凡例
一、翻刻篇では翻刻のみ行ない、語釈や現代語訳は行なわない。
二、写本のページ番号をサブタイトルとし、写本での改行を「/」で表した。
三、本文の底本および校合本には、下記の本を用いた。
底本、宮内庁書陵部蔵本(https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100052834/viewer 「新日本古典籍総合データベース」より)
校合本、陽明文庫蔵本(濱口博章編『影印叢刊8 陽明文庫蔵 為兼卿和歌抄』(和泉書院、1979年)より) 時雨亭文庫蔵本(冷泉家時雨亭文庫編『冷泉家時雨亭叢書40 中世歌学集・書目集(1)』(朝日新聞社、1995年)より)。
四、「翻刻」では底本の翻刻について次のような方針を採った。
1.翻刻後の本文に適宜、句読点・並列点および濁点を付した。
2.漢字と仮名の区別、仮名遣いなどはすべて底本のままとした。
3.底本の漢字に送り仮名や助詞が不足していると考えられる箇所は括弧書きの振り仮名として傍記した。例】同事→同事
4.漢文体で記してある箇所は括弧書きの振り仮名として傍記し、その旨注記した。例】治世→治世
五、「本文」では「専門書レベルの本文」と定義して、翻刻に対して次のような方針を採った。
1.底本の仮名は適宜漢字に改め、もとの仮名は振り仮名として残した。例】知り
2.底本の漢字は適宜仮名に改め、もとの漢字は傍記した。例】さま
3.底本の漢字に読みを示す際は、括弧書きで歴史的仮名遣いを傍記した。例】下
4.底本の仮名遣いが歴史的仮名遣いに一致しない箇所は、括弧書きで歴史的仮名遣いを傍記してその旨注記した。例】おさめ
5.送り仮名や助詞などを新たに補った箇所には「●」を傍記した。例】申→申し
6.底本の誤写・誤脱と考えられる箇所は校合本で訂し、欠文および欠字を補う場合はその部分を〔 〕で括って示し、その旨を注記した。
六、「古文」では「高校生向けの教科書や問題集レベルの本文」と定義して、次のような方針を採った。
1.底本の異体字および旧字はすべて正字体および新字に改めた。
2.底本の仮名は適宜漢字に、底本の漢字は適宜仮名に改めたが、それぞれその旨注記しない。
3.底本の仮名遣いはすべて歴史的仮名遣いに改めたが、その旨注記しない。
4.送り仮名や助詞などは適宜補ったが、その旨注記しない。
5.底本の誤写・誤脱と考えられる箇所は校合して訂し、欠文および欠字は補ったが、その旨注記しない。
七、参考文献として、久松潜一校注『日本古典文学大系65』(岩波書店、1961年)、小川剛生校注『歌論歌学集成10』(三弥井書店、1999年)を用いた。
※古文本文のレベルを「高校生向け」と定義ているのは、ごく一般的な人々にとって「古典作品と触れ合う機会」のほとんどが高校までの古文の授業であることから、それらに載っていてもおかしくないような表記の、底本を読み解くという作業とは関連性のない「入門的な本文」にしようという意図を端的に表したものである。
要は「厳密な本文」だの「より正しい本文」だのの追求はもう、専門家や専門書にお任せしてしまって、この場は『為兼卿和歌抄』への敷居を下げるとか、読者層を獲得するとか、そういう方向で頑張る場にしたいんだな、ということをご理解いただけましたら幸いです。
そして興味を持ってくださった方の中から、「『厳密な本文』や『より正しい本文』っていうのはじゃあ、どうなっているんだろう」という気持ちを持ってくださる方が現れて、影印本や参考文献に自ら当たってくださるようになったなら、最高です。




