頁007
古文】相応の故と申すにこそ。されば道/
語釈】
※相応=相応しいこと。つり合うこと。相当。
※こそ。=(文末の結びに当たる「あらめ」等が省略された、係り結びの省略の形)~であろう。
※されば=そうであるから。そうだから。それゆえ。だから。
※道=和歌の道。
訳文】(和歌が神に)相応しいからだと申しあげるのでしょう。そうであるから(和歌の)道
古文】をもまもり、あらたなることも/
語釈】
※あらたなる=神仏の霊験がはっきり現れる・霊験あらたかである。
訳文】をも守り、(それによって)神仏の霊験があらたかであるということも
古文】先規多く侍るにや。大方、物に/
語釈】
※先規=漢語。先行の規則や慣例。先例。これを後の規範として重んじて言う語。
※にや=(文末に用いて疑問の意を表す。「あらむ」や「ありけむ」が省略された形)~であろうか。~であったのだろうか。
※大方=①通りいっぺんに。②大雑把に言って・だいたい。③そもそも・だいたい。
訳文】先例が多くてございますのではないでしょうか。そもそも、物事に
古文】触れて言と心と相応した/る
語釈】
※物に触れ=(「ことに触れ」などの言い方で)ある事柄・事態に関連する、関連づける。
※言=①ことば・言語。②うわさ・評判。③和歌。
※相応=ふさわしいこと。つり合うこと。相当。
訳文】関連づけて言葉と心とがつり合っている
古文】間をよくよく心得んこと、必ず/
語釈】
※間=①中間・隙間。②あいだから・仲。③とりあわせ。④その時の都合。
※よくよく=「よく」の畳語。①念を入れて十分にするさま・念入りに。②程度が普通をはるかに超えていると思われるさま。よほど。
※心得=①承知する・了解する・理解する。②ある分野に嗜みを持つ・造詣がある。
※必ず=①きっと・絶対に。②(打消の表現に対して用いて)必ずしもに同じ。
訳文】間柄を念入りに理解することは、必ずしも
古文】草木鳥獣ばかりに限るべからざ/る
語釈】
※草木=草と木。また、植物全般を指して言う。
※鳥獣=鳥と獣。
※ばかりに=①(範囲・程度を表す)~ほどに・~ぐらいに。②(限定を表す)~だけに。
訳文】(『古今集』に言うように)植物や動物だけに限るべきではない
古文】故に、よろづの道の邪正もこれに/
語釈】
※道=①道・道路・通路・航路。②途中・途上・道中。③道のり・行程。④方面。⑤専門の道・専門の方面。⑥方法・手だて。⑦道理・条理・人としてのあり方・正しい生き方。
※邪正=邪と正。道理や教え、考えや行いなどのよこしまなことと正しいこと。
訳文】ので、全ての分野の善悪もこれ(=和歌)に
古文】志すとて言へるにこそ。景物につ/き
語釈】
※志す=心をある方向へ向ける。そうしようとする意志を起こす。それと心に決める。
※にこそ。=(文末の結びに当たる「あらめ」等が省略された、係り結びの省略の形)~であろう。
※景物=漢語。四季折々の風物。
※~につきて=①(対象に関連することを言う場合に用いる)~に関して。②(対象に触発されて事が起こる場合に用いる)~によって。
訳文】心を向けたと言えるでしょう。四季折々の風物によって
古文】て心ざしをあらはさむにも、心を/
語釈】
※心ざし=心ざすの名詞形。心がある方向へ向かうことを言う。①ある人や事柄に対する配慮。②歌道・芸道などを求める心。求道心。
※「にも」は連語。
※心を留む=①心を配る・気を配る・配慮する・注意する。②関心を寄せる。愛情を持つ。
訳文】心を和歌に向けて(和歌で心を)表現すようなのも、(風物に)関心を
古文】とめ、深く思ひ入るべきにこそ。/
語釈】
※心を留む=①心を配る・気を配る・配慮する・注意する。②関心を寄せる。愛情を持つ。
※深く(深し)=①厚みがある・深い・奥まっている。②並大抵でない・甚だしい・著しい。
※思ひ入る=①心に深く思い込む・没入する。②熟慮して中に加える。
※こそ。=(文末の結びに当たる「あらめ」等が省略された、係り結びの省略の形)~であろう。
訳文】寄せ、並大抵でなく心に深く思い込んだからであろう。




