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雑歌〈雑四季歌〉上

『玉葉和歌集』一七七首(雑歌一)、『風雅和歌集』二一三首(雑歌上)より。

〈玉葉和歌集〉


  思ふこと侍りける頃、鶯の鳴くを聞きて

一八四二 物思へば心の春も知らぬ身になに鶯の告げに来つらん(建礼門院右京大夫)


訳】思うこと(が)ありました頃(に)、鶯が鳴くのを聞いて(詠んだ歌)

一八四二 (あれこれと)物思いに沈んでいるので、(晴れ晴れとした)心の春も知らない(この)身に、どうして鶯は(春を)告げに来たのだろううか。

 ※そもそも恋歌だったものを、春が来ても晴れない心情を詠んだ歌と解して配置された一首。作者は藤原伊行女で藤原行成の昆孫(こんそん)(行成の六代子孫。藤原行成-行経-伊房-定実-定信-伊行-伊行女)。建礼門院右京大夫集の作者としても知られる。


     ◆


  院、位につかせ給うて(のち)の春、詠み侍りける

一八七九 年を経し春のみやまの桜花雲居にうつる色を見るかな(飛鳥井雅有)予


訳】(伏見)院(が)、(天皇の)位におつきになって後の春(に)、詠みました(歌)

一八七九 長い間、(人目につかない)春の深山の桜の花(のように、東宮として人目につかないまま十三年もの時を過ごされた我が君が、遂に天皇になられて)皇居に移る輝かしい様子を拝見したことです。

 ※「春のみやま」は「春の深山」と「春の宮(ま)」の掛詞。


     ◆


  夏の夜の月を見て、範永(のりなが)朝臣に遣はしける

一九四二 常よりも見るほど久し夏の夜の月には人を待つべかりけり(藤原家経)


訳】夏の夜の月を見て、(藤原)範永朝臣におやりになった(歌)

一九四二 いつもよりも(月を)見ている時間が長い(ような気がする)。(短い)夏の夜の月(を楽しむ)には、(待ち遠しく感じるように、なかなか訪れない)人を待つべきであったのだ。

 ※夏の夜の月の短さを人を待つ時間の長さで反転させた一首。作者は藤原鎌足の裔(藤原鎌足-不比等-房前-真楯-内麻呂-真夏(冬嗣兄)-濱雄-家宗-弘蔭-繁時-輔道-有国-広業-家経)。


     ◆


〈風雅和歌集〉


  左大将に侍りける時、家に六百番歌合しけるに、春曙を詠める

一四三五 見ぬ世まで思ひ残さぬながめより昔にかすむ春の曙(九条良経)


訳】左大将でございました時(に)、家で六百番歌合(を)

一四三五 (私には見ることのできない)後の世まで思い残すことのない(今の)眺めから昔へと霞んでいく春の曙(であるよ)。

 ※非常に意味の取りにくい、人の数だけ訳ができそうな一首。


     ◆


  野夕立

一五一五 富士の()は晴れゆく空にあらはれてすそ野にくだる夕立の雲(惟宗光吉(これむねのみつよし)


訳】「野の夕立」(という歌題で詠んだ歌)

一五一五 (夕立の雲に覆われていた)富士の嶺は晴れていく空に(しだいにその姿が)現れて(きて、その代わりに)裾野にくだっていく夕立の雲(が見えることだ)。

 ※しだいに移り変わっていく風景を写し出した一首。


     ◆


  百首歌奉りし時

一五四五 秋風にうきたつ雲は迷へどものどかにわたる雁のひとつら(足利尊氏)


訳】百首歌を献上しました時(に詠んだ歌)

一五四五 秋風に(よって)吹きあげられる雲は乱れ動いているが、(その空を)のどかに(飛び)渡っていく雁の一列(が見えることだ)。

 ※動的な上の句と静的な下の句に分かれる一首。京極派の影響を受けた歌を残してはいるが、京極派歌人ではない。


     ◆


  冬の歌に

一六一四 山川の岩間に残る紅葉葉の下には透ける薄氷かな(後藤基雄(もとお)


訳】冬の歌に(あった歌)

一六一四 山の中に流れている川の岩間に散り残っている紅葉の葉の下には透けて(見えて)いる薄氷(があること)だなあ。

 ※秋の名残りと冬の始まりを詠んだ一首。作者は作者は藤原不比等の裔(藤原不比等-房前-魚名-藤成-豊沢-村雄-秀郷-千常-文脩-文行-公光-佐藤公清-季清-康清-仲清(西行の兄弟)-後藤基清(後藤家に養子入り)-基綱-基政-基頼-基宗-基雄)。

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