご、ご主人様、わたしも少しお手伝いしました!」


 このまま追加でエリスを褒めようとしたところで、横からユエルの声。


 「ユエルも良いお嫁さんになれるなぁ」


 「っ......!」


 俺がそう言うと、ユエルは顔を赤くして、俯きながら恥ずかしそうにはにかんだ。

 エリスとは違う、素直で可愛らしい反応だ。

 あんまりかわいいものだからついつい頭を撫でてしまったが、ユエルはそれに返すように、頭を擦り付けてくる。

 かわいい。

 ユエルは本当に褒め甲斐がある。

 もっと褒めたい......ところではあるけれど、今はエリスの機嫌を取ることが優先である。

 未だにエリスの機嫌は微妙なラインなのだ。


 「そうだ、エリスも治療院の仕事と家事で、疲れてるだろ? 後でマッサージでもしようか?」


 「それはいらないわ」


 即答されてしまった。

 どうしてだろうか。

 良い考えだと思ったのに。

 他に何か、エリスの機嫌を取る方法は......。


 「あぁ、そうだ、花があった。これ買ってきたんだよ。綺麗だろ?」


 俺がアイテムボックスから花束を取り出すと、エリスは驚きに目を見開く。


 「廊下にも飾ってあったけど、随分沢山買ってきたのね」


 呆れたようにエリスがそう言うが、そんなエリスの頬が少し綻んだのを、俺は見逃さなかった。





 夕食を終えて、ユエルと風呂に入った。

 俺達が出てから入れ替わりでエリスが入ったが、今度は蜘蛛を仕掛けたりはしていない。

 しばらく、エリスにセクハラはできない。

 以前、治療院を追い出された時、俺は学んだのだ。

 どこまでセクハラしても大丈夫かを確かめるということは、大丈夫じゃなくなるまでセクハラするということだと。


 風呂に入ったら、あとは寝るだけだ。

 寝巻きに着替え、アイテムボックスから歯ブラシを取り出し、歯を磨く。

 この世界にもちゃんと歯ブラシはあるし、歯磨き粉もある。

 流石に現代日本のものと比べれば質は良くないけれど。


 そしていつものように、リビングのソファーに腰掛けながら、シャコシャコと歯を磨いていると――


 「ご主人様は、料理の上手な人が好きなんですか?」


 ――先に歯を磨き終わったらしいユエルが、こんなことを聞いてきた。

 突然どうしたんだろうか。

 あぁ、俺が散々エリスの料理を褒めたからか。


 どうだろう。

 上手いか下手かで言えば、それは上手い方が良いだろう。

 ユエルがどれだけ料理ができるかは知らないけれど、出来ないよりも出来る方が良い。

 それに、多分そう言った方が、料理に取り組むモチベーションにもなるだろう。

 俺は歯を磨きながら、頷く。


 「やっばり、そうなんですね......あと、あの、さっきの、ご主人様が......エリスさんのお風呂を覗いたって、本当なんですか? ご主人様は、胸の大きいエリスさんみたいな人が好きなんですか?」


 握り込んだ歯ブラシがベキリと折れる音がした。


 「違う、ユエル。それは違うよ。俺はエリスの悲鳴が聞こえたから、心配で見に行っただけなんだ。覗きじゃなくて、心配で見に行っただけなんだ。いいか? もう一度言うぞ? エリスのことが心配で、様子を見に行っただけなんだ。決して覗きなんかじゃない。不可抗力、不幸な事故だったんだよ。あと、関係は無いけど、ユエルもそのうち大きくなるから大丈夫だよ」


