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『新続古今和歌集』の中の為兼。

【作品名】『新続古今和歌集しんしょくこきんわかしゅう

【成立時期】室町時代(一四三九年成立・為兼没後百七年)

【撰者】飛鳥井雅世(あすかいまさよ)

【ジャンル】和歌集

【内容】第二十一代勅撰和歌集。

【巻第三・夏歌】

  弘安元年百首歌に

〇二三九 郭公(ほととぎす)聞きつともなき初音こそ夢にまさらぬうつつなりけれ(前大納言為兼)


訳】弘安元年(に提出された)百首歌に(あった歌)

〇二三九 ほととぎすの聞いたとも知れない初音こそ夢よりもはかない現実であることだなあ。


参考歌】郭公はつかなる音を聞きそめてあらぬもそれとおぼめかれつつ(伊勢・後撰・一八九)

参考歌】世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも知らずありてなければ(詠み人知らず・古今・九四二)


     ◆


【巻第十三・恋歌三】

  弘安元年百首歌の中に、恋の歌を

一三一六 くやしくぞただ時の間のうたた寝にまた見ぬ夢を結びそめける(前大納言為兼)


訳】弘安元年(に提出された)百首歌の中に、恋の歌を

一三一六 残念だなあ、ほんの短い時間のうたた寝によって二度とは見ないであろう夢の中で初めて結ばれた縁であった。


参考歌】なげくともさめての後にかひなきは又みぬ夢のちぎりなりけり(為世・続千載・一四一三)


     ◆


【巻第十九・雑歌下】

  弘安元年百首歌に

二〇四一 はかなくも夢をうつつと思ふこそまどろむほどの心なりけれ(前大納言為兼)


訳】弘安元年(に提出された)百首歌に

二〇四一 はかないことに、夢を現実だと思うのは寝ている時だけの気持ちなのだなあ。


参考歌】さめてこそはかなかりけれ寝るがうちに夢をうつつと思ふ心は(基平・続古今・一八〇二)

 最後の最後まで「弘安百首歌」(弘安元年(一二七八年)に詠まれたもの。為兼二十五歳。散逸)からの選出のみの三首。

 二条派にとっての為兼はやはり「永遠の二十五歳」ということらしい。


 ちなみに同じ京極派からは、伏見院(四首)・為子(三首)・光厳院(二首)・永福門院(一首)・花園院(一首)などが選出されている。

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