表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代のダンジョン化が始まる前に  作者: 一ノ瀬るちあ/エルティ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/55

第43話 龍華の決勝戦

 こんな話を聞いたことはあるだろうか。

 ――アニメーションは1秒あたり24コマ程度あると、連続的な静止画ではなく動画として認識できる。

 これはどうしてかというと、一般に人間が1秒間に認識する視界が30コマ分に相当するためだ。

 1秒間に24枚もの静止画を再生するアニメはもはや、人が認識している動きのある世界とほぼ変わりない速度で再生されていることになる。

 そこまで近似した世界を区別して認識するのは難しい。


 さて、ではこんな話は聞いたことがあるだろうか。

 ――1流のボクサーにとって、素人のパンチは止まっているように見える。


 この現象がどうして発生するかを説明しよう。

 まず、先にも述べた通り、人の動体視力は1秒あたり30コマを認識するのが一般的であると言われている。

 だが、1流のボクサーの視力は違う。


 100コマ。


 それがトッププロのボクサーが有すると言われている、1秒あたりに認識する風景の枚数である。


 10万馬力のパワーを持つロボットのアニメを見たことはあるだろうか。あれは最初、1秒あたり8枚で作成されたアニメだった。

 昨今のアニメと比べればそのカクツキがわかると思う。


 そう。

 これこそが1流のボクサーがパンチを止まって見えると口にする理由。



 だが、龍華の目の良さはそれすらも遥かにしのぐ。

 動体視力で言えば、おそらく人類最高クラス。


 加えて言うなら、反射神経。

 人間の反応速度の限界はおよそ0.1秒と言われるが、彼女の反射神経はそれに限りなく近かった。


 まさしく天賦の才。

 それこそが前回大会で優勝できた秘訣。


 だが、それだけだ。


 ――0.1秒の壁を、人は超えられない。


(あ……っ!!)


 亜音速のノーツが、レーンを通り抜けた。

 龍華が反射でタップするが、その時にはすでにノーツは流れ去っていた。

 ここで龍華のコンボが切れる……!


(ダメ! 今はこれ以上ミスをしないことを心がけないと!!)


 相手も同じところでミスをしているはずだ。

 そう信じて、龍華は譜面を叩き切った。


『LIVE CLEAR』


 久々に見た、『ALL PERFECT』以外の楽曲終了を知らせる画面。

 合計ミス数は1。

 その1ミスは仕方のないミスだった。


 全力を発揮できた。

 充足感で満ち満ちている。

 後は優勝を飾るだけ。

 そう、思っていた。


(……?)


 違和感。


 おかしい。何かが、歪んでいる。

 そんな確証の無い不気味さが襲ってくる。

 いや、違和感の根拠はすぐにわかった。


(誰も、声を発していない)


 楽曲の途中まであんなにざわついていた観客が、今は誰一人として言葉を発していない。マイクを使っていた進行役の男でさえ。


 でも、どうして。


「……うそ、でしょ?」


 龍華は改めて周囲を見渡し、驚きの声を零した。

 彼女が見た、自身の目を疑う物。

 それは――


『ALL PERFECT』


 隣に立つサングラスをかけた男のリザルト画面だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
応援は↑の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると
筆者の励みになります!

READ ME
エロゲのモブには荷が重い

カクヨム版
現代のダンジョン化が始まる前に ~事前にレベル上げをしていた俺は、ダンジョン化した世界でも余裕です~
現代のダンジョン化が始まる前に ~事前にレベル上げをしていた俺は、ダンジョン化した世界でも余裕です~
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