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古文】知らず、ただ木の葉とこそ見ゆれ、下/
語釈】
※見ゆ=①見える・目に入る。②見られる。③見せる・思わせる。④姿を見せる・現れる・来る。⑤会う・対面する。⑥結婚する・妻になる。⑦思われる・考えられる。
訳文】分からず、ただ木の葉とばかり見えるのに、(下の方の葉を意味する)下
古文】葉と言へば歌の体、砕くるなり、/
語釈】
※歌の体=歌体。和歌の姿や風体。
※砕くる(砕く)=自動詞。①(物が)砕ける。②思い乱れる。③整わなくなる・散漫になる。
訳文】葉と言うと歌の姿が、整わなくなる、
古文】たださてあるべき由、申して、病に/て
語釈】
※由=①物に寄せて関係づけるもの。口実。理由。手段。縁。由緒。事情。②教養。風情。③(形式名詞として用いて)~の様子、~ということ、~の趣旨。
※病=①病気。②欠点。短所。詩歌・文章を作る上での修辞上の欠陥。③苦・苦労の種・気がかり。
訳文】(だから改変せずに)ただそのままにしておくべきであるということを、申し上げて(そのままにしたのであって実際には)、(和歌の)修辞上の欠陥で
古文】ははべるなり。またその心には落ちゐずして、/
語釈】
※落ちゐ(落ちゐる)=①(気持ちが)落ち着く・ゆったりする。②(事がらが)落着する・疑念がなくなる・納得する。
※また=①再び・もう一度。②〔多く「…もまた」の形で〕やはり・同じように・同じく。③そのほかに・それとは別に。
訳文】はございます。それとは別にその(充分吟味した上で和歌の欠陥を受け入れるという)心境には落着せずに、
古文】上辺ばかりを学びて、わざと先/達
語釈】
※学び(学ぶ)=まねる。教えられたとおりにする。
※わざと=わざわざ。
※先達=①修行・学問などで、先に道に達すること・また、その人・先人・先輩。②修験道で、他の修験者を先導すること・また、その人。③案内者・指導者。
訳文】上辺ばかりを真似て、わざわざ先人
古文】の読まぬ詞を詠み、同じことをも/
語釈】
訳文】が詠まない言葉を(先人が詠んでいないからという理由だけで選んで和歌に)詠み、(一首の中にわざと)同じ言葉をも
古文】詠まんは、返す返すその詮なし。今かやうの/
語釈】
※返す返す=①繰り返し繰り返し・何度も。②重ね重ね・どう考えても・よくよく。
※詮=①結局・究極。②要点・眼目。③なすべき方法・手段。④効果・かい・しるし。
※詮なし=しかたがない。無益だ。
訳文】詠むようなのは、どう考えてもそれをするだけの甲斐がない。今このような
古文】御沙汰につきて、古き体も心得/
語釈】
※御沙汰=新風を求める東宮歌壇の意欲的な活動。
※体=歌体。和歌の姿や風体。
訳文】新風を求める東宮歌壇の意欲的な活動に加わって、古歌の姿(さえ)も理解し
古文】おほせぬ輩も、わづかに学び/
語釈】
※おほせ(おほす)=〔動詞の連用形に付いて〕~遂げる・~果たす・~終える。
※輩=①同類・仲間。②連中・やから。
※わづかに(わづかなり)=〔「わづかに」の形で副詞的に用いて〕やっと・かろうじて。
※学び(学ぶ)=まねる。教えられたとおりにする。
訳文】果たしていない連中も、かろうじて(東宮歌壇の活動を)真似て
古文】読むことあれば、これを探り求/めて
語釈】
※探り(探る)=探す・探る・詮索する。
訳文】詠むこともあるので、これ(=古歌の中にある改変することのできない欠陥)を探り出して




