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現代のダンジョン化が始まる前に  作者: 一ノ瀬るちあ/エルティ


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第41話 音ゲー大会決勝戦

 会場に入るときにも感じたことだけど、こういう場所は、空気の質が変わる。


 大会特有の匂いがすると言えばいいんだろうか。


 前にこれを肌で感じたのはいつだったか。

 大学受験の時だったかな。

 あの時はプレッシャーに押しつぶされたけど。


『決まったぁぁぁ!! 第1グループの頂点に立ったのは花咲(はなさか)おじさんだぁ!! フリック密度が全楽曲で一番濃い"There is Justice or Justice"でAP(オールパーフェクト)!! こいつは期待の新人だぁ!!』


 『花咲おじさん』は俺のプレイヤーネーム。

 『枯れ木に花』とどちらにするかは苦渋の選択を強いられた。

 ただやっぱり『枯れ木に花』だときざったいかなと思い、こっちを選んだという経緯がある。


「へえ、結構やるじゃん」

「ま、あれくらい余裕だな」


 余裕だけど、ちょっと疲れる。


 考えても見てほしいんだけど、100分の1秒で思考加速しているっていうことは、体感で100倍の時間楽曲をプレイしていることになる。

 今回だと1分51秒の楽曲なわけだけど、これは俺の体内時間に換算して3時間5分に当たる。

 それだけの間集中し続けるってのは結構骨が折れる。


(ステータスでINT(知力)上がってなかったらこれほど長い時間ゾーンを持続させられなかっただろうな)


 うーん。

 ゲームの大会に出れば圧倒できるのは分かったけど、それはそれとしてあんまり積極的に出たいとは思えないかも。




 以降、第3グループから第5グループではAP(オールパーフェクト)を達成するプレイヤーは現れず、純粋にスコアが高いプレイヤーが決勝に進出した。


「どうしてもサングラスは外さないんだ」


 決勝戦。

 俺たちはグループ順に並んだから、俺の隣には当然龍華がいる。


「そんなに俺の顔が気になるのか?」

「んー、そうだね。お兄さんカッコよさそうだし、一日くらいデートしてあげてもいいよ」

「案外醜い傷が広がってるかもしれないぜ?」

「それはそれでワイルドでありかも……」


 この時俺はピーンと来たね。

 やけにこの子絡んでくるなと思ったけど、よくよく考えれば俺の魅力(CHR)は1300超え。

 そりゃまあ気になるわな。


「ねえ、お兄さん勝負しようよ」

「勝負?」

「そ、あたしが勝ったらお兄さんは顔を見せる。お兄さんが勝ったら一日デートしてあげる」

「どっちもお前が得するじゃねえか」

「あはは! 可愛い女の子とデートできるじゃん」

「おー、はいはいそうだな」

「で、どうする?」


 俺とデートできることを得と言った俺も俺だけど、自分のことを可愛い女の子って表現するこいつもこいつだよな。

 ま、自信家じゃなきゃこういう場で優勝なんて成功体験は飾れないか。


「いいぜ、乗ってやるよ」

「そうこなくっちゃ!」




参寺(サンデラ)全国大会決勝戦!! この瞬間を待ち望んだプレイヤーはどれだけいるでしょう!! いよいよ新楽曲の、発表です!!』


 近未来的な効果音とともに、ディスプレイに競技曲が表示される。

 曲名は、"Sogna"。

 読みはソニアらしい。


『楽曲難易度は、なんと"焼失"を超える36だ!!』


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