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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
三章 五歳 王宮編

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141 国王救出作戦その2

 スイが水魔法で敵兵を押し流したのと同時に、ダーウは静かに走り始める。


 王太子と近衛騎士達は目立つ。スイは魔法が派手なのでもっと目立つ。

 敵はなんとかして侵入を止めようとするはずだ。


 近衛騎士は強いし、スイは規格外に強い。

 だが、王宮の構造は複雑だし、敵も抵抗するので王にたどり着くまでに時間がかかるだろう。


「いそがないとな?」

「うん。王太子殿下みたいになってたら、かわいそうだもんね」


 王太子も呪われかけていた。王も同様の目に遭っている可能性はある。

 王太子が王のところにたどり着いたとき、王が支配されていたら手遅れだ。


「精霊たち、ちかみちおしえて」

『こっち~』『でも、じゅしゃいる、こわいー』

「ダーウ、かまわずつっこんで」

「わふ」


 ダーウはすごい速さで走っていく。


「わぅ」

 小さく吠えると、ダーウが建物をびょんと跳び越えて、中庭に着地。

 続けて飛んで、屋根の上に乗って走って進む。


 王宮は敵の侵入を遅らせる為に複雑な迷路のような構造している。

 ダーウは、その身体能力を生かして、王宮の構造をほとんど無視して進んでいく。


「狐の仮面の子供とでかい化け物だと! 矢で射殺せ!」


 屋根の上を駆けるダーウを見た中庭にいた敵が、矢を射てくるが、

「ふん!」

 あたしは魔法で風吹かせて、矢をそらした。


「矢がとどかぬだと? 魔法を放て!」

 敵の魔導師が詠唱を開始するが、

「だめ!」

 あたしが自我がないほど幼い精霊たちに向かってそういうと、精霊たちは力を貸すのをやめる。


「え? 魔法が撃てない!」

 精霊が力を貸さなければ、魔導師は魔法を撃つことはできない。


「何をしているか! はやく魔法を放て!」

「魔力が消えるのです!」

「何を馬鹿なことを! さっさと魔法を放たぬか!」

 敵が混乱し始めたので、その隙に先へと進む。


『じいちゃんはあの建物だよ』『じゅしゃもいるし、じゅじゅつしもいる!』

『とびらは、のろいでふうじられてるよ!』

 精霊たちが教えてくれる。


 その扉の前には近衛騎士が十人ほどいた。王太子とこちらに向かっているのとは別の部隊だ。

 全員が扉を開けようと苦戦している。


 巨大なハンマーやノミやノコギリなどを使ってこじ開けようとしていたらしい。

 だが、呪いで封じられているのだから開くわけがない。


「止まれ! 何者だ!」

 あたしたちに気づいた近衛騎士から誰何(すいか)される。

 だが、尋ねたいのはこちらも同じだ。この近衛騎士は敵か味方か。


「あたしは王を助けにきた。おまえたちはどうだ?」

「当然、我らは王の盾である!」


 王の護衛を担う近衛騎士は「王の盾」とも呼ばれるのだ。


「そうか、ならば味方だな」

「怪しい奴め! 幼子の姿で巨大な魔物を操っているなどお前は妖魔の類いではないのか!」

「お前が味方だと証を立てよ!」

 近衛騎士の疑問はもっともだ。


 あたしも自分たちが怪しいことを自覚している。何せ、狐仮面を身につけているのだから。

「わかった。見ているといい」

 あたしはダーウの耳元に囁く。


「扉の封はあたしがあける そのままつっこんで!」

 騎士に聞こえないように小さな声で囁いた。

 だが、万が一、聞こえてもいいように、あたしは名前は口に出さない。


「ばうっ」

 ダーウがいいよと返事してくれたので、あたしは、扉に向かって手をかざして叫ぶ。


「ひらけえええ!」

 すると、扉は「ガキン」という音とともに封印が解かれた。


「ばあぁぁぅがああああああう!」

 ダーウが大声で吠えながら、体当たりをすると、扉は吹き飛んでいく。

 そのまま、ダーウは室内へと飛び込んだ。


「え? 開いただと!」「いくらやっても開かなかったのに!」

「突撃!」


 一瞬、近衛騎士は驚愕し固まったが、すぐに我に返って、あたし達に続いて室内に突入する。


「なっ」


 あたしたちの突入に、室内の者達は固まった。

 その隙に、あたしは室内を見回して、状況を把握する。


 王太子の時と同様に、室内には窓がなく、入り口も一つだけだ。

 瘴気も同様にこもっている。きっと、瘴気を逃がさないようそのような部屋を選んでいるのだ。

 中には縛られて宙に吊された王がいる。


 王太子と異なるのは、もう誰かわからないほど全身が腫れあがっていることだ。

 呪いが大分進行しているに違いない。


 王の近くには、鞭を持った宰相がいた。その鞭をつかって王を拷問していたのだろう。


 宰相以外の敵の陣容は犬型の呪者が三体、それに呪術師が五人だ。

 それに鎧を身につけて、剣を持つ戦士が一人いた。


 まず、敵が混乱している間に先手を取るべきだ。

「きえれええええ!」

 あたしは三体の呪者に気合いを入れて精霊力をぶつける。


「GIIIIIEEEEE」

 二体の呪者が蒸発するも、一体が残った。


「なに! なぜ、消える!」

「なぬ? どして、消えない?」


 宰相とあたしの声が同時にあがる。

 何故残ったのか。一体だけ特別なのか。どう違うのか。

 あたしは、戦闘中だというのに、つい考えてしまった。


