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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
三章 五歳 王宮編

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142 国王救出作戦その3

「待て!」


 戦士がサラを止めようとしたが、サラは掻い潜る。

 サラは足が速く、すばしっこいのだ。


「あいつを止めろ!」


 戦士が叫ぶと同時に呪術師達が一体の呪者を新たに産み出した。


「GUAAAAAA!」


 産み出されたばかりの呪者は、サラを目がけて襲いかかる。

 呪者の爪がサラを切り裂こうとしたとき、


「…………」


 ミアが止めた。


「なんだ、あれは? ゴーレムか?」


 呪術師たちが混乱している隙に、あたしは、

「はああああ!」

 魔法をつかって、呪術師五人を吹き飛ばす。


 呪者をこれ以上呼ばれたら厄介だからだ。


「何という魔法の威力……」

 近衛騎士たちが呻き、


「五人同時に? 何という威力! 化け物か!」

 戦士は驚愕し、


「ひぃぃ」

 宰相はうずくまって悲鳴を上げた。


「よくわかったな? あたしは狐のあれだからな?」


 狐仮面をつけていることをいかして、あたしのことを狐の化け物だと思わせておく。

 そんなことしている間に、もう一人の狐仮面、サラが赤い像にたどり着いた。


「やめろっ!」


 戦士が慌てるが、もう遅い。


「とりゃああああ!」


 サラは赤い像を掴むと、力一杯放り投げた。なかなかの肩力だ。

 赤い像は壁にぶつかり、砕け散る。


 どうやら、サラは足が速いだけでなく、肩も強いらしい。

 あたしも負けていられない。


「でかした! りゃあああああ」


 あたしは同時に気合いを込めて精霊力を、呪者と王、近衛騎士達にぶつける。


「GYAAAAAA」


 悲鳴を上げて呪者は蒸発し、王は倒れて、腫れがひいていく。

 サラが赤い像を破壊してくれたお陰で、王を解呪できるようになったのだ。


「ちぃ!」


 戦士が王を殺そうと、襲い掛かるが、

「キュッ」「コココッ!」

 キャロとコルコが、戦士の前に立ち塞がった。


 呪者が消え去ったことで、キャロとコルコが自由に動けるようになったからだ。

「おまえはもう、あきらめたほうがいい」

 あたしはダーウの背から降りると、王に向かって歩いていく。


 ダーウにはサラを守るよう目で合図する。

「動け動け!」

 騎士達はなんとかもがいて、立ち上がろうとしてるが、上手くいっていない。


 近衛騎士達の拘束も解いているが、まだ全身がしびれているようだ。


「わふ」

 ダーウは正確にあたしの合図をくみ取って、サラと戦士の間に入った。


「お前は、あたしたちにかてない」

 あたしは戦士に向かってそう言いながら、王にゆっくりと近づいていく。


「お前ら、本当に何者だ?」

「お前に言うひつようはない。ただ、ただものではないのは確かだ。狐だしな?」


 会話で相手をしながら、時間を稼ぎ、治癒魔法で王の傷を癒やしていく。


「お前、魔法だけでなく、解呪と治癒魔法まで……聖女か?」

「聖女ではない。もし聖女だとしても狐の聖女だ」

「なにをわけわからんことを! ちっ!やむをえぬか。王の命だけ貰いうける!」

「それは、もうおそいな? やめたほうがいい」


 警告したにもかかわらず、戦士はあたしと王を目がけて襲いかかろうとする。


 剣を構え、魔法で身体強化をして、超高速で、あたし達に迫るが、

「ばうっ!」

 戦士はダーウに体当たりされて、

「ぐうう……」

 壁に激突して、苦しそうに呻く。


 手足を含めた骨が何本も折れて、内臓も傷ついているはずだ。

 身体強化をしてなかったら、死んでいただろう。


 ダーウは体重が重く、そしてものすごく速い。

 本気で体当たりされれば、馬車にひかれる以上のダメージを食らうことになる。


「だから、おそいといったのにな?」


 解呪したあと、あたしが警戒したのはサラと王を人質に取られることだ。

 だから、ダーウをサラの護衛に回し、あたし自身は王の護衛に入った。


 そして、小さい頃から一緒に育ったダーウはあたしの意思を正確に読み取ってくれた。


