表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

155/183

155 風邪をひいたダーウ

 サラの屋敷に到着した次の日の朝。

 あたしは顔にへばりついたロアに揺すられて目を覚ました。


「りゃっりゃっりゃ」


 相変わらずロアのお腹はポンポンで、柔らかくて温かい。


「……ロア、今おきる」


 あたしはロアを優しく撫でながら、顔から引き剥がして、胸の前で抱っこする。


「……ロア、お腹すいちゃったか?」

「りゃりゃっりゃ」


 どうやらお腹がすいているわけではないらしい。

 ロアはパタパタ飛んで、あたしの足下の方へと飛んで行く。


 そこには、寝始めたときには、あたしの左隣にいたダーウがいた。

 そして、ダーウのことを、キャロとコルコが見守っていた。


 ちなみにスイはまだ寝ている。


「ダーウ? ダーウがどした?」

「ぴぃ~」

「え! 全身が痛いのか? た、大変だ! すぐに治癒魔――」

『待つのである!』


 治癒魔法を使おうとしたあたしの顔にクロがへばりつく。

 まるでロアのようだ。


「クロじゃま」

『邪魔してるのだ! その、すぐに治癒魔法を使おうとするくせをやめるのだ!』

「だって、ダーウが痛いって言ってる。非常時だし?」

『まず、よく観察するのだ!』


 クロに言われて、あたしはダーウのことを見る。


「ここがいたいか? ここは? 他にはどんな症状がある?」

「ぴぃ~ぴぃ~、くしゅん」


 手足が痛いし、関節も痛いし、頭も痛いし、熱もあるという。


「じゅ、重病だ、くしゃみまで、……治癒――」

『だから落ち着くのだ!』

「クロ、じゃま」

『だから、よく見るのだ! ダーウのそれはただの筋肉痛なのだ!』

「え? そんなはずは……そもそも昨日は筋肉痛じゃなかったし……。だな?」

「…………ぴぃ」

『次の日に痛くなることは、筋肉痛なら良くあることなのだ』

「し、しらなかった」


 あたしは筋肉痛になったことがない。

 それに、前世の聖女の頃にも筋肉痛を治せと言われたこともない。


 だから、筋肉痛に関しては知識がほとんど無いのだ。


「……ダーウ! 無理させてすまぬ!」


 あたしはダーウを抱きしめた。

 筋肉痛になったと言うことは、無理をしたということに違いない。


「わふぅ。くしゅん」

 全身が痛いというのに、ダーウはゆっくりと尻尾を揺らす。


「むむ? 筋肉痛でくしゃみはでないな? それに頭も痛いって」

「ぴぃ~くしゅん」

『筋肉痛になるぐらい走り続けて疲れたから、風邪をひいたのだ』

「なんと、筋肉痛に風邪まで……ち、治癒魔――」

『だから、落ち着くのだ! 昨日の話をもう忘れたのだ?』

「はっ! そういえばそうだった」


 悪化もしていない程度の風邪まで治したら、病気に対する抵抗力がなくなるという話だった。


『ダーウはしばらくゆっくりするしかないのだ』

「ぴぃ~ぴぃ~」


 哀れっぽくダーウが鳴くと、あたしまで悲しくなる。

 せめて、つらさが和らぐよう、あたしはダーウのことを優しく撫でた。


「りゃむ~」

 ロアもダーウのことを優しく撫でている。


「…………もしかして、クロは気づいてたか?」


 だから、風邪と筋肉痛に治癒魔法は使うなって話したのかもしれない。


『そうなるかもしれないと思っただけなのだ』

「そっかー、クロはすごいなぁ」


 あたしは、ダーウの保護者として、もっとしっかりしないといけないと思った。


「ダーウ、朝ご飯は食べられる? いや、お粥とかにした方がいいな?」

「わふ!」


 ダーウは「いや肉がいい」と力強く言う。


「でも消化によくないし?」

「ぴぃぴぃ~ぴぃ~」

「そ、そんなに肉がいいの?」

「ぁぅ!」


 あたしの口から肉という言葉を聞いたからか、ダーウはもうよだれを垂らしていた。


「ふわぁぁぁぁぁぁ。おはようである。む? ダーウ、どうしたのであるか?」


 スイが起きてきたので、あたしはダーウが筋肉痛で風邪をひいたと説明した。


「むむ~風邪。風邪ってどんな感じである? スイは竜だから、風邪とかひかないのである」

「竜は風邪ひかないのかぁ。いいな?」「りゃむ~」

「もちろん、筋肉痛にもならないのである」

「ほほー、すごい」「りゃ~」


 スイはダーウを撫でながら「筋肉痛ってどんな気持ちであるか?」とか聞いていた。


「ぴぃぴぃ~ぴぃ~」


 ダーウは哀れな声を出しているが、撫でられるのが嬉しいのか尻尾が揺れていた。


 あたしはダーウのことをスイにまかせて、寝間着から普段着に着替えた。

 サラのお屋敷についたら、自分のことは自分ですると決めたからだ。


 それから、再びみんなでダーウを撫でていると、侍女がやってくる。


 それは大公家からあたしと一緒に来てくれた侍女だった。


「ルリアお嬢様。水竜公閣下。朝食の準備が出来ましたよ。あら、もうお着替えはお済みですか」

「うむ。ルリアは自分で着替えられるからな?」

「それでは、食堂にまいりましょうか」

「それがそうもいかなくて……ダーウが風邪をひいちゃったからな?」


 あたしがそういうと、侍女はとても驚いた。


「え? ダーウが? ダーウ、具合が悪いの?」

「ぴぃ~」

「食堂に来られるかしら?」

「ダーウは三日間ずっとはしったせいで、筋肉痛にもなってるからな」

「なるほど。それでは食事をこちらに運んだ方が良さそうですね」

「たのむな? あたしの分もこっちに持ってきてほしい。あ、ダーウは肉が食べたいんだって」

「あ、スイもここで食べるのである! ダーウがかわいそうゆえな!」

「わかりました」


 しばらくして、食事が運ばれてきた。

 ダーウのためには山盛りのお肉、あたし達にはパンに肉や卵を挟んだものだ。


「おお、これだと、食べやすいな」

「気を遣ってくれたのであるな! うまい」


 スイはパンをむしゃむしゃ食べる。


「ダーウ、食べられるか?」

「ぴぃ~」

「たべられないかー。食べさせてあげるな?」


 あたしはお座りするダーウに、肉を細かく切って食べさせた。


「ダーウ。喉渇いてるであろ? 水を、いや少しぬるめのお湯を飲むのである」

「わふ~」


 あたしに肉を食べさせてもらい、スイにお湯を飲ませてもらい、ダーウはご機嫌だった。



「ルリアも食べると良いのである。お湯もあるのである!」

「ありがと。うまい!」


 そんなあたしに、スイがサンドイッチを食べさせてくれた。

 スイの出してくれたお湯もとてもおいしかった。


 あたし達は、ゆっくりと時間をかけて朝ご飯を食べたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あれ?ダーウってフェンリルだよねww 子供とはいえフェンリルが筋肉痛って話も中々ないと思うww
確かにドラゴンが筋肉痛になるお話は見たことないかな…
さて、ダーウは本当に風邪なのか気になりますです 更新お疲れ様です。また次回もよろしくお願いいたします
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