「おい! 騎士たちをとめろ」

 宰相が叫ぶと、一斉に呪術師達があたし達に向かって手をかざす。


「おお、呪いか?」

 どうやら、あたしたちに一時的な呪いをかけたらしい。


『特殊な魔石を使っているのだ!』

「ませき? しんだまものからとれるやつ?」

『それとは違うのだ! 過程が違って……いや、あとで説明するけど、呪いの威力が高まるのだ』


 理屈はわからないが、呪いを増幅させる特殊な魔石を使っているらしい。


「なんと」


 敵に襲い掛かろうとしていた近衛騎士が全身を硬直させ、バタバタと倒れていく。

 確かに、呪いの効力が非常に高い。


「肝が冷えたぞ。まさか呪者を消す手段を持っていたとはな」

「う、動けぬ!」「何をした!」

「まだ話せるか? さすがは近衛騎士だな?」

「宰相閣下、これは一体……どういうことですか!」


 床に倒れた近衛騎士の隊長が、全身をわずかに痙攣させながら、呻く様に尋ねる。


「お前たちは謀反を起こし王を殺したのだ。忠義者の私はお前たちを討伐した。そういうことだ」

「なにを……」


 近衛騎士の反乱と言うことにして王を殺すつもりのようだ。

 宰相は、この前、王に怒られた。だからだろうか。


 他にも裏切りの理由はあるのかもしれないが、今のあたしにはどうでもいい。


「全員を殺せ」

「御意」


 宰相がそういうと、戦士が手を動かす。


「GYAAAAA!」

 同時に、消えなかった呪者が騎士達に向かって襲い掛かろうとし、

「きゃうううう」「ここここおお!」

 キャロとコルコが飛び出して、迎撃する。


 近衛騎士たちは動けなくとも、あたしたちは動ける。

 精霊と仲がよかったり、守護獣だったりするので、呪いに対して強いのだ。


「ありがと、たすか――」

「はあああああ!」


 最初に混乱から立ち直ったのは戦士だ。

 あたしが動けると判断し、一瞬の隙を突いて、あたしに向かって斬りかかってきた。


「あぶな」

 なんとか兄にもらった木剣で剣を弾く。


 剣で弾いたように見せかけて、実は魔法の壁で弾いておいた。


「ばうっ!」

 ダーウが爪を振るい、戦士は大きく後ろに飛んで距離を取る。

 素早い動き。凄腕の戦士だ。


「は、早く倒さぬか!」

 宰相は慌てるが、戦士は落ち着いたものだ。


「お前。ふざけた格好をしているが、ただ者ではないな?」

「わかるか? そうただものではない」


 顔を隠していても、やはり、わかる奴にはわかるらしい。


「おい、やれ」

 戦士が呪術師に対して指示を出す。


「まて! これ以上魔石を消費すれば、呪力がたりなくなり、王の支配が……」

「いま出さなければ、どちらにしろ終わりです。さっさと出さんか!」


 宰相は難色示したが戦士は却下して、呪術師にもう一度指示を出した。


「は、はい!」


 慌てた様子で、呪術師達が何かを唱えはじめる。一体何をしようというのか。

 それはともかく、どうやら、この中で戦士が一番厄介らしい。


 あたしは隙を窺う。

 その間も呪者とキャロとコルコが激しく戦っている。

 その呪者もかなり強いようだ。


「……あの戦士を倒すよ」


 敵が手強いならば、一番手強そうな奴から倒すべきだろう。


「ばう」

「おっと、少し大人しくしろ」


 あたしたちを見ていた戦士がそういって、王の首に剣を突きつける。


「……お前は王をころせないな?」

 王は利用したいはずだ。だったら殺せないはず。

 そう思ったのだが、騎士はにやりと笑う。


「そうともかぎらんぞ?」


 騎士は宙に吊された王の鎖を剣で斬った。どさりと、王が床に落ちる。


「お前、何を勝手な――」

「黙っていてください。出し惜しみして負けたら、俺もあんたも、死ぬしかないんだ」

 戦士がそういうと、宰相は押し黙った。


「少なくとも、お前らは王を殺せないはずだ」

 あたしをみて、にやりと笑うと、戦士は王に剣を渡す。


「……ガストネ、あいつらを殺せ」

「ぐああああああ!」


 王があたし達を目がけて襲い掛かってくる。


「なに! もう支配がすんでたとは! かわして!」

「ばうっ」


 ダーウは必死にかわす。

 反撃するのは簡単だ。だが、そうすれば王は無事では済まない。


「王を解呪する……はぁぁぁぁぁ、なに?」


 王と近衛騎士達の解呪をしようとしたが、弾かれた。

 この部屋に入ってすぐ、三体の呪者を浄化しようとして一体に弾かれた。

 それと同じ感覚だった。


『ルリア様! 王の後ろにある魔石で作られた赤い像と王が繋がっているのだ』

「む?」

『あれがある限り解呪できないのだ! 呪者を浄化できなかったのもあれのせいなのだ!』

「どすればいい?」

『あれを掴んで放り投げれば良いのだ!』


 次の瞬間、サラがダーウの背から飛び降りて、赤い像を目がけて走り始めた。

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― 新着の感想 ―
死んだ方がマシな地獄を短期間に2度も味わう王様可哀想。 98%くらい腐った世界を正そうと頑張ってただけなのに…… もうルリアが大人になるまで世界もたなそう。
問答無用で助けられるけど、段々と後手後手に回ってますね 1度の浄化で効果ないというのは…… ルリアが成長して城全体を浄化出来るまでいけたら外付け魔石すら壊して支配の呪いから解放できそうですが
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