 あたしが会話で時間を稼いでいる間に、サラを背に乗せ、ゆっくりと移動していたのだ。

 戦士があたしと王に襲い掛かってきたとき、いつでも反撃できる位置にだ。


「えらかったな。完璧だ! まさにあたしが思い描いたとおり。すごいぞー」

「わふわふ!」


 ダーウは嬉しそうに尻尾を振った。


「だいじょうぶ?」「きゅきゅ」「ここぅ」「…………」


 そこにサラとキャロ、コルコ、ミアが戻ってくる。


「ん、だいじょうぶ。だいじょうぶ?」

「うん。だいじょうぶ」「きゅ」「こ」「……」


 名前を呼べないので、少し不便だ。

 そんなことをしている間に、王の治療が終わった。


 すぐに目を覚ますだろう。


「りゃあ」

「おとなしくしてて、えらかったな?」


 あたしはロアのことも撫でる。

 ロアはずっと、ダーウの首の上辺りにしがみついて大人しくしていたのだ。


「陛下は?」

 お爺さまと呼べば正体がばれるので、サラは敢えて陛下と呼んだ。


「治療はおわった」

「そっか」


 あたしがロアとダーウを撫でていると、サラは王の様子を診てくれる。


 一方、あたしは倒れている近衛騎士達にいう。


「まだ、くるしい?」

「だ、大丈夫です、お気遣いありがとうございます」

「あの、あなたは一体?」

「正体不明の狐仮面だが?」


 正体を誤魔化しながら、近衛騎士達に治癒魔法をかける。


「治癒魔法? なんと……ありがとうございます」

「数々の偉大なる魔法……それに解呪に治癒魔法……。感謝いたします」

「幼い姿だというのに……」「あなたは聖女なのですか?」


 近衛騎士達が起きあがりながらそんなことをいう。


「ヴァロア大公家の――」

「ちがうよ?」


 あたしは即座に否定する。あぶない。ばれるところだった。

 きっとダーウが大きくて目立つので、もしかしたらと思ったのかもしれない。


「あたしはただの通りすがりの狐仮面だよ?」

「な、なるほど……」


 なんとか誤魔化すことが出来たようだ。


「……狐仮面様。これほどの奇跡と言っていい魔法を使われるとは、聖女様ですね」

「ちがうよ? あたしは、ただの通りすがりの狐の仮面だ。聖女じゃないからな?」


 聖女だとばれたら、とても面倒なことになる。


「…………なるほど。聖女ではない狐仮面様であると」

「そうそう」

「狐仮面様に、感謝を」

 改めて近衛騎士達にお礼を言われた。

 そのとき、サラが明るい声を出す。


「あ、起きた?」

「おお……また、助けられたな」


 そういって、王はサラの頭を撫でると、あたしを見る。


「ルリ――」

「ちなみに、あたしたちは狐仮面だ」

「そ、そうか。そうだな、狐仮面……」


 あたしの言葉で、近衛騎士達がいることに気づいたようだ。

 王はすぐに名前を呼ぶのを辞めてくれた。


「陛下! 申し訳ございません! 御身を守るという役目を果たせず、この咎は命をもって――」

「よい」


 そして王は笑顔でいう。


「近衛騎士の大半を動かしたことが裏目に出たな。余の判断ミスだ」


 王は宰相を見た。


「こやつの裏切りを読めなかった余の責だ」


 どうやら、王は近衛騎士の大部分を動かして、何かしていたらしい。

 その隙を宰相に突かれたようだ。


「こやつらを捕えよ」

「御意!」


 近衛騎士達はテキパキと動いて、宰相や呪術師、戦士を拘束する。


「あ、王太子もたすけたから、すぐに来るよ」

「おお、王太子も……狐仮面が?」

「そうなる。……ちょうどきたかな?」


 遠くの方から騒がしい声が聞こえ始めた。


 その一分後、王太子とコンラート、それにスイと近衛騎士達がやってきた。


「陛下! よくぞご無事で!」

「狐仮面に助けられたぞ」

「私もです」


 そして、王と王太子は互いの無事を喜び合っていた。

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― 新着の感想 ―
狐仮面、一体何者なんだ・・・
ろいやるがーどの皆さんも王様もノリがいい(バレバレだけど) あんなんだった王様でも、命懸けで護衛するという騎士の鏡の皆さんはこれからも頑張ってもらいたいですね
ナイス狐仮面! このあとなぜかヴァロア大公家が凄くすごーく重宝されたりルリアが今までよりも更に可愛がられるんですよね、なぜか
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