 ユエルはゆっくりと頷くと、「大きく......」なんて呟きながら、自分の胸をペタペタと触りはじめた。

 思考は胸の方に逸れているようだ。

 一瞬俺の行動に疑問を持たれているのか、とも思ったけれど、多分これはエリスの巨乳に対するコンプレックスが原因だ。

 ヒヤっとした。

 嘘がバレたのかと思ってしまった。


 ユエルは自分の胸をペタペタと触り続けている。

 確かに、毎日あのエリスの巨乳を見ていれば劣等感を感じてしまってもおかしくはない。

 けれど、この話はお終いだ。

 この話を続けても、嫌な方向に行く予感しかしない。


 そして、歯磨きを再開しようとして気づいた。


 「歯ブラシが......」


 先端に近いところで、綺麗に二つに折れてしまっている。


 歯ブラシの棒部分は木製である。

 大人の握力でちょっと握りこめば、折れてしまう程度の強度しかない。

  ユエルの言葉に驚きすぎて、ついつい力をこめてしまっていたらしい。


 アイテムボックスの中を漁ってみるが......替えは無いようだ。

 そういえば、前にもうっかり踏み折ったんだった。


 どうしようかと考えていると、ユエルが自分の歯ブラシを手に持って、じっとみつめているのが視界に入った。

 何を考えているのかは知らないが、念のため、やんわりと釘をさしておこう。


 「誰かの歯ブラシを借りるっていうのも、良くないからなぁ」


 仕方が無い。

 中途半端に磨いてしまって少々気持ち悪いけれど、明日の朝に歯ブラシを買いにいって、それで磨こう。

 そう考えたところで、ユエルに声をかけられた。


 「ご主人様」


 ユエルが、俺を見ている。

 手には、いつの間に拾ったのか、折れた俺の歯ブラシの先端を持って。

 既に、歯磨き粉は塗られているようだ。

 そしてニコリと笑って、こう言った。


 「私が、お手伝いします」


 二、三センチ程度しかない歯ブラシの先端部分を手に持って、お手伝い。


 言わんとしていることはわかる。

 ユエルは、あの小さい歯ブラシの先端を使って、俺の歯を磨くつもりなのだろう。

 しかし、前歯ぐらいならあの小さなブラシでなんとかなるとしても、奥歯はどうなる。

 まさか、自分の指ごと俺の口の中にブラシを入れるつもりなのだろうか。

 いや、いくらユエルでもそんなことはしな......いや、やる。

 ユエルならやりかねない。


 嫌な予感しかしない。

 止めるべき。

 やめさせるべきだ。


 「ユエル、今日は歯磨きはもう良いから、それをしまってくれ」と、俺は言おうとした。


 けれど、それは叶わなかった。

 俺が口を開いた瞬間――スルリと口の中に、ユエルの指が入ってきたからだ。

 口を閉じることができなかった俺の喉からは、言葉にならない声が漏れる。


 ユエルは「私に任せてください」と言わんばかりの表情で俺に笑いかけると、そのまま俺の歯を磨き出す。


 客観的に見てみよう。



 歯ブラシが無いから、幼い少女奴隷の指で歯を磨く。



 文句無しにアウトだ。


 止めなければならない。

 止めなければならないけれど、既にユエルの指は俺の口内に入り込んでいる。

 やめさせようにも、喋ろうとすればユエルの細い指を噛むことになってしまうだろう。

 それはできない。


 どうしようかと悩んでいるうちにも、ユエルは俺の歯をブラシで優しく擦り上げ、歯茎を指でなぞるようにマッサージし、頬の内側をこそげとるように磨いて行く。

 ユエルは歯磨きに集中しているようで、俺の開いた口を覗きこむようにして見ている。

 咳でもすれば触れてしまいそうな程の至近距離で。

 ユエルの生温かい吐息が、首筋にかかる。

 風呂に入ったばかりのせいか、ユエルが動く度に石鹸の香りがふわりと広がる。


 やっぱり駄目だ。

 これは駄目だ。

 流石に不味いと俺が顔を引くと、ユエルは俺の肩を押し――


 ――俺をソファーの背もたれに向けて......押し倒した。

