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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

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179 未来の大剣豪ルリア

「スイちゃん、キャロ、コルコ、レオナルド、イノシシもありがと」

「余裕なのである」

「きゅ」「ここ」「ぶるるる~」「ぶぼぼ」


 ダーウの背に乗るあたしの元に、スイ達が集まってくるので、順番に撫でていく。

 もちろん、スイの頭も撫でまくった。


「みんな、ありがと」


 サンダーに乗ったサラもみんなのことを撫でている。

 キャロとコルコはサラに撫でられるためにわざわざサンダーの鞍に乗りにいった。


「またせたな? これでとりあえず、ここはだいじょうぶだ」

「ルリア様。大丈夫なのはここだけですか? いまの奴らが村人達の言う化け物では?」


 トマスは今のが化け物ならば、もう村に戻ってもいいのでは? と言いたいのだろう。


「ちがうな? な?」


 あたしは狩人達の方を見る。


「…………は、はい」


 ぼおっとしていた狩人の長が慌てたように返事をする。


「化け物というのは、今の奴らに少し似ていますが、もっと大きくて川にいます」

「うむ。すぐに、向かおう。サラちゃんもそれでいい?」

「ルリアちゃんは大丈夫?」

「よゆう」「ばうばーう」


 あたしはそう言いながらダーウの背から跳び降りる。

 そして、全員を魔法で診察していった。


 怪我しているのは戦っていた者達だ。

 サラやトマス、狩人達は、無事だった。


「よかったよかった。すぐになおすな?」


 あたしは順番に傷を治していく。


「ダーウとキャロと、コルコ……いたかったな?」

「ばう~」「きゅう」「ここ」


 ダーウ達はかすり傷だと言っているが、痛かったはずだ。


「スイちゃんとイノシシとレオナルドも……いたくない?」

「治ったのである! ありがと」「ぶぼぼ」「ひひぃん」

「よかったよかった」


 そして、あたしは呪者が襲ってくる前に解呪して治療した守護獣達を見る。

 ヤギと牛と鳥達が二十羽に、あたしに助けを求めに来た猪だ。


「みんな、まだ元気ないな?」

「めええぇぇぇ」「もおお」「ほほうほう」「ぴぃぴぃ」

「むりすんな」


 ヤギ達は一斉にもう元気だと言うが、そんなわけが無い。


「とりゃああああ」


 あたしは全員にまとめて治癒魔法をかけた。

 これで少しはましになったに違いない。


『ルリア様、精霊力を使い過ぎなのだ!』


 すかさず地中から出てきたクロが忠告してくる。


「……でも、ひじょうじたいだからな?」


 あたしは誰にも聞こえないよう、小声でささやいた。


「ヤギたちはここで休んでいてな?」

「めええ~」

「だめ。つれてかない。イノシシはみんなをまもってな?」

「ぶぼぼ~」


 猪はあたしについてきたそうだったが、納得してくれた。


「イノシシ、ありがと。あっ」

「ぶぼ?」

「これがおわったら、みんなにちゃんとした名前をつけてあげるな?」

「め!」「ぶぼぼ?」「もお~」「ほうほう!」


 ヤギたちは驚いて、それから喜んでくれた。


「だから、おとなしくまってるんだよ?」

「めえ~」

「いいこいいこ」


 そしてあたしはクロに、声を潜めて尋ねる。


「……精霊たちはなおせない?」


 あたしの目には精霊達も元気がないように見えたのだ。


『治癒魔法は効果ないのだ。でも時間経過でなおるのだ』

「ふむ~」


 あたしは守護獣達の中にいる精霊達のことを撫でていく。

 とはいえ、精霊達の数はとにかく多い。数千はいる。


 だから、精霊達がいるあたりを手でふわっとふれる様に動かすだけだ。


「みんなもげんきになってな?」


 当然、精霊達は何も言わない。でも、撫でずにはいられなかった。


 数分かけて、全ての精霊に触れたあと、あたしはサラに言う。


