183 ルリア達対化け物
「お、斬れるな?」
「ルリア! そのまま斬りまくるのである! そやつには魔法があまり効かないのである!」
「わかった! レオナルド、ダーウ!」
「ぶるるるる!」
「がうがうがうがう!」
レオナルドは化け物に一気に近づく。
それにあわせて、あたしは木剣とかっこいい棒で化け物を斬りまくった。
「ガウガウガウガウ!」
ダーウが口に咥えたかっこいい棒で、化け物の足の方を斬りまくる。
「ぎやあああああああああ!」
ダメージは確実に入っている。だが硬すぎて、かっこいい棒は深く入らない。
「呪力で表面が覆われているのである!」
「やっかいだな!」
硬すぎるのは呪力による障壁に近いもので化け物の体表が覆われているからだ。
そのうえ、斬った傷は、呪力によってみるみるうちに修復していく。
「ダーウ! 化け物を川にいれないようにな!」
「ばう!」
あたしとダーウは傷が癒えるよりも速く棒をふるって新たに傷をつけていく。
化け物が溜まった毒水の中に入ったら厄介すぎる。
「なんとか、くいとめないと!」
「ばう!」「りゃあ!」
ダーウにあわせてロアが鳴く。赤ちゃんのロアは一生懸命応援してくれている。
あたしとダーウが化け物と戦っていると、瀕死の精霊達がじわじわとこちらに寄ってきはじめた。
きっと辛くて、辛くて、あたしとダーウの気配にすがってきているのだ。
「ぎゃはははは」
近づく精霊にきづいた化け物が甲高い声で笑った。
なぜか甲高いのに大人の男の声にしか聞こえない。
笑いながら化け物は近寄ってくる精霊に腕を伸ばす。
『精霊を、た、食べる気なのだ!』
慌てたクロが叫んだ。
「まずっ! レオナルド!」
「ぶる!」「ばう!」
あたしとレオナルド、そしてダーウは強引に化け物と精霊の間に突撃する。
あたしは化け物が伸ばした腕を棒と木剣で斬り、ダーウは足を斬った。
腕と足を切断することはできなかったが、傷をつけることには成功した。
「ぐちゃああ」
「よそみすんな? ルリアだけみとけ、ばけもの」
あたしとダーウは、化け物が精霊に手を出せないように、立ち回る。
「そなたたち、近づいたらだめなのである!」
スイは化け物が精霊に近づけないように魔法を駆使して攻撃してくれる。
『その精霊たちはまだ赤子ゆえ、言葉がわからないのだ!』
「あぶないから、こっちくんな!」
クロの言うとおりだとあたしも理解している。
だが、ふらふらと寄ってくる精霊達が危なすぎて、思わずあたしは叫んだ。
『と、とまったのだ?』
精霊達がピタッと止まる。
「こっちくんな! あとで抱っこしてやるからな! 我慢して」
なぜかわからないが、精霊達が止まった今がチャンスだ。
「スイちゃん、いまのうちにたおそ!」
「わかっているのである!」
あたしとダーウが棒を振るって傷つけて、スイが水魔法をぶつける。
通常、人間の魔導師は精霊から力を借りて魔法を放つ。
だから、精霊達が死にかけている状況では魔法は使えない。
だが、あたしと同様に竜であるスイは体内の潤沢な魔力を使って魔法を使えるのだ。
「だけど、いつもみたいに威力がでないのである!」
スイが叫ぶ。
スイも魔法を放つとき、いつもは精霊から手助けしてもらっているのだ。
「わかった! とどめはルリアとダーウにまかせろ!」
「がうがう!」
スイの水魔法は化け物を傷つけることはできていないが、押し下げることには成功している。
化け物は腕を振るって、あたしたちを攻撃しようとするが、
「させぬのである!」
そこにスイが水の弾丸を飛ばして、化け物の腕に当てる。
おかげで腕の攻撃はあたしからそれた。
「ありがと! スイちゃん!」
「うむ! なるべく速く仕留めるのである!」
「わかってる! このままだときりがないな? ダーウ!」
「があああぁぅ!」
あたしはダーウの名前を呼びながら、レオナルドを高速で化け物の後方に回り込ませる。
それだけで、ダーウは、あたしがダーウにやってほしいことを理解した。
ダーウは本気の速度で左右にフェイントをかけ、化け物の足元を通り抜けながら、左足を斬った。
「ヌゴォ! ユルサヌぞ!」
片足だけになった化け物は人の言葉でそう言いながら、左へと倒れかける。
そうしながら、ダーウに向かって手を伸ばした。
化け物が人の言葉を話したことに、一瞬驚いたが、気にしている場合じゃない。
「ルリアから目をはなしたな? ばけもの」
化け物があたしから目を離して、ダーウを見たのは一瞬だけ。
だが、その一瞬で、あたしとレオナルドには充分だ。
一瞬の隙を突き、あたしはレオナルドを操って、化け物の右側を通り抜けながら斬りつける。
「ギャアアアアア!」
完全な隙。呪力の防御も一瞬薄くなった。
化け物の上部、五分の一ぐらいの位置で斬りとることに成功した。
「よし! ダーウ!」
「ばうばうがう!」
通り過ぎたダーウが戻ってきて、今度は残った右足を切断した。
防御が薄くなっただけではない。あたしとダーウの斬撃も鋭くなっている。
あたしの棒と木剣も、ダーウの棒も、どんどん切れ味が増している気がする。
あたしとダーウ、そして棒と木剣が、戦闘中に成長しているのかもしれなかった。





