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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

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145 ルリアと精霊力

 王宮で王を救った日から一月がたった。

 あの日から、あたしは黒猫の姿の精霊王クロに見張られている。


『あっ! いま魔法をつかおうとしたのだ!』


 クロは背中に生えた羽をバサバサさせて怒っていた。


「し、してないよ?」


 本当にしていない。ただ、いつものように木剣を振っていただけだ。

 あたしは、自室で精霊たちと木剣を振り回して遊んでいた。


 すると、クロが怒るのだ。


『ごまかしてもバレバレなのだ! 木剣に精霊力が、それはもう濃厚な精霊力が!』

「そんなことないよ? いつもといっしょだが?」


 木剣に精霊力をまとわせること自体はクロもいいと言っている。

 だが、その精霊力が多すぎるとクロは怒っているのだ。


 ちなみに、普通の人は魔法を使うときに魔力を使う。

 だが、あたしの場合は魔力ではなく精霊力を使うらしい。


 とはいえ、魔力も精霊力も、使い方は同じなので似たようなものだ。


『いつもの三倍ぐらい精霊力が出てるのだ。それはもう魔法と言って過言ではないのだ!』

「わふ」「りゃ?」


 怒るクロを、後ろから大きな犬のダーウがバクっと口に入れた。

 ダーウは、クロの怒りからあたしを守ろうとしてくれたらしい。


 ダーウの頭の上には守護獣にして赤い幼竜でもある精霊王ロアが乗っかっている。


『ダーウ! やめるのだ! クロはルリア様のことを思っていっているのだ!』

「きゅ」「ここぅ」


 ダーウのそばでおとなしくしていた、キャロとコルコもダーウに「やめておけ」といっている。

 キャロとコルコは、どうやらあたしはクロに怒られるべきだと考えているらしい。


「わふ?」「りゃむ?」

「ダーウ、はなしてあげてな」


 あたしがそういうと、ダーウは口を開く。


『それでいいのだ。……とにかく、精霊力で覆うにしても限度があるのだ!』

「ルリアは、いつもとたいしてかわらなかったとおもうな?」

『全然変わるのだ! 王宮にいってから、特に精霊力の出力が増えているのだ!』

「そかな?」

『自覚がないところが、たちが悪いのだ! サラからも言ってやってほしいのだ』


 クロは近くでおとなしく絵本を読んでいたサラに言う。

 字が読めなかったサラも最近では絵本ぐらいなら読めるようになった。


 今は木の棒の人形から木の守護獣に進化したミアに絵本を読み聞かせてあげている。


「ルリアちゃん、遊びで精霊力つかったらだめよ? 誰かを助けるためでもないのに」

「…………」


 サラの横でミアもうんうんと無言で頷いていた。


 サラに冷静に言われると、反論できない。

 そうかもという思いにさせられる。


「ルリアちゃん、ただでさえ、困った人がいたらたすけちゃうんだから」

『そうなのだ! 普段は極力使ったらだめなのだ!』

「むう~、でもそれだと、精霊たちがつまらないっておもうな? な?」


 小さな精霊たちに尋ねると、

『るりあさまにたたかれるとたのしい』『びしびしっ』『びゅんびゅん』

 元気に返事をしてくれる。


「ならば、ルリアちゃんは精霊力を抑える練習をすべきであるな?」


 いつの間にか部屋に入ってきていた水竜公のスイがそんなことを言う。


 スイは両手に長くて固いパンを持っていた。


「スイちゃん、いつのまに! それにそのパンはいったい!?」

「む? 小腹が空いたから、ちょっともらってきたのである。たべるか?」

「たべる」「わふわふ」「りゃあ~」


 どうやら、パンを食べるのはあたしとダーウとロアだけらしい。


「サラちゃんは? たべないの?」

「おなかいっぱいだよ、お昼ご飯食べたばっかりだし」

「そっかー、サラちゃんは小食なのだな。キャロとコルコは?」

「きゅきゅ」「ここぅ」


 キャロとコルコも、昼ご飯を沢山食べたからいいという。


「そっかー、気がかわったら、いつでもいってな?」


 あたしとダーウ、ロア、それにスイは長くて固いパンを輪切りにして食べることにした。


「ジャムももらってきたゆえなー、塗るとうまい」

「おお、さすがスイちゃん。天才のしょぎょう」「ばうばう」


 ダーウもスイは天才だと称えていた。


 パンをもぐもぐしながら、あたしは尋ねた。


「むぐむぐ、それで、精霊力をおさえるって? どんなのだ?」

「もぐもぐ。スイは水竜公だから超強いのである。もぐもぐ」

「もぐむぐ。しってる。もぐもぐ」

「超強いから、いつも魔力を抑えているのである。もぐもぐ」

「ほほ~むぐむぐ」

「ちょっとみるがよいのである。むぐむぐ」


 スイはパンを食べながら、あたしの木剣を手でつかむ。


「ふん!」

「おお~、まりょくがでた。むぐむぐ」


 水竜公だけあって、剣を覆う魔力の量はすごく多かった。


「これをおさえていくのだ。もぐもぐ」


 そういうと、剣を覆っていた魔力があっという間に小さくなった。


「な?」

「おお~。スイちゃん、すごい」

「この程度なら、よいであろ? な? クロ」

『たしかにその程度なら、いいのだ』


 クロが言うにはもともと人が生きるだけで魔力は多少消費されるものだという。

 あたしの場合は魔力ではなく精霊力だが似たようなものだ。


 魔力も精霊力も、多少の消費は成長に悪くないらしい。


『だけど、ルリア様は、尋常ではない量の精霊力を一気に使うのだ!』

「そかな? そんなことないとおもうけどな?」

『そんなことあるのだ! 今、木剣にまとわせた精霊力は、普通の人の一月分相当なのだ!』

「そ、そんなに?」「わ、わふ?」

 ダーウもびっくりしている。


『そんななのだ! だから、そんなことを続けていたら……』

「背がのびなくなる?」

『そうなのだ!』


 それは困るので、あたしは精霊力を抑える訓練をすることにした。

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― 新着の感想 ―
背がのびないと育たないぞおっpげふっ(誰かのツッコミ
孫を叱る過保護なおじいちゃんって感じw それぐらいダダ漏れなんだろうけどね。 背が伸びなくなるだとなんか危機感あまりないけど成長が止まるって言われるとヤバそう
更新お疲れ様です >>精霊力 蛇口が壊れた水道みたいなものですからね……使い過ぎで(感覚も)壊れたのかもしれませんですねと これから学校行かなければならない……のはまだ主人公チームは秘密ですが、今…
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