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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

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175 守護獣の猪

※※2025/11/7 小説4巻発売! 予約受付中! コミックス2巻も絶賛発売中※※

 あたし達を化け物の元に案内してくれる狩人は二人だ。


 あたしがお願いしたので、少人数にしてくれたようだ。


 二人の狩人は四十代と十代前半ぐらいに見えた。


 一番若い十代前半の狩人は女の子だ。一人だけ若いのできっと見習いだろう。

 後ろ髪を白いリボンでくくっている。


「わかいな?」

「私の娘です。できるだけ少人数とのことでしたので……」


 四十代の狩人が村一番の狩人らしい。そして、娘はその狩人の助手とのことだ。


「私一人で行くことも考えたのですが……」


 最大限に能力を発揮するためには、助手がいた方が良いと考えたようだ。


「娘は若いですが、山歩きにも慣れており、腕も優れております」

「そっか、若いのにたいしたものだなぁ? ね、サラちゃん」

「そだね!」


 そういうと、娘は照れた様子で、ぺこりと頭を下げた。



 狩人親子は徒歩で、あたし達は馬に乗って進んでいく。

 ロアはあたしの頭の上、キャロとコルコはダーウの背中だ。


「目的地までどのくらいかかる?」


 あたしは狩人父に尋ねた。


「はい。いつもならば三時間ほどで到着いたしますが……」


 初めてのあたし達をつれているから、到着時間を読むのが難しいのだろう。


「そっか、とりあえず、いつものペースで進んでな? はやかったら言うし」

「かしこまりました」


 狩人親子はしばらく川の近くを歩いて進んでいく。


「やっぱりすくない」

「そだね」

「うむ。どこにいったのであるか? まさか……いや何でも無いのである」


 スイが言わなかったのは、精霊がやられてしまったのではないかという懸念だ。

 あたしも一瞬、その可能性を考えた。


「ヤギたちも風邪だものな?」


 呪者から精霊を守るのが守護獣の役目だ。

 その守護獣達は風邪を引いてしまった。


 その隙に襲われた可能性があるのではないだろうか。


「……どうか……ぶじで」


 あたしは精霊達の無事を願わずにはいられなかった。



 十五分ほど歩き、川から離れて山道に入った。


「ずっと川を上っていくわけじゃないんだね?」


 サラがぼそっとささやくように言うと、すぐ近くで護衛しているトマスが言う。


「川の近くを歩き続けるのは大変なんですよ」

「そうなの?」

「はい。川には滝があったりすることも珍しくありませんし」

「滝……登るの大変そう」

「はい、大変です。基本的に山道は尾根を歩くのがいいのですが、川は谷にありますからね」

「そっか」


 あたしはサラとトマスの会話を聞いて、なるほどなと思ったのだった。


 こんど姉に教えてあげようと思っていると、

「止まってください!」

 先頭を行く狩人父が緊張した声で言った。


「どした?」

「何かがいます」

「む?」


 狩人親子は警戒し、弓の弦に矢をつがえている。

 トマスはサラをかばうように一歩前に出た。


「種類はわかりませんが大きな獣がいます。大きさ的に熊かも……」


 狩人娘が緊張した様子で言う。


 あたしはチラリとダーウとその背中に乗るキャロとコルコを見た。

 ダーウは棒をぶんぶん楽しそうに振っているし、キャロとコルコはリラックスしている。


 全く警戒している様子がない。つまり危なくないということだ。


「トマス、狩人のみんなも、熊ならあまり警戒しなくていいよ?」

「なにをおっしゃいますか。熊は非常に危険な動物です!」


 狩人父がそういうと、トマスも頷く。


「ルリア様。熊は極めて手強い相手です。争いを避けられたらいいのですが……」


 あたしは後ろのほうでのんびりしているスイを見る。


