第51話 尖兵
精霊のアイからいろいろ話は聞いたけど、結局話の帰着点は同じなわけで、それはつまり。
「精霊を異界の魔物がさらってるのはわかったけど、どうやって救い出すんだ?」
この一点に限る。
どこに連れ去られたかもわからない。
仮にわかったとしても、異界に連れ戻されていた場合は異界に乗り込むすべがない。
それに、懸念点だってある。
「そもそも、異界の奴らはどうやって精霊を探し出してるんだ。ダンジョンがある限り、モンスターはダンジョンに召集されるんじゃないのか?」
俺の懸念。
アイに聞いた話だと、ダンジョンは精霊の技術力をもとに作られたという話だった。
そして異世界側には、元精霊の妖精がいる。
つまり、ダンジョンに対抗しうるだけの技術を編み出していたとしても不思議ではないわけで――
「それはたぶん、妖精たちが何らかの対抗措置を施したんだと思う」
「やっぱりか」
「でも、ダンジョンの防衛機能は基本的に作動してる。量産できるタイプの技術じゃないか、それとも適性が必要なのか。どちらにせよ、一度に多くのモンスターを相手にすることは――」
「なあ、アイ」
言葉を遮り、疑問を投げかけた。
「異界のモンスターたちは、地球にあるものより強力なコード:拡張シリーズを手にしているんじゃないか?」
「……っ」
「そうなんだな?」
言葉を詰まらせたアイに確信する。
「……かろうじて難を逃れた仲間が言うには、コード:覚醒同等の錠前を使っていたらしいわ」
「コード:覚醒って、おま――」
刹那、脳裏にバチリと電流が走った。
そこから背筋にかけて悪寒が走り、形容しがたい不安がこみあげてきた。
「――四次元フィールド‼」
嫌な予感に従って、俺とルナ、そしてアイを含む空間を四次元フィールドで切り取り、絶対の盾とする。
フィールドはここから地球の中心に向かって垂直に柱を伸ばすイメージで展開したので、フィールドが解除された後も地球との相対座標にズレは発生しない。
ゆえに、フィールドを展開する前と展開した後で、広がる光景に違いは生まれない。
はずだった。
「……な、なに⁉ 何が起こったの⁉」
次の瞬間、俺たちは野外にいた。
先ほどまで室内にいたにもかかわらず、だ。
そして、周囲の地面は俺たちのいた地点を除いて、スプーンで救ったかのように抉り抜かれている。
困惑するアイ。
「マスター」
「わかってる」
臨戦態勢に入る俺とルナ。
そして――
「ゼハハ! 詰まんねえ仕事だと思ったが、おもしれえ技使うじゃねえか、異世界人‼」
その抉れた地面の先端に、一匹の魔物が二本足で立っていた。
蛇のような瞳に、太く鋭利な尻尾。
コウモリのような膜翼、猛禽類のように鋭い爪。
そして、雪男のように巨大な体躯。
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言語理解Lv10発動
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龍人語を習得しました
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「名を遺せ」
ドラゴニュートがそこにいた。





