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古文】「必ずよく四時に似たるを用
語釈】
※必ず=①きっと・絶対に。②(打消の表現に対して用いて)必ずしもに同じ。
※「必ず~用ひよ」は『文筆眼心抄』からの引用。
※よく=形容詞「よし」の副詞的用法から意義が特殊化したもの。①可能の意を表す。②程度や頻度が著しく大である意を表す。③詠嘆の気持ちを表す。
※四時=漢語。春夏秋冬の四季。一年中の季節季節。
※似る=①似る。②相応する・相応しい。
訳文】(空海も)「絶対にしっかりと四季に相応しい(言葉)を
古文】用ひよ。春夏秋冬の気色、時/
語釈】
※用ひよ(用ふ+よ)=歴史的仮名遣いでは「用ゐよ」。①登用しろ。②受け入れて従え。③信用しろ。④何かを役に立つように使え。⑤気を遣え・心遣いしろ。⑥飲食しろ。
※気色=それとなく感じられる様子を意味する「けはひ」に対し、対象の外面からはっきりと感覚し得る様子を意味する。①人のそぶり・雰囲気。②機嫌。③意図的のほのめかす内意。④自然のたたずまい。⑤風景。
※時=①時刻。②時間。③頃合い・時節。④時機。
訳文】使え。春夏秋冬の雰囲気を(その)頃合い
古文】に随ひて心をなして、これ/
語釈】
※随ひて=状況に応じて。
※心をなして=心を集中させて。気持ちを没入させて。熱中して。
訳文】に応じて心を集中させて、これ(=言葉)
古文】を用ひよ」ともはべれば、春は/
語釈】
訳文】を使え」ともありますので、春は
古文】花の気色、秋は秋の気色に、/
語釈】
※花=桜。
訳文】桜の雰囲気、秋は秋の雰囲気に、
古文】心をよくかなへて、心に隔てずなし/
語釈】
※かなへて=合わせて。
訳文】心をしっかりと合わせて、(対象から)心を離さずに(歌を)作っ
古文】て言にあらはるれば、折節の/
語釈】
※折節=四季折々。
訳文】て言葉に表現するならば、四季折々の
古文】まこともあらはれ、天地の心にも
語釈】
※まこと=歌論用語。作品に現れた作者の真情。表現内容の真実味。
※天地=①天と地。宇宙全体。②天の神と地の神。③平安時代に行なわれた手習いことば。
訳文】表現内容の真実味も表現され、宇宙全体の意図にも
古文】か/なふべきにこそ。「気性は天理に合ふ」/
語釈】
※かなふ=①相応しい。②思った通りになる。③可能である。
※「気性は天理に合ふ」=『文鏡秘府論』からの引用。
※気性=生まれついて持っている性質。気立て。
※天理=天が宇宙万物を創造し、支配する原理。天道。人理の対。
訳文】相応しいに違いないでしょう。(空海も)「生まれ持った性質は天の理に合う」
古文】ともはべるにや。稽古に力入るる人も、/
語釈】
※にや=(文末に用いて疑問の意を表す。「あらむ」や「ありけむ」が省略された形)~であろうか。~であったのだろうか。
訳文】ともありますからでしょうか。(歌作りの)稽古に力を入れる人も、