 俺が深くソファーに倒れこみ、ユエルがその上から覗き込むような体勢だ。

 ......角度の問題で、口の中が見えづらかったのかもしれない。

 そうだと信じたい。


 ユエルは俺の口の中を食い入るように見つめながら、指を動かしていく。

 前歯を、犬歯を、奥歯を、そして歯の裏、隙間......丹念に、丹念に時間をかけて磨き上げているのがわかる。


 「んっ......」


 そして、やはり口の中は見にくいのか、ユエルが姿勢を変えた。

 ......俺の腰の上に跨るような姿勢に。

 確かにしっかりと座ったほうがやりやすいとは思うけれど、なんでよりにもよってこの体勢なのか。

 それでもまだ見難いのかユエルは座る位置を小刻みに変えながら、俺の口の中を磨いていく。


 シャコシャコと、ブラシの音が。

 ピチャピチャと、水音が。

 そして微かに、ユエルの吐息が聞こえる。


 そのまま、ユエルは歯を磨く。

 ユエルはふとももをもじもじと動かしたり、頻繁に俺の上で座り直したりしてはいるけれど、歯を磨いているだけだ。

 それだけなのだけれど。


 なぜ、ユエルは顔を赤くし、耳まで高潮させているんだろうか。


 いや、わからないでもない。

 歯磨きという状況ではあるけれど、これは意識をすればユエルの指にずっとキスをしているようなものだ。

 きっと、ユエルは歯磨きを続けているうちに意識してしまたのだろう。

 そして、一人で盛り上がってしまったのかもしれない。


 ふと、ユエルの指が歯を磨く手を止め、俺の唇を撫でる。

 何度も、何度も擦るように。

 唇に指を這わせて行く。


 歯磨きは終わったのだろうか。

 終わったのならどいて欲しい。

 俺はロリコンでは無いけれど、こんな至近距離で顔を見つめられながら唇を撫でられると、いつアレがアレしてしまうかわからない。

 そして、今ユエルは完全に盛り上がってしまっている。

 多分、アレしてしまったら食べられてしまうだろう。


 ふとユエルが俺の口から目を離し、視線を上に向ける。

 俺と目が合うと、ユエルの体がピクンと震えた。


 「ご、ご主人様......ご主人様っ......」


 ユエルは既に耳まで真っ赤に紅潮し、目を見開いて俺を見る。

 歯磨きに相当集中していたようで、ユエルの呼吸は浅く速い。

 不意に、ユエルの空いている片手が、俺の頬を愛おしむように撫でる。

 

 俺とユエルはそのまま無言で見つめ合う。

 五秒、六秒と経ったところで、ユエルの細い喉が大きく上下した。



 .......食べられる。



 引き剥がさないといけない。

 でも、ここで力任せにユエルを引き剥がしたら......。

 それはユエルを拒絶することになるんじゃないだろうか。

 ユエルからすれば、ただ献身的にご主人様の歯を磨いているだけなのに、それを力尽くで拒絶するのか。

 そんなことをすれば、ユエルはどれだけ傷つくだろうか。


 俺が行動に移せずに迷っている間にも、ユエルは俺の顔をまじまじと見つめながら、頬を、唇を、手で撫でている。


 力任せに引き剥がすのはユエルが傷つく。

 でも、このまま何もしなければ、俺が傷物になってしまう。

 どうする。

 俺は一体、どうすればいいっ.......!




 そして、リビングの入り口がガラリと開けられた。


 「あなたたち、何してるのよ......」


 風呂上りのエリスが、濡れた髪をタオルで拭きながらこちらを呆れたように見ている。

 機嫌がそこそこ良くなっているように見えるのは、風呂に浮かべておいたバラ科っぽい花びらがお気に召したんだろう。


 ユエルはエリスを見ると、名残惜しそうに俺の唇を一撫でし、パッと俺の上から飛びのく。


 「お、終わりました、ご主人様」


 そして、ユエルは名残惜しそうに言って、折れた俺の歯ブラシをアイテムボックスにしまった。

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