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頁032

古文】に、「日数(ひかず)重ねて」とも「また立ち返る」/

語釈】

日数(ひかず)重ねて=「旅衣」と縁語である「重ぬ」を結び付けた「衣(を)重ねて」から連想した表現。

※とも=①~ということも。②同じ動詞・形容詞を重ねてその間に置いて意味を強める。

※「また立ち返る」=「旅衣」と縁語である「たつ」や「かへる」を結び付けた「衣(を)断つ」「衣が(かへ)る」から連想した表現。

訳文】時に、(「旅衣」の縁語「重ぬ」から連想して)「日数重ねて」とも(言い、「旅衣」の縁語「たつ」・「かへる」から連想して)「また立ち返る」



古文】とも言へるは心ありと定め、いた/く

語釈】

※心あり=歌学用語。深い心を込めている。

※定め(定む)=①決める・決定する。②議論する・相談する。③平定する。④(否定表現を伴って用いて)安定させる。

※いたく(いたし)=【痛し】①〔肉体的に〕痛い。②〔精神的に〕痛い・苦痛だ・つらい。【甚し】①甚だしい・ひどい。②素晴らしい・感にたえない。③見ていられない・情けない。

訳文】とも言ったのは(安易でありきたりにもかかわらず)深い心を込めていると決め(つけ)、



古文】衣の才学(さいかく)(くは)しくせで旅の嵐・/

語釈】

才学(さいかく)=漢語。才能と学問・学識(学問上の識見)。

(くは)しく((くは)し)=①すみずみまで行き届いているさま。②物事に精通しているさま。

訳文】衣(という字)の(縁語が持ち合わせている)学問上の知識や理解(というものを)すみずみまで精査せずに旅の嵐(や)



古文】夜半の露にしをるる衣のあり/さま

語釈】

訳文】夜半の露にしおれる衣の様子



古文】につけても「ふるさとの恋しき」

語釈】

※~につけて(つく)=対象に関連して、また対象に触発されて、の意を表す。

訳文】によっていっそう「故郷が恋しい」



古文】など言ひ成せるばかりは弱し、/

語釈】

※言ひ成せ(言ひ成す)=①言いまぎらわす・言いつくろう。②ことさらに強調して言う。

※ばかり=①(範囲・程度を表す)~ほど・~ぐらい。②(限定を表す)~だけ。

※弱し=ここでは「一首としての構成力が足りない」の意。

訳文】などと(安易に)言い繕うだけでは一首としての構成力が足りない、



古文】など定むるも、必ずしも/

語釈】

※定むる(定む)=①決める・決定する。②議論する・相談する。③平定する。④(否定表現を伴って用いて)安定させる。

※必ずしも=「必ず」に同じ。①きっと・確かに・きまって。②〔下に打消・反語の表現を伴って〕必ずしも。

訳文】などと決め(つけ)るのも、必ずしも



古文】さのみあるまじきことにや。しかるべき/

語釈】

※さのみ=①そのようにばかり・そのようにだけ・そうむやみに。②〔下に打消の語を伴って〕それほど・そんなにも・たいして。

※あるまじき(あるまじ)=①する必要がない。②当然あってはならない・とんでもない。③生きていられそうもない。

※にや=(文末に用いて疑問の意を表す。「あらむ」や「ありけむ」が省略された形)~であろうか。~であったのだろうか。

※しかるべき(しかるべし)=①適当である・ふさわしい。②当然そうなるはずである・そうなる運命だ。③立派である・相当である。

訳文】それほどする必要がないことだったのではないだろうか。立派である



古文】人々集まれる会に、雲客(うんかく)、/

語釈】

雲客(うんかく)殿上人(てんじゃうびと)のこと。雲上人(くものうへびと)の意の造語。

※殿上人=宮中・院などに設けられた家臣の控室である「殿上の間」への出入りを許された人。基本的には貴族の中流階層以上の人と言える。

訳文】人々(が)集まった歌会で、(ある)殿上人(が)、



古文】「浅香山影さへ見ゆる山の井の/

語釈】

※浅香山=安積山(あさかやま)のこと。陸奥国(今の福島県)の歌枕。

※山の井=山中に湧き水が溜まって、自然にできた井戸。

※浅香山影さへ見ゆる山の井の浅くは人を思ふものかは=「安積香山 影副所見 山井之 浅心乎 吾念莫国」(安積山の影までも見える(ほど澄んだ)山の井のように浅い心で私は(あなたのことを)思っているのではありませんよ)【万葉集・巻十六・三八〇七番歌】のこと。左注に拠れば、国司の接待に気分を害した葛城王に向けて、采女を勤めたことのある女性がこの歌を詠み、王の機嫌を直したという。『古今和歌集』仮名序では手習い歌の一つとされ、難波津の歌と合わせて「歌の父母」と言われた。

※左注=『万葉集』で、歌の左側に書き足された注釈。三八〇七番歌では「右の歌が伝えて言うことには「葛城王が陸奥国に派遣された時、国司のもてなしのおざなりさが場にそぐわないことはなはだしかったので、(その)時に(葛城)王の心は悦ぶどころか怒りが露わになってしまい、宴席を設けられたと言っても宴を楽しもうとはしなかった。そこで以前采女であった風流な娘がいて、左手に酒杯を捧げ、右手には(山の井から汲んだ)水を持ち、王の膝を叩いてこの歌を詠んだ。それで王の心は(怒りから)解き放たれ、終日(酒を)飲んで楽しんだ」(右歌伝云「葛城王遣于陸奥国之時、国司祗承緩怠異甚、於時王意不悦怒色顕面、雖設飲饌不肯宴楽、於是有前采女風流娘子、左手捧觴右手持水、撃之王膝而詠此歌、尓乃王意解脱楽飲終日」)とある。

※難波津の歌=仁徳天皇の御代の初めを祝って王仁(わに)が詠んだとされる「難波津に咲くや()の花冬こもり今は春べと咲くや()の花」のこと。

訳文】(『万葉集』の一首である)「浅香山の影までも見える(ほど澄んだ)山の(天然の)井戸の(ように)

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