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古文】・八幡・賀茂をはじめ奉りて、/
語釈】
※八幡=八幡宮の略。石清水八幡宮。
※賀茂=賀茂神社の略。
※はじめ=①事を開始する。②物事を列挙するとき、まず第一とする意。
※奉りて=謙譲の補助動詞。
訳文】・石清水八幡宮・賀茂神社をまず第一とし申し上げて、
古文】和国に迹を垂れ給ふ諸神も、/
語釈】
※和国=日本の国。
※迹=この世での在り場所。
※迹を垂る=垂迹を訓読した語。仏・菩薩が仮に神の姿となって日本の人々を救うためにこの世に現れる。
※諸神=もろもろの神。多くの神。
訳文】日本に神の姿となって国民を救うために現れた多くの神々も、
古文】仏・菩薩も、権者も、代々の聖主も、/
語釈】
※仏=仏法の真理を悟った人。仏陀。
※菩薩=衆生を教化する修行者。未来に仏となる存在。
※権者=神仏が衆生を救うために仮に人の姿となってこの世に現れたもの。化身。「権」は「仮」の意。
※聖主=天皇のこと。
訳文】仏陀や菩薩も、神仏の化身も、代々の天皇も、
古文】仁徳天皇・聖武天皇・聖徳太子、/
語釈】
※仁徳天皇=第一六代の天皇。古代の伝説的な聖天子として著名。
※聖武天皇=第四五代の天皇。東大寺を建立した。
※聖徳太子=第三三代天皇である推古天皇の摂政。
訳文】(中でも)仁徳天皇・聖武天皇・聖徳太子、
古文】弘法大師・伝教大師以下、皆これ/
語釈】
※弘法大師=
※弘法大師=空海のこと。
※伝教大師=最澄のこと。
※皆=
訳文】弘法大師・伝教大師以下、皆これ(和歌)
古文】を詠み給ふ。東大寺つくりて
語釈】
※東大寺=
訳文】をお詠みになる。東大寺を建立して
古文】供養あらむとての日、行基菩薩、/
語釈】
※供養=この場合は大仏の開眼供養。
※あらむ
※とて
※東大寺つくりて供養あらむとての日=752年(天平勝宝四年)4月9日。
※行基菩薩=奈良時代の法相宗の僧、行基(668~749)のこと。大仏の開眼供養(752年)以前に没。
訳文】落慶供養があろうという日(に)、行基菩薩は
古文】難波の岸にて婆羅門僧正を/
語釈】
※難波=地名。現在の大阪市とその周辺。葦の多い荒れ地だったとされる。
※婆羅門=古代インドの僧の階級の一。四つあるうちの最高位。
※僧正=僧を取り締まる中央の僧官の一。最上位の僧官。二位から三位の殿上人に相当する。
※婆羅門僧正=菩提僊那(704~760)のこと。ボーディセーナ。736年(天平八年)に来日した際に行基の出迎えを受けた。大仏開眼供養の導師となる。
訳文】難波の岸にて(当時)婆羅門僧正(であった菩提僊那)を
古文】迎へ給ふ時も、/
語釈】
訳文】お迎えになる時にも、
古文】「霊山の釈迦の御前に契りてし/
語釈】
※霊山=霊鷲山のこと。古代インドのマガダ国の首都である王舎城の東北に位置し、釈迦が説法した地とされる山。
※釈迦=仏教の開祖。
※契る=約束する。
訳文】「霊鷲山の釈迦の御前で約束した