「でも、スイちゃんがいるし?」

「うむ! スイがいるのである! スイがいれば野生の熊など近づいてこないのである!」


 スイの言葉を聞いても、狩人親子は警戒を解かない。

 スイの正体を知らないのだから、当然だ。


「サラ、ルリア。スイの正体をおしえてもよいであるか?」

「サラはいいとおもう」

「いいよ。その方が、きっといろいろ便利だし」


 非常事態に陥ってからだと、説明する時間が無いかもしれない。

 かばう必要の無いスイをかばって、狩人親子が大けがでもしたら大変だ。


「うむ! スイは水竜公なのであるからして、スイがいれば熊は近寄ってこないのである!」

「すい……りゅう? こう?」


 水竜公という言葉自体知らない狩人親子は困惑している。


「えっとね、スイちゃんは、偉大でとてもつよい竜なの」


 サラの説明を聞いて、

「そ、そうだったのですね!」「なんと!」

 狩人親子はやっとスイの正体について理解したようだ。


 狩人親子はあたしの頭の上に乗るロアと、馬に乗るスイを交互に見比べている。


 普通なら、スイは竜だと言われても信じがたいだろう。

 スイは尻尾と角が生えているだけの可愛い女の子なのだ。


 だが、権威ある領主のサラが言えば、そういうものかと信じられるものだ。


「りゃむ!」


 それにあたしの頭の上には竜の子供ロアが乗っている。

 竜の子供がいるなら、強い竜もいても不思議ではないという気になるのかもしれない。


「うむうむ。熊がきてもスイを見れば逃げるし、襲ってきても返り討ちなのである!」

「そだね! スイちゃんがいれば、獣は近づいてこないからあんしん!」

「ですが、ルリア様。獣は近づいてきているようですが」


 トマスがそういって、正面を指さす。

 距離はまだまだある。だが、ガサガサと藪が揺れる音が徐々に近づきつつあった。


「むむ? おかしいな?」

「りゃ~~?」


 あたしはロアと一緒に、じっくりと藪を観察した。

 その藪は丈が高く、尋常ではなく生い茂っており、中が見通せないのだ。


「むむ~」「りゃむ~」

「わふ!」


 あたしとロアが真剣に観察していると、ダーウが吠えた。


「む? ダーウどした?」


 次の瞬間、藪の中からゆっくりと猪が現れた。


「……ぶぼ」


 それはいつもは大公爵邸の近くに住んでいる守護獣の猪だ。

 いつもに比べて元気がない。


「でかすぎる! 閣下をお守りしろ!」


 狩人親子が矢を射かけようとするので、


「まて!」


 あたしは大声で止めた。


「その子はあたしの友達だ! こわくない!」


 あたしはレオナルドから飛び降りると、猪に近づいた。


「ぶぼぼ」


 猪はあたしにそっと鼻先を押しつける。

 体調がよくなさそうだ。


「おぬし……風邪ではなかったのか?」

「わふ~」


 ダーウも心配そうに猪の匂いを嗅いでいる。


 猪だけでなく、ヤギと牛、鳥達も、風邪をひいたと聞いていた。


 だが、猪の体にはごわごわの毛に隠れて、腫れ物ができている。

 腫れ物ができる風邪など聞いたことがない。


「これではまるで……」


 あたしは猪の全身を優しく撫でながら、腫れ物の位置と大きさ、数を調べていく。


 マリオンが罹ったとされた伝染病の赤痘に似ている。

 赤痘と口にだせば、サラやトマスがおびえるので口には出さない。


「あのときは……」


 マリオンは赤痘ではなく呪われていた。

 だが、今回は呪われていないとクロは言っていた。


「でも……呪われてないのに、似てる……む?」

「ぶぼぼ」

「……クロ」


 あたしは誰にも聞こえないぐらい小さな声で、地中にいるはずのクロに呼びかけた。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様&ありがとうございます どうやら病気と言われるものの正体にきがつきました…かな? それでは、次回の更新もお待ちしております 追伸 ここ任のアニメ化おめでとうございます
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