表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

181/183

181 ※呪術師の誤算

  ◇◇◇◇


 北の沼地の魔女の教主は、呪者の視覚を通じて見た光景を信じられなかった。


 毒に冒され、呪われていた守護獣と大公の末娘に大量の呪者をけしかけたのだ。

 大公の末娘を守る者達を殺し、末娘を人質にするには充分な戦力だったはずだ。


 だが、呪者は全滅した。あっさりと全滅してしまった。


「な、なんだあれは……なぜ、呪者が負けた?」


 大公の末娘は馬鹿そうな犬と一緒に、謎の棒を持って踊っていただけだ。

 だが、呪者は滅びた。理解ができない。


「おそらく、水竜公とやらの力では?」


 男爵を呪った呪術師デニスが言う。


「……それしか、考えられぬか」


 水竜公は間抜けそうな顔をしているが、力のある竜なのだ。

 呪者を滅ぼせたとしてもおかしくない。


「それにしても水竜公は強すぎます。作戦を修正する必要がありますな」


 幹部がうめくように言う。


「…………だが、これを動かせば……水竜公とて」


 デニスがブツブツ何かをつぶやいている前男爵だった物を見る。


「そうだな。いくら水竜公が強力な竜とて、こやつには勝てまい」


 前男爵だった物の表面は呪いと毒で覆われ、もはや触れることすらできない

 しかも、呪術により結晶化した表面は、それ自体が結界のようになり魔法を跳ね返すのだ。


 物理的にも鋼鉄より遥かに硬く、頑丈だ。

 防御力は完璧だ。


 そのうえ、前男爵だった物は急速に成長している。

 卵形の体は、成人男性の身長の二倍ぐらいの高さがある。短かった手足も成長していた。


 今では、デニスが命じれば高速で動くことができる。

 その足は馬なみの速さで走り、その腕は攻城兵器なみの力で岩すらたやすく砕く。


「さすがの水竜公とはいえ、こやつには勝てまいよ」

「そうですな。水竜公を屠った後も色々使えるでしょう」


 デニスは自慢げに言う。


 精鋭の騎士団や魔導師団を壊滅させるのもたやすいだろう。

 王城の壁も、前男爵だった物にかかれば、砂でできた壁のように簡単に壊すだろう。


「あれが、比類無き攻撃力と防御力を持つのは確かですが……水竜公に逃げられるのでは?」


 幹部が水竜公の方が速い可能性を指摘した。

 前男爵だった物はその重さ故に鈍重なのだ。


「…………ありうるな」

「それでは村を襲いましょう。民を人質に取れば……水竜公を陥れることはたやすいかと」


 なぜか水竜公は人が好きなようだ。

 指示に従わなければ、民を殺すといえば、罠にはめることは難しくないはずだ。


「そうだな。それでいこう。残りの呪者を使う。民は数人残ればいい。他は面倒だ。殺してしまえ」

「御意」


 幹部は教主の指示に従い、村人を殺し人質にとるために呪者を動かし始めた。


  ◇◇◇◇


「めぇぇ?(呪者が動いた、だと?)」


 呪者が動き出したことに、最初に気づいたのはヤギだった。

 どうやら、呪者が山を下り始めたらしい。


「もおお? もお?(目的は何だ? やはりルリア様か?)」

「ぶぼぼ?(ルリア様を狙うなら、山頂にむかうのではないか?)」

「ぴぃぴぃ(真の目的はわからぬが……とりあえず村を襲うつもりではないか)」


 オウムの言葉に、ヤギ達もそうかもしれないと考えた。


「ほほほぅ(人質をとるつもりやもしれぬ。村をこえて屋敷までいけば姉上もおられる)」

「ぴぴぴ(サラ殿のお母上もだ)」


 フクロウと雀の指摘は、もっともに思えた。


「めええ! (人質をとってルリア様をあやめようとしているのやも!)」


 それは守護獣たちにとって到底許せることではなかった。


「ぶぼぼぼ(だが、精霊達をまもらねばならぬ)」

「ほほおぅ(ルリア様に万一があれば、精霊達も無事ではあるまい)」

「めええ(それはそうなのだが……)」


 せめて一緒に行けたら。

 村人と精霊を同時に守れるのだが、そう考えた雀が尋ねた。


「ちゅっちゅ?(精霊達。一緒に来てくれる?)」

「…………」


 すると、精霊達は雀の周囲に集まった。


「もおお?(言葉がわかるのか?)」

「めええ……(普通はありえぬ。だが、ルリア様とふれあったゆえ……)」


 精霊の成長が促進され、言葉を発せなくとも理解できるようになったのかもしれなかった。


「ぶぼぼぼ! (我らが命をかけて守るゆえ、一緒に来てくれぬか?)」

「…………」


 精霊達はイノシシの言葉にも反応する。


「めえええ!(ありがたい。ともにいこうぞ!)」


 そしてヤギは守護獣と精霊達を見回した。


「めええめえ(我はいく。ルリア様が後顧の憂い無く戦えるように)」

「ぶぼぼ(ここで呪者を見逃せば、ルリア様に顔向けができぬ)」


 ヤギと猪の言葉に、守護獣達はみな頷いた。


「めええ!」


 そして、病み上がりの守護獣達と精霊達は、一斉に動き出した。


  ◇◇◇◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様&ありがとうございます ルリアを知らないと水竜公に目を向けるのは仕方がありませんね さぁ、みんなも気がついたし逆転のチャンス到来! では、また次回の更新もお待ちしております
がんばれ!
おお、守護獣たちも精霊たちも頑張ってる …けど前男爵も動く爆弾みたいなものだしどうなるやら
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