頁028
古文】詠まむとすると、心のままに詞の/
語釈】
※ままに=①~につれて。②~にまかせて・~ままに。③~のとおりに。④~とすぐに・~やいなや。⑤~ので・~によって。
訳文】詠もうとする(こと)と、心にまかせて言葉が
古文】匂ひゆくとは、変はれるところあるに/
語釈】
※匂ひ(匂ふ)=美しく輝く。
※ゆく=〔動詞の連用形に付いて、動作・状態が継続し、進行する意を表す〕いつまでも~しつづける。ずっと~する。だんだんと~する。
※にこそ=~ので。
訳文】だんだんと美しく輝いていく(こと)とは、変わっているところがあるの
古文】こそ。何事にてもあれ、そのことに/
語釈】
※にこそ=~ので。
※何事=どんなこと。
訳文】で。どんなことでもあれ、そのことに
古文】臨まば、それに成り返りて、/
語釈】
※臨ま(臨む)=①向かい合う・面する。②直面する。③出席する。臨席する。
※成り返り(成り返る)=なりきる。
訳文】(もし)直面するならば、それになりきって、
古文】妨げ交はることなくて、/
語釈】
※交はる=①入りまじる。②まぎれ入って身を隠す。③交際する・付き合う。
訳文】(なりきるのを)妨害したり(そのこと以外のことと)入り混じったりすることはなくて、
古文】内外調ほりて成ずること、/
語釈】
※調ほる(調ほる)=①調和がとれる・調子が合う。②欠けるところがなく備わる・すっかりそろう。
※成ずる(成ず)=なし遂げる・達成する。
訳文】内(面の心と)外(界の事物とが)調和がとれて(一体化を)成し遂げること(は)、
古文】義にて成すとも、その気味に成/り
語釈】
※義=①人として守るべき正しい道、道義。儒教の徳目の一つ。五常(=仁・義・礼・智・信)の一つ。②理由ある事柄・道理。③意義・意味・教説。
※成す=①実行する・行う。②変える・~にする・ならせる。③作り上げる・実現する・成就する。
※気味=①においと味・風味。②趣・味わい。③心地・気分。
訳文】道義によって実行するのと、すっかりその(ようにしようという)心地に
古文】入りて成すと、遥かに変はること/
語釈】
※入り(入る)=〔補助動詞で〕①すっかり~(のように)なる。ほとんど~(に)なる。②熱心に~する。ひたすら~する。
※成す=①実行する・行う。②変える・~にする・ならせる。③作り上げる・実現する・成就する。
訳文】なって実行するのとでは、(結果が)はるかに異なること
古文】なり。これをもととして古歌にも/
語釈】
※もと=基本・根本・よりどころ・原因。
訳文】なのである。このことを拠り所として古い歌でも
古文】なぞなぞのやうなることも、また「かり/
語釈】
※なぞなぞ=「何ぞ何ぞ」と問いかけることから、言葉や文の中に隠された意味を当てさせる遊び。謎かけ。
※また=①再び・もう一度。②〔多く「…もまた」の形で〕やはり・同じように・同じく。③そのほかに・それとは別に。
※かりそめにうき世の中を思ひぬるかな=「朝露のおくての山田かりそめに憂き世の中を思ひぬるかな」(古今和歌集・紀貫之・哀傷歌・八四二)のこと。「(農夫が)朝露を置く晩稲の山田を刈りはじめているが、(私は喪に服していたことで)かりそめであると苦しみの多いこの世の中のことを思うようになったことだ)」の意。
訳文】謎かけのような歌も、また(貫之が)「(朝露のおくての山田)かり




