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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

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153 ディディエ男爵邸

 あたしとスイがダーウを洗い終わると、侍女が客室へと案内してくれた。


「ダーウは三日、ずっと走ってたからな? 早く休んだ方が良いな?」

「え? 三日間走り続けたのですか? 凄いですね」

「わふ~」


 侍女に褒められて、ダーウは誇らしげだ。

 そのもふもふの毛皮を侍女に押しつけに行く。


「撫でてほしいんだって」

「よろしいのですか?」

「うん。よかったら撫でてあげてな?」

「ありがとうございます。うわ~ふわふわです」


 侍女に撫でられて、ダーウは嬉しそうに尻尾を揺らしていた。


 あたしと一緒に客室に向かったのは、ダーウの他にキャロとコルコ、ロア、それにスイだ。

 もちろん、あたしは、かっこいい棒を含めた荷物もしっかり持って行く。


 他の人には見えていないが、クロもちゃんとついてきている。


 サラと姉はマリオンと一緒にどこかに行った。

 サラは当主として、姉は父の名代として、使用人に挨拶する必要があるらしい。


「ルリアお嬢様、こちらになります」

「ありがと!」


 屋敷の中は非常に質素だった。だが、作りはしっかりしていて安っぽくはない。

 侍女が案内してくれた部屋は、大公家でのあたしの部屋にそっくりだった。


「おおー。初めてきたところなのに、あんしんかんがある」

「ご用がありましたらお呼びくださいね」

「うん。ありがとー」


 侍女が去ると、あたしは寝台に腰掛ける。


「ダーウ、こっちこい」

「わふ~」


 ダーウは嬉しそうに尻尾を揺らして、あたしの膝の上に顎を乗せた。


「ダーウはつかれたな? もう寝る? 寝たほうがいいな?」

「わわふ~」


 ダーウは、夜ご飯がまだだという。


「そういえば、そだな。食欲あるみたいでよかった」


 あたしはダーウの全身をくまなく撫でる。

 激しい運動の後など、ご飯をたべられなくなったりすることもあるのだ。

 お腹がすいているならば、それに越したことはない。


「むむ? 筋肉がはっている」

『そりゃ、あれだけ走ったら、張るのが普通なのだ』


 クロがダーウを撫でながら言う。

 侍女がいなくなったので、クロは話すことにしたようだ。


「そっかー。きんにくつうとか、だいじょうぶ?」

「ばう」

「そっか、大丈夫か。ダーウはつよいこだな? いたくない?」

「わふわう~」


 ダーウはそんなことよりお腹がすいたという。


「とりあえず、夜ご飯まで昼寝しよな?」


 そういってあたしが寝台に横になると、みんな横になる。


「ダーウも綺麗になってよかったな?」

「ぁぁぅ~」

「ルリアも、スイみたいにきれいにできたらいいいのだけどな?」

『当然、ダメなのだ。緊急時以外、魔法の使用は絶対禁止なのだ』


 クロに厳しく言われてしまった。


「わかってるけどな?」

『本当に、わかってるのだ? 筋肉痛とか風邪とかは緊急時にならないのだ』

「ふむ?」


 クロが急に筋肉痛と風邪について語り始めた。

 きっと、馬車のなかでほとんど話せなかったから、話をしたいにちがいない。


『もちろん、風邪をこじらせて、死にかけたら緊急時なのだ。でも、通常の風邪は――』


 ダーウがマッサージされる横で、クロが真剣に語っている。


『重病はともかく、風邪程度で治癒魔法を使うと体の抵抗力が落ちて――』

「ほー」

『そもそも、治癒魔法というのは強力すぎる薬のようなもので――』

「へー」

『ルリア様! 聞いてるのだ?』

「き、聞いてる」


 一応聞いていた。だが、幸せそうなダーウの顔を見つめるので忙しかったのだ。


 つまり、基本的には魔法を使わない方がいいらしい。

 魔法に頼り過ぎた場合、逆に病気になりやすくなることも考えられるとクロは言う。


『気持ちよさそうなダーウの顔を見つめているようにしかみえなかったのだ』

「そ、そんなことないが?」


 クロは鋭い。


「つまり、あれでしょ? 治癒魔法はきんきゅうのとき以外禁止。だな?」

『そうなのである』

「でもなぁ。そんなに治癒魔法ばかり使うやつとかおるのであるか? 金かかるのであろ?」


 あたし達と一緒に寝台に横になり、ダーウをなで回しながらスイが言う。


 一般的に治癒魔法の使い手は教会に所属していることが多い。

 そして、教会に治癒魔法を頼むと金がかかるのだ。


『昔、毎日治癒魔法をかけて、長生きしようとした王様がいたのだ』

「へー、そんな奴がのう」

『そやつは、治癒魔法の回復が間に合わなくなって、風邪であっさり死んだのだ』


 クロが言うには、どんどん体自体の持つ病気に抵抗する力が落ちていったらしい。

 そして、毎日治癒魔法を長い時間かけないと、風邪をひくようになったという。

 最終的には、いくら治癒魔法をかけても、病状は悪化し続けあっさり死んだらしい。


「そんなことがあったのか……。ルリアも気をつけないとな?」


 結局、侍女が呼びに来るまで、あたし達は昼寝せずに寝台の上でゴロゴロしていた。


 夕食は、マリオンを含めた皆で一緒に食堂で食べた。

 お風呂に入ろうと思ったのだが、大公家のものより小さいためダーウが入れないらしい。


「ならば、スイがきれいにしてあげるのである!」

「ありがと! たすかる!」

「ばうばう~」「きゅるる」「ここ」「りゃむ~」

「スイちゃん、ありがと! スイちゃんの魔法、きもちいいね」


 あたし達はスイに魔法できれいにしてもらうと自室へと戻った。


 みんな疲れていたので早めに就寝することにしたのだ。

 サラは今日だけは、あたしとではなくマリオンと寝ることにしたようだ。



 あたしはダーウ、キャロ、コルコ、ロアとスイと一緒に眠る。

 あたしが寝台で横になると、右隣にスイが、左隣にダーウが横になる。


「ダーウ、ゆっくり寝るといい、疲れたな?」

「ぁぁぁぁぁふ」


 大きくあくびをすると、ダーウは目をつぶる。

 そして、十秒後には、静かに寝息を立て始めた。


「やっぱり疲れていたのであるなー」

「そだな。キャロとコルコもよく眠るといい」

「きゅ」「ここ」

「ロアもよく眠る……もう寝てるな?」


 ロアは赤ちゃんなので、すぐに寝ちゃっても仕方の無いことだった。


 あたしも疲れていたからか、すぐに眠りに落ちたのだった。

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― 新着の感想 ―
少しだけいつものルリアに戻ってほっとします さて、今回の説教がフラグにならないといいけど…… 更新お疲れ様&ありがとうございました
ロアの名前がルクスになってますよ! ルクスはあっちの方の名前ですよー!
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