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頁025

本文】題に出だし、京極中納言入道きゃうごくちゅうなごんにふだう

語釈】

※題に出だし=貫之が雀題を出したことがあるかどうかは未詳。

※京極中納言入道=平安時代末から鎌倉時代初頭にかけての公家で歌人、藤原定家のこと。藤原俊成の子。筆者である為兼の曽祖父。八番目の勅撰和歌集である『新古今和歌集』の選者であり、百人一首97番歌「来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ」でも知られる。邸宅が京極殿と呼ばれたことから京極殿(きょうごくどの)または京極中納言と呼ばれた。

※京極中納言入道も詠めり=「鳴子引く田のもの風になびきつつなみよる暮れのむら雀かな」(拾遺愚草(しゅういぐそう)・七五六。建長二年冬左大将家十題百首・鳥十首のうち第六)のこと。

拾遺愚草(しゅういぐそう)=藤原定家の自撰による私家集の名。全三巻。

訳文】歌題として出し、京極中納言入道(と呼ばれた藤原定家卿)も(歌に)



本文】詠めり。鴬にも古巣とも詠む、

語釈】

京極中納言入道きゃうごくちゅうなごんにふだうも詠めり=「鳴子引く田のもの風になびきつつなみよる暮れのむら雀かな」(拾遺愚草・上)のこと。

※鴬にも古巣とも詠む=「鶯の去年(こぞ)の宿りの古巣とや我には人のつれなかるらむ」(古今集・詠み人知らず・1046)のこと。

訳文】(「鳴子引く田のもの風になびきつつなみよる暮れのむら雀かな」と)詠んでいる。鴬(の歌)にも(「鶯の去年(こぞ)の宿りの古巣とや我には人のつれなかるらむ」のように)「古巣」とも詠む(例があるのだから)、



本文】何か苦しからむ、この拾遺、

語釈】

※何か=〔疑問・反語の意を表す〕どうして~か・どうして~か、いや、~ない。

※苦しから(苦し)=〔下に打消・反語を伴って〕不都合だ・差しさわりがある。

※拾遺=侍従の唐風の呼び名。実任のこと。

訳文】(燕が巣に通うと詠むことに)どうして差し障りがあろうか(いやない)。この侍従(であった三条実任は)、



本文】この風体の御沙汰(ごさた)(くは)しく承りて詠む

語釈】

※風体=①外見・姿・身なり。②(能や和歌などの)表現様式・詠風・歌風・芸風。

※御沙汰=新風を求める東宮歌壇の意欲的な活動。

※承る=お聞きする。

訳文】このような(二条派の)歌風で、新風を求める東宮歌壇の意欲的な活動を詳しくお聞きして詠む(という歌風)



本文】にもあらねば、いかにもあれなれ

語釈】

※いかにもあれ=〔結果を考えない意を表す〕どうであっても。どうなろうとも。

訳文】でもないので、どうなろうとも良いけれ



本文】ど、かやうのたぐひ多し。ただ明恵(みゃうゑ)

語釈】

明恵上人(みゃうゑしゃうにん)=鎌倉時代前期の華厳宗の僧で歌人。京都栂尾(とがのお)高山寺(こうざんじ)を開き、栂尾の茶栽培の基礎を築いたことでも知られる。華厳宗中興の祖とされる。

訳文】ども、このような(無駄な添削が話題になる)例(は)多い。ただ明恵



本文】上人(しゃうにん)の『遣心和歌集(けんしんわかしふ)』序に書かれ

語釈】

明恵上人(みゃうゑしゃうにん)=鎌倉時代前期の華厳宗の僧で歌人。京都栂尾(とがのお)高山寺(こうざんじ)を開き、栂尾の茶栽培の基礎を築いたことでも知られる。華厳宗中興の祖とされる。

遣心和歌集(けんしんわかしふ)=明恵自撰の和歌集。序は現存しない。

訳文】上人が(自ら撰んだ)『遣心和歌集』(の)序文にお書きになって



本文】たるやうに、「すくは心のすくなり、

語釈】

訳文】いるように、「(歌が)風流であるのは(詠み手の)心が風流なのである、



本文】いまだ必ずしも(ことば)によらじ。やさ/しき

語釈】

※いまだ=①〔下に打消の語を伴って〕まだ。②まだ・今でも。

※必ずしも=「必ず」に同じ。①きっと・確かに・きまって。②〔下に打消・反語の表現を伴って〕必ずしも。

※やさしき(やさし)=優美だ・上品だ。

訳文】(『万葉集』の時代から)今でもまだ必ずしも言葉(の風流さ)に拠りはしまい。(歌が)優美なの



本文】は心やさしきなり。なんぞ

語釈】

※なんぞ=〔疑問・反語の意を表す〕どうして~か・どうして~か、いや、~ない。

訳文】は(詠み手の)心が優美なのである。どうして

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