皇帝と舞彩のカンケイ
……ひっく、ひっく……。
誰かが泣いている声が聞こえる。
思わず、自分が近づいていくと…………えええ、舞彩!?
な、なんで、泣いてるっすかっ!?
けど、ここを逃げるってわけにはいかないし……。
つーか、泣いている子を放っておけるほど、人間やめてません。はい。
「お父様の……ばか……」
なんで、そこでお父様?
え、どういうことっすか? もう少し待ったら何かわかるっすか?
息を潜めて、様子を見ています。
「こんなの……無理ですわ……毎日毎日、習い事に塾にお勉強……私もう、耐えられません」
「それは分かる」
あ、思わず、頷いてしまったよ、自分のばかーーー!!
「えっ……皇帝、様……?」
「……まあ、俺も似たようなものだからな。あれは俺でもキツイって思うし」
「皇帝様も……お辛いのですか?」
「何せ、それ以外、全部禁止されるからな……しかも海軍キャンプにぶっこまれる俺の身にもなってみろよ。グレるぞ。グレそびれたけどな」
「えっ……海軍? おじさまはそんなこと言っていなかったような……」
「その上、これでもかと皇帝学を学ばされるし、七面倒くさい仕事ばっか回してくるし、挙句の果てには、国のお偉いさんと相手をしろって、何考えてんだよ、あのクソ親父っ!!」
「えっ……そ、そんな方々とも……!? えっ……おじさま、そんなこと……してたかしら?」
「俺の好きな、ゲームとラノベ、だ・け・は……死守したけど……もっと言いたい!! プラモも漫画も友達と夜まで遊びたかったぞ、クソ親父ーーーーー!!!!」
「えっと……その……本当に苦労……されてましたのね? 皇帝様?」
くすんと、涙する自分に、舞彩は同情していた。そこにはもう、あの涙はない。
「あー、まあ……な。一族の大切なものを受け継ぐには、必要なもの……だと言われてた……今考えればやり過ぎな気もするけどな。けど、親父のよくやったっていう言葉はその、励みになるからな」
「皇帝様は、文句をおっしゃっていますけど、お父様のことが好きなのですね」
「だれが、あのクソ親父を好きになるかよ! ただの陰険腹黒親父だよっ!!」
「……おじさま、そんなに腹黒でしたっけ?」
「あれ……? 違ったか……?」
自分、改めて思い返す。
そういえば、ここに転生したとき、そんなにハードではなかったような……?
……………………あれ? じゃあ、あのクソ忌々しい記憶って、もしかして……自分の前世だったり、します……? あれ、でも、自分、ごくふつーーーの、サラリーマンっすよね?
と思った瞬間、ずきりと激しい痛みに襲われた。
「いつっ……」
「皇帝様?」
「あーー、とにかく」
自分は続けた。ちょっと痛い頭を抑えて。
「舞彩はそうやって、偉そうにしている方が、舞彩らしい。その方が好感が持てる。いいたいことはそれだけだ。それと……辛いなら、親に言うと良い。お前の親だって、辛そうにしているお前を見たら、多少は譲歩するだろうしな。じゃあな……」
そういって、自分はその場を後にしたのでした。
「……いたた。さっきの痛み、なんだったんだろう?」
思わず、首を傾げてみるが、そんな答えを知っている人は、ここにはいなくて。
仕方なく、自分はそのまま家に帰ったのでした。
ぴこん。
『綾小路舞彩との好感度が100になりました』。




