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古文】才学(さいかく)を好み、義を案じもち/

語釈】

※才学=漢語。才能と学識。持って生まれた才知と学んで得た知識。ことに漢学の知識を指す。中世以降は「才覚(=学問的な才能や知識を身につけていること。また、その才知。和歌や連歌の詠作に関する歌学的知識を言うことが多い)」と混同された。「さいがく」とも。①学才。学識。②知恵。機知。③工面。

※好み=①愛好し、②えり好み、選び取り、③注文し。

※義=①道理・条理。②意味・意義。

※案じ(案ず)=①思う・考える。②考えをめぐらす・工夫を凝らす。③心配する・気遣う。

※もちて=本来の動詞的意味が薄れ、多く「~をもちて」の形で、助詞的な連語として用いられる。「もて」「もつて」とも。①手段・方法・材料を表す)~によって・~を使って。②(原因・理由を表す)~によって。③(接続助詞的用法)~しながら。

訳文】才能と学識をえり好み、(和歌の)道理を考えてばかり



古文】てばかり問答(もんだふ)をする時、古人の/

語釈】

※ばかり=①(範囲・程度を表す)~ほど・~ぐらい。②(限定を表す)~だけ。

※問答=①質疑応答。論争して相手を説得すること。②問答歌の略。

※古人=昔の人。また、昔の優れた人。この場合は歌人のこと。

訳文】いながら論争している時、昔の優れた歌人の



古文】(ことば)をも我が(かた)の趣にのみ/

語釈】

※我が=自分の。

(かた)=①方角。②場所・位置。③対をなす一組の片方。④~の方面・~という点。⑤その方向にいる人、の意で、間接的に人を指す。敬意を伴う語。⑥方法・手段。⑦方位。

※趣=①進んでいく方向・次第。②趣意・主旨・大事な点。③風情・情趣。

※のみ=だけ。ばかり。すっかりずっと。

訳文】言葉をも自分の側の趣旨に(合うように)だけ



古文】とりなし、心は入れで僻様(ひがざま)(ことわ)り、

語釈】

※とりなし=①わざと実体とは扱いをし、②取り繕い、③仲裁し・調停し。

※心は入れで=「心を入る」(=心を込める。心打ち込む。専心する)の否定表現。

僻様(ひがざま)=間違った様子。正しくないさま。

(ことわ)り((ことわ)る)=①事の道理を判断し、②理に基づく判断の結果を表明し。

訳文】解釈し、心を込めないで間違って判断し、



古文】|我が物に得るところもなし。得る

語釈】

※我が物=①自分の所有物・自分の配偶者。②知識や技能において、理解が行き届き、自分の思い通りに駆使できる状態。自分の得意。

※得る(得)=①手に入れる。②男が女を娶る。③能力を身につける。

訳文】(そのせいで)自分のものとして身につけるものがない。身に



古文】ところなしは進むことなし。詠み出だす分/

語釈】

※進む=①自らの意志で行動する。②専心する・没入する。③気持ちがはやる。④前進する。⑤物事がはかどる。⑥昇進する。⑦上達する。

※詠み出だす=詠み始める。

※分=①一部分。②領域・段階。③身分・間柄。

訳文】つけるものがなければ上達もない。(自分が歌を)詠み始める段階



古文】も不審を挙ぐる(きは)も、同じ輪の/

語釈】

※不審=漢語。①納得できないこと。疑点。疑問点。②疑念。③疑問・質問。

※挙ぐる=他動詞。①高くする・掲げる。②持ち上げる。③上洛させる。

※際=①果て。②そば。③限度。④人生の最後の時。⑤折。⑥身分。

※同じ=①二つ以上のものの動作・状態が類似性を持つさま。②同一の対象・資格・場面などを共有するさま。③一つの人や物の関係する対象、ある状態、置かれている場面や資格が、時間の経過にかかわらず不変であるさま。

※輪=①車輪。②周り・周囲。③桶の(たが)

訳文】でも、疑問点を挙げる折にも、(それ以前と)同じ周囲の



古文】うちを出づることなき由、沙汰し候ふなり。/

語釈】

※出づる=①(出発点を中心に言う場合)~から出発する。~から離れる。②抽象的な意味で、ある限度を超える。超越する。③(到達点を中心に言う場合)~に姿を現す。出仕する。④(移動する主体の動作を中心にいう場合)出現する。発生する。

※由=①そぶり。様子。②伝聞した事柄を言う。~ということ。

※沙汰=①配慮のうえ処理すること。②支度。準備万端にすること。③指図。通達。④裁判。訴訟。⑤論議。問題として取り立てること。⑥うわさ。評判。⑦ことばによる意思表示。⑧~の事件。~のいきさつ。

訳文】中から超越することがないということ(を)、問題としているのです。



古文】されば年来の好事、これをのみ(たしな)

語釈】

※されば=①そうであるから・そうだから・それゆえ・だから。②そもそも・いったい(ぜんたい)。③さて・ところで。

※年来=①長年。②長い経験を積んでいること。

※好事=①漢語。善行。好都合なこと。②物好き。時に、文学に対する数寄者。ここでは冒頭にあげた「花下連歌」のこと。

※のみ=だけ。ばかり。すっかりずっと。

※嗜む=好き好む。好んで精を出す。心がけて励む。

訳文】そうであるから、長年にわたって「花下連歌」ばかりをずっと好んで精を出す



古文】由なるも、古人のさほど/

語釈】

※由=①そぶり。様子。②伝聞した事柄を言う。~ということ。

※古人=昔の人。また、昔の優れた人。この場合は歌人のこと。

※さほど=それほど。その程度。

※古人のさほど嗜むとや聞こえざりける=同格の「の」。「古人で、さほど嗜むとや聞こえざりける古人」の意。

訳文】様子であっても、昔の歌人でそれほど

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