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現代のダンジョン化が始まる前に  作者: 一ノ瀬るちあ/エルティ


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23/55

第23話 ナターシャ再来

 四次元フィールドとかいうチートスキルを手にしたわけで、今回の遠征は十分な成果を得られたって言っていいんじゃないかな。


 結局あの後、クイーントパーズジュエリーも倒して俺のレベルは672まで上がった。今のステータスはこんな感じ。


――――――――――――――――――――

灰咲(はいざき)一真(かずま)Lv672

――――――――――――――――――――

【STR】1476(+74)

【VIT】1262(+97)

【DEX】1510(+75)

【AGI】1557(+84)

【INT】1342(+86)

【CHA】1248(+59)

――――――――――――――――――――

・スキル SP:320

【鑑定】

【高速演算】

【言語理解】Lv10

【アイテムボックス】Lv10

【身体強化】Lv10

【成長加速】Lv10

【ゾーン】Lv10

【オーバーヒール】Lv4

【気功操作】Lv2

【並列思考】Lv2

【未来予知】Lv1

【四次元フィールド】Lv1

――――――――――――――――――――


 とりあえず、普通に過ごしていたら俺以上のステータスを持つ人外とは出会わないんじゃないかな。


『そういえばさ、俺は体質的に急激なレベルアップにも耐えれるけど、そうじゃない人にとってジュエリースライムって劇薬なんじゃね?』

『そうだよ? ついた名前が経験値ボム』

『こわ』


 不用意に倒してしまうと体中の骨が軋んだり筋肉がもりもり膨らんだりして、最終的には爆発するらしい。


 あれ?

 てことは本格的に、俺を上回るステータス持ちなんて天使ぐらいしかいないんじゃね?


 そしてその天使は基本的に、各々持ち場のダンジョンを管理していてそうそう外に出てこない。

 実質俺が最強じゃんね。


 カチリ。

 錠前のロックを再びかけて現実世界に戻ってくる。

 部屋は静まり返っていた。


『うし。ドアベル鳴らしまくってたやつも帰ったみたいだな』

『マスター、敵に知られた拠点は本拠地だろうと立ち去るのが吉』

『いつの時代の話だそれは』


 まあ、オートロックの賃貸に移るってのは考えた方がいいかもしれない。でもなー、ああいうのって口座引き落としなんだよな。

 金はあるけど馬鹿正直に口座に突っ込んだら税金の関係者がドクターフィッシュのごとく群がってきそうだし……。


 うーん。

 どうにか良い解決策はないものか。


「ん? 郵便受けに紙切れ?」


 あのぴんぽんぴんぽんうるさかった相手だろうか。

 おとなしく引いたかと思ったら書置き残していきやがったのか。


(あ、これロシア語だ)


 なんとなく手紙の相手がわかった気がするな。

 ナターシャだ。

 どうやって俺の居場所を突き止めたのやら。


『私はあなたの秘密を知っている。テレビ局にばらされたくなかったら目の前の公園にきて』


 だから怖いんだよ!

 脅しか? 脅迫罪で訴えてもいいんだぞ?


 というか、今の俺なら、多分逃げるだけならどうにでもなるし……。


『もちろん、あなたにも利がある話だと思うわ』


 ん?

 脅迫じゃなくて、あくまで交渉のつもりか?

 別に聞く必要はないけれど。

 聞くだけ聞いてやるか。


『ルナ、ちょっと外でかけてくる』

『じゃあ私も一緒に行くー!』

『お前は来るな! その羽目立つんだよ』

『えー! ぶーぶー!』


 ぶー垂れても連れていきません。

 ただでさえニュースで取り上げられてお尋ね者みたいになってるのに外を歩き回ろうと思うな。

 サングラスとマスクで変装できる範疇に無いんだよ。



『よう、昨日ぶりだな、ナターシャ』

『遅い。女の子をいつまで待たせるつもり……』


 公園のベンチに腰掛ける少女に背中側から声をかける。ぷいぷいといった様子でナターシャは振り返り、束の間停止した。


『え、え? カズマ、また一段とかっこよくなった?』


 おー、さすが魅力(CHA)1300超え。

 ナターシャのお顔真っ赤っか。


『惚れなおしただろ?』

『ばっ! べ、別にそんなこと思ってないし!? デートで夕焼けの海を見に行きたいとか子供は四人以上欲しいとか、そんなこと全然考えてないし!?』

『いやそこまでは言ってない』

『ぐっ、まさか誘導尋問だったとは。卑怯者!』


 いや、今のはお前が勝手に語りだしただろ……。

 正常な判断力を奪わせる魔性。

 魅力(CHA)ってチートステータス?


『……はあ。あんたがもっとブサイクだったらよかったのに』

『まさか、ブス専……っ』

『ちっがうから!! ただあんたが私の好みドストライクだから――だああ! もう! この話は終わり!!』


 いや、これはナターシャの頭が弱いだけだな。

 あんまり過信しないようにしておこう。


『単刀直入に聞くわ』

『すでにだいぶ脱線してた件』

『忘れてっ! ……カズマ。あなた、世界のダンジョン化に関わってるでしょう?』

『ん?』


 え?

 なに?

 どうしてそういうことになるの?


『根拠は3つあるわ。あなたの並外れた身体能力。ダンジョンから飛び降りてきたという目撃情報。――そして』


 ナターシャはスマホを取り出すと、俺に画面を見せた。スマホの画面は地図アプリが起動している。

 場所は、ここか?


『あなたのGPS情報が、一瞬途絶えたこと』


 ……待て。

 どうしてこいつが俺のGPS情報を知っている?


『ね、ちょっと歩こうか?』


 いや聞きたいことが山ほどあるんだが。


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