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字母】上陽人爾奈利多留心知之天奈久/
翻刻】上陽人になりたる心ちして、なく/
本文】上陽人になりたる心地して、泣く/
古文】上陽人になりたる心地して、泣く
字母】ゝゝ不留左止遠毛己比之宇思/
翻刻】なくふるさとをもこひしう思、/
本文】泣くふるさとをも恋しう思ひ、/
古文】泣くふるさとをも恋しう思ひ、
字母】雨遠毛幾ゝ阿可之安左由不仁/
翻刻】雨をもききあかし、あさゆふに/
本文】雨をも聞き明かし、朝夕に/
古文】雨をも聞き明かし、朝夕に
字母】川計天多部志乃不部幾心知毛世左良/
翻刻】つけてたへしのぶべき心ちもせざら/
本文】つけて耐へ忍ぶべき心地もせざら/
古文】つけて耐へ忍ぶべき心地もせざら
字母】武所遠毛能々奈利可部利天三天/
翻刻】む所をも、能々なりかへりてみて、/
本文】むところをも、よくよく成り返りてみて、/
古文】むところをも、よくよく成り返りてみて、
字母】其心與利與末无哥己曾阿者禮毛/
翻刻】其心よりよまん哥こそ、あはれも/
本文】其の心より詠まん哥こそ、あはれも/
古文】その心より詠まん歌こそ、あはれも
字母】不可久止遠利宇知三留満己止仁己多/
翻刻】ふかくとをり、うちみるまことにこた/
※本文の仮名遣い(定家仮名遣い)は「とをる」だが、「通る」の歴史的仮名遣いは「とほる」。
本文】深く通り、うち見るまことにこた/
古文】深く通り、うち見る、まことにこた
字母】部多留所毛侍部遣禮止以不爾委心/
翻刻】へたる所も侍べけれ」といふに|委心《(こころをゆだぬるも)》/
※「いふ」は「言ふ」か「優」の誤用か悩ましいが、今回は後者で解した。
※「委心(をかし)」の部分は熟語として「をかし」と解しているようだが従わない。また「委しい心(をかし)」とするのでも文意がおかしいので、陶淵明『帰去来辞』にもあるように「委ヌ心ヲ」つまり「心を委ぬ」と漢文体で解した。
本文】へたるところもはべるべけれ」と優に心を委ぬるも/
古文】へたるところもはべるべけれ」と優に心を委ぬるも
字母】越可之左禮八恋乃哥遠八比幾可/
翻刻】をかし。されば恋の哥をばひきか/
本文】をかし。されば恋の哥をばひきか/
古文】をかし。されば恋の歌をばひきか
字母】川幾天人乃心爾可者利天毛奈久ゝゝ/
翻刻】づきて、人の心にかはりても、なくなく/
本文】づきて、人の心に代はりても、泣く泣く/
古文】づきて、人の心に代はりても、泣く泣く




