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古文】も、よろづの人まことには落ちゐ/
語釈】
※落ちゐ(落ちゐる)=①(気持ちが)落ち着く・ゆったりする。②(事がらが)落着する・疑念がなくなる・納得する。
訳文】も、多くの人(が)本当には疑念がなくなって
古文】ずして好むを憎みて言へる/
語釈】
※して=①〔対等・並列〕~て。②〔状態〕~の状態で・~で。③〔原因・理由〕~ために・~だから。④〔逆接〕~が・のに。
訳文】いないのに好みで詠む(という行為)を嫌って言っている
古文】こと、人によりて見許すも、先例/
語釈】
※見許す=(とがめるべきものを)見ながらも、とがめないでおく・見のがす。
訳文】こと(なので)、詠み手によって見逃すのも、先例
古文】もあり、子細もあることなり。大方/
語釈】
※子細=①(事の)いわれ・わけ。②差し支え・異論・異議。
※大方=①全体・大体・一帯。②普通・世間一般。
訳文】もあり、理由もあることである。世間一般(に対して)
古文】は、天象地儀はその字を確かに詠/め、
語釈】
※天象=漢語。天に関する現象。
※地儀=大地。坤儀(漢語。大地・地に関する現象)とも。
※確かに(確かなり)=①しっかりしている・確実である。②信頼できる・安心できる。
訳文】は、「天に関する現象と地に関する現象(が歌題として出された場合)はその文字(そのもの)を確実に(歌の中に)詠め」、
古文】言葉の字はまはして心を詠め、/
語釈】
※言葉=①ことば・言語。②(ことばによって表現された)和歌・文章・手紙など。③和歌や絵につけた散文で表現された部分。詞書など。④歌学用語で表現・用語。⑤語学用語で「てにをは」以外の用語。特に用言。平安時代には「ことのは」が上品で好ましいことばを意味するのに対して、「ことば」は単に口頭語を意味した。また、「ことのは」は歌語として和歌に用いられが、「ことば」は用いられなかった。
※心=意向・趣向。
※まはし(まはす)=①回転させる・まわす。②周りを取り巻く・巡らす。③さし向ける。④行き渡らせる・広く巡らす。⑤運用する。
※字をまはす=「字」は歌題中の字の意。落字を嫌う歌合・題詠歌において、意図的に歌題中の特定の字を歌に表さずに、一首全体から自得できるように表現を構想すること。
※落字=書き落とした文字。脱字。
訳文】「(歌題中の)用言の字は(そのまま歌に流用せず、)表現を構想することで(歌題の)意向を詠め」、
古文】結題は上下にその心を分け/
語釈】
※結題= 和歌で題詠の際に出される歌題の一種。二つないしはそれ以上の事柄を結合した歌の題。
※心=意向・趣向。
訳文】「(複数の題を結び付けて出題される)結題(で詠む場合)は(一首の)上の句と下の句にその(題の)意向を分け
古文】て詠み入れよ、詞は三代集の中/
語釈】
※三代集=勅撰和歌集の初めである、『古今和歌集』『後撰和歌集』『拾遺和歌集』の三歌集。いずれも平安時代前期に成立。
訳文】て詠み入れよ」、「(歌に使う)言葉は三代集の中
古文】にてたづぬべくとも教へ、深く
語釈】
※にて=~において・~によって・~で。
※たづぬ=①ありかを捜し求める・追い求める。②事情を調べて明らかにする・探る・調べる。③訪問する・訪れる。④問いただす・質問する。
※とも=~ということも。
※深く(深し)=①厚みがある・深い・奥まっている。②並大抵でない・甚だしい・著しい。
訳文】において追い求めるのがよい」ということも教え(ているが)、(歌に)深く
古文】入りたる人に向けては、また変/
語釈】
※また=①再び・もう一度。②〔多く「…もまた」の形で〕やはり・同じように・同じく。③そのほかに・それとは別に。
訳文】入り込んで(詠むことができて)いる詠み手に向けては、それとは別に異




