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頁038‐039

古文】その心を思ひやりて詠みけるとぞ。/

語釈】

※とぞ=〔文末に用いて、伝聞あるいは不確実な内容であることを表す〕~ということだ。

訳文】その(当事者の)心情を思いやって詠んだということだ。



古文】かやうに向かはぬ人の歌は、さはさは/

語釈】

※向かは(向かふ)=向き合う・相対する・対座する。

※さはさは(さはさはと)=擬態語。①さっぱりと。②すっきりと。③すらすらと。④はっきりと。

訳文】このように(自分自身の心と)向き合わない人の歌は、すっきり



古文】とも、おもしろきやうなるはあれ/

語釈】

※おもしろし=①趣がある・風流だ・素晴らしい。②楽しい・興味深い。③珍しい・風変わりだ。

訳文】していて、楽しい様子ではあるけれ



古文】ど、いかにぞ優の添ひ、勢ひの/

語釈】

※いかにぞ=①〔相手の様子を問う〕どうだ・いかがですか。②〔原因や事情を問う〕どういうわけなのか。どうしてか。

※優(優なり)=①優美だ・優雅だ。②優れているさま・素晴らしい。③趣のあるさま。④殊勝なさま・けなげだ。⑤(歌学用語。歌合の評語の一つ)優美・優艶。

※添ひ(添ふ)=①付け加わる・さらに備わる・増す。②付き添う・付き従う・寄り添う。③結婚する・夫婦になる・男女が連れ添う。

※勢ひ=①気勢・気力・活力。②権勢・権力・財力。③(盛んな)様子・形勢。

訳文】ども、どういうわけか(歌の)優美さがさらに増し、(歌の)形勢が



古文】深きことはなくて、古歌に変はれ/

語釈】

※深き(深し)=①厚みがある・深い・奥まっている。②並大抵でない・甚だしい・著しい。

訳文】並大抵でないということはなくて、(その点が)古歌とは異なって



古文】ることなり。されば紫式部も言へる/

語釈】

※されば=①そうであるから・そうだから・それゆえ・だから。②そもそも・いったい(ぜんたい)。③さて・ところで。

訳文】いることである。そうであるから紫式部も(『紫式部日記』の中で)言っている



古文】やうに、「いでやさまで心は得じ、口にいと歌/

語釈】

※いでや=①〔不満や反発の気持ちを表す〕さてどうかな・いやはや。②〔感慨や詠嘆を表す〕さてさて・いやもう。③〔決意を表す〕どれ・さあ。

※さまで=そうまで・それほどまで。

※心は得=「心得」のこと。①理解する・さとる。②精通する・心得がある。③引き受ける・承知する。

訳文】ように、「いやはやそれほどまでには(歌に)精通していまい、口によってたいそう歌



古文】の詠まるるなめり、恥づかしげの/

語釈】

※恥づかしげ(恥づかしげなり)=①恥ずかしそうだ。②こちらが恥ずかしいと思うほど立派だ・優れている。

訳文】が(自然と)詠み出されるらしい、こちらが恥ずかしいと思うほど立派な



古文】歌詠みやとは見えず。まことの/

語釈】

※歌詠み=歌人。

※や=~だなあ。~よ。

※見ゆ=①見える。②会う。③思われる。考えられる。

訳文】歌人だなあとは思われない。本当の



古文】歌詠みにこそはべらざめれ」など/

語釈】

※歌詠み=歌人。

訳文】歌人ではないのでしょう」などと



古文】言へるにこそ。/

語釈】

訳文】言ったので(あろう)。

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