「サラちゃん、ヤギたちはだいじょうぶ。化け物とやらのとこにいこ」

「うん。ルリアちゃんも、本当にむりしないでね?」

「よゆう」「ばうばう~」


 あたしは走って、ダーウの背の上で跳んで、レオナルドの背にしがみつく。


「ふうふう。じゃあ、いこっか。狩人のみんなもだいじょうぶか?」

「は、はい。我らは大丈夫です」

「じゃあ、案内たのむな?」

「かしこまりました」


 そして、狩人達は静かに歩き始める。


 するとレオナルドの背にクロがやってきた。


『むむう……ルリア様、ひとまず休んだ方がよいのだ』

「んー。でも、ロアを助けたときより、つかれてないかも?」


 あたしは他の人に聞こえない様にささやいた。


「りゃむ?」


 ロアを助けたとき、あたしは精霊力を全身から出して、呪者を吹き飛ばした。

 それに、手のひらをかざすだけで、吹き飛ばしたりもした。


 無我夢中だったから、あまり鮮明には覚えてないけど、なんとなく覚えている。


「今回はふおおおーて、精霊力をだしてないからな?」

『確かに棒に精霊力をまとわせて戦っていたから……消費量は少ないのかもしれないのだ』


 手から精霊力を出して吹き飛ばすより、木剣に精霊力をまとわせた方が効率が良いのだろう。


「だから、だいじょうぶだよ?」

『本当に無理はしたらだめなのだ』

「心配してくれて、ありがと」

『…………ルリア様……その棒と木剣……』

「む? このかっこいい棒と剣がどうした?」


 これは湖畔の別邸に到着したときに見つけた棒である。

 罠探りに活躍し、最近は剣術の練習に活躍している。


 そして、木剣は兄にもらった普通の木剣だ。


『なんか、特殊な状態になっているのだ』

「ま、まさか!」


 あたしはサラとミアを見る。


「どしたの? ルリアちゃん、真剣な顔して」「……」

「…………まさか……このかっこいい棒が……ミアみたいに……?」

『それはないのだ』

「ないのか」


 がっかりである。

 かっこいい棒が、守護獣になったら楽しいと思ったのだ。


「でも、それもそうかな?」


 ミアは、サラが辛いときからずっと一緒にいたのだ。

 サラを慰め、そして、サラにかわいがられ大切にされ続けたからこそだ。


『その棒……魔導師の杖みたいになっているのだ』

「ふむ?」

『魔力を通しやすくなって、魔法の威力を増幅しているのだ』


 狩人達の目があるので、声を出しにくいあたしに向かって、クロは一方的に語っていく。


 簡単に言うと、かっこいい棒を使うと、魔法を発動させやすくなるようだ。

 精霊力の消費も抑えられるし、威力も高くなると言う。


「ほほう」

『ルリア様は、その棒と木剣で呪者を叩き切っていたのだ』


 あたしは叩き潰しているつもりだったが、斬っていたらしい。


「……きっていたか」


 あたしは、もはや剣豪と言ってもいいかもしれない。


『精霊力をまとっているときは、剣みたいに使えるのだ!』


 それは良いことを聞いた。


『ダーウのその棒も……ルリア様のと同じ感じなのだ』

「ばうばうばうばう」


 それを聞いて、ダーウは嬉しそうに棒を振り回す。

 ダーウは最近ずっと棒と一緒にいた。そのおかげで棒に不思議な力が宿ったのかもしれない。


「よかったな? ダーウ」

「わふ!」

「ルリアは……名のあるけんごうになってしまうかもな?」

「わうわう」

「ダーウはけんせい犬だな?」


 ダーウは歩きながら、ぶんぶんと棒を振り回している。

 その姿をよく見たら、どこか剣聖みたいな雰囲気が出ている気がした。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様&ありがとうございます 「けんせい犬」の部分だけで大笑いしたのは内緒です。しかし、近接戦闘に走るとは、魔法が使えないのも考えものですね では、また次回の更新もお待ちしております
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