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古文】ことなり。古に立ち並ばんと思/は
語釈】
※古=①(経験したことのない遠い過去の意)遠い昔。②(経験したことのある近い過去の意)以前。③昔の人・過去のこと。
※立ち並ば(立ち並ぶ)=①立って並ぶ・並ぶ。②匹敵する・肩を並べる・同じほどになる。
訳文】(思っている)ことである。昔の(優れた)歌人に肩を並べようともし思う
古文】ば、古に劣らぬところは、いづく/
語釈】
※古=①(経験したことのない遠い過去の意)遠い昔。②(経験したことのある近い過去の意)以前。③昔の人・過去のこと。
※いづく=どこ。
訳文】ならば、昔の(優れた)歌人に劣らないところ(を持つに)は、どこ
古文】よりいかにぞすべきぞと、かなはぬま/で
語釈】
※いかにぞ=①〔相手の様子を問う〕どうだ・いかがか。②〔原因や事情を問う〕どういうわけなのか・どうしてか。
※ぞ=(疑問の語を伴い文末にある場合)〔問いただす〕~か。
※かなは(かなふ)=(下に打消の語を伴って)①いられる・すまされる・かなう。②対抗できる・かなう。③できる・可能である。
訳文】より(始めて)どのようにするのこそが良いだろうかと、対抗できないまで
古文】も、これこそ委しき大事にてもあ/る
語釈】
※これ=「昔の歌人に劣らないところは、どこよりいかにぞすべきぞ」と考えること。
※委しき(委し)=詳しい。詳細だ。つぶさである。
※にても=~であっても。〔「あり」「なし」などの語が下にくることが多い。〕
訳文】も、このように考えることこそが詳しく大事なことであってもよい
古文】に、ただ姿詞の上辺を学/び
語釈】
※姿=(和歌や俳諧などで言う)表現の仕方。
※学び(学ぶ)=まねる。教えられたとおりにする。
訳文】のに、ただ(歌の)表現の仕方・(歌の)言葉の上辺を真似ただけ
古文】て立ち並びたる心地せんは、叶ひ/
語釈】
※立ち並び(立ち並ぶ)=①立って並ぶ・並ぶ。②匹敵する・肩を並べる・同じほどになる。
※心地=①気持ち。②心構え。③感じ・気配。
※叶ひ(叶ふ)=(下に打消の語を伴って)①いられる・すまされる・かなう。②対抗できる・かなう。③できる・可能である。
訳文】で(昔の優れた歌人たちと)肩を並べている気がしているようでは、(昔の優れた歌人たちに)対抗でき
古文】はべりなんや。古人は我と心ざしを/
語釈】
※なんや=「なむや」に同じ。①〔「や」が疑問の意の場合〕~つもりはないか・~てくれないか。②〔「や」が反語の意の場合〕~できるだろうか、いや~できないだろう。
※古人=昔の優れた歌人。
※我と=自分自身で。自分から。
※心ざし=志。①かねてからの考え・意向。②愛情・好意・誠意。③お礼の贈り物・謝礼。④追善供養。
訳文】ますでそうか(いや、できないでしょう)。昔の優れた歌人は自分から(和歌への)愛情を
古文】述ぶ。これはそれを学ばんとする/
語釈】
※述ぶ=述べる。この場合は歌にすること。
※これ=当代の歌人のこと。
※それ=「古人の心ざし」のこと。
※学び(学ぶ)=まねる。教えられたとおりにする。
訳文】(歌として)述べる。当代の歌人はそれを真似ようとする
古文】心なれば、大きに変はれるなり。京極/
語釈】
※心=①精神。②気持ち。③意向。④判断・考え。
※京極入道中納言=藤原定家のこと。
訳文】考えであるから、(上辺を真似るだけとは)大いに異なっているのである。京極
古文】入道中納言、「寛平以往の歌に立ち/並ば
語釈】
※京極入道中納言=藤原定家のこと。以下、『近代秀歌』からの引用。
※寛平=宇多天皇の治世であった年号。寛平年間(889~898年)のこと。為兼はしばしば寛平以前の歌の体が歌の理想と説いた。
※以往=①〔以往〕その時からのち・以後・以降。②〔已往〕それより前・以前・往時。【本来、「以往」はある時以後、「已往」はある時以前の意であるが、混用されている。】。
※立ち並ば(立ち並ぶ)=①立って並ぶ・並ぶ。②匹敵する・肩を並べる・同じほどになる。
訳文】入道中納言(定家卿が『近代秀歌』の中で)、「(宇多天皇のご治世であった)寛平年間以前の歌に肩を並べ




