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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
三章 五歳 王宮編

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136 毒入りのおやつ

「うぅぅ~~」


 ダーウはお菓子に向かってうなり声を上げる。


「スイちゃん、ぺっして、ぺっ」

「え? なんでであるか?」

「いいから! はなしはあと!」

「う、うむ、口から出すなんて、行儀悪いのであるが……」


 そういいながら、スイは口に入れたお菓子を吐き出した。


「いったいなんなのであるか?」

「ダーウの様子がおかしい……これは、くさってる可能性もある」

「スイちゃん、腐ってるもの食べたら、お腹すごく痛くなるよ?」

「そうなのであるか? こわいのである!」


 スイはやっと事態の深刻さに気づいたようだ。

 食い意地の張っているダーウが食べるなというのは、非常事態だ。

 ひとまず食べるべきではない。


「ダーウ、どんなにおいがした?」

「わふ~」


 ダーウは絶対食べたら駄目な臭いだと主張している。


「ふむ?」


 あたしは、お菓子に触れずにくんくんとおやつの臭いを嗅ぐ。


「これ、腐ってるお菓子の臭いじゃない」

「じゃあ、食べていいのであるか?」

「だめ。これは毒」


 前世で食べたことのある毒の臭いがした。

 あたしを虐める為に、たまに食事に毒を混ぜられたことがあった。

 その毒と同じ臭いだ。


「……からだがしびれてうごけなくなるやつだ」

「王の奴、ゆるせんのである! ルリアを毒殺しようとするなど! 万死に値するのである」


 怒りのあまり、スイの魔力が膨れあがった。


「スイちゃん、落ち着くといい。これは多分死なないやつだ。くるしいけどな?」


 あたしは冷静にスイをなだめる。


「これが落ち着いていられるか、なのである!」

「それにじいちゃんが毒をしこんだとはかぎらないからな?」

「…………ふむ?」

「こういうときは、情報収集がだいじ。クロ、精霊たちいる?」


 あたしが呼びかけると、クロが壁から、精霊たちが天井、床から生えてくる。


「話きいてたな?」

『聞いているのだ』『どくこわいー』『いやだねー』

「じいちゃんが、無事かしらべられる?」

『わかったのだ。おまえたち、いくのだ!』

『りょうかいりょうかい』『しらべる~』

「王宮にかわった様子があるかもみてきて?」

『まかせて!』『いってくる~~』


 精霊たちが、王宮の各地に飛んでいく。

 他の人には姿が見えず、壁も素通りできる精霊は密偵に最適なのだ。


「クロは侍従の様子をみてきて?」

『わかったのだ』


 クロはふわふわと外に飛んでいく。


「サラちゃん。だいじょうぶだ」


 あたしは不安そうにしているサラをぎゅっと抱きしめた。


「ダーウ、キャロ、コルコ、警戒してな?」

「わふ」「きゅ」「ここ」

「ミアも、いざというときはサラちゃんをまもってな?」

「…………」


 ミアはサラをかばうように前に出て警戒していた。


「心配しなくてもいいのである。いざとなれば、スイが全部吹き飛ばせばいいのである」


 そういって、スイはあたしたちを元気づけようとしてくれていた。


『見てきたのだ! 外にいる侍従達の会話を盗み聞きしたのだけど……』

「なんていってた?」

『ルリア様たちを逃がさないようにするのが役目みたいなのだ』

「ほう? 侍従は、敵か?」

「スイがしばき回してくるのである」

「まあ、まつといい。まだ謎があるからな?」

「謎とはなんであるか?」


 あたしは、スイとサラに向けて解説する。

 侍従が本物かどうかわからない。


 本物だったとしても、王の命令で動いているかもわからない。


「じいちゃんは、無事なのかな?」

「心配だね……」

「うん、じいちゃんが悪い奴に捕まってる可能性もある」


 その場合は、あたしたちが捕まってると思わせておいた方が良い。


「助け出さないとだね」

「そう。だからまずは精霊たちが戻ってくるのをまったほうがいい」


 そして、あたしは木剣とかっこいい棒をしっかり握りしめる。


「クロ、この建物の周りってどんなかんじ? こうぞうとか」

『うん、少し待つのだ』


 宙に浮いたままクロが前足をかかげると、ぼんやりとテーブルの上が光りはじめた。


『ええっと~こうなのだ!』


 テーブルの上に立体的な光の模型が出現する。


「クロすごい!」

「おお、後でやり方を教えて欲しいのである」


 その模型は、精霊の特殊な魔法なので、普通の人には見られない。

 だが、精霊をみることができるサラもスイも、しっかり見ることができるのだ。


『前に来たときにも見たから、建物の配置は覚えているのだ!』

「すごい! さすが、クロ! ありがと!」

『えへへ。これが、今いる離れなのだ。離れを囲む柵がこれで……、侍従の配置はここ』

「ふむふむ、わかりやすい。ちなみにこの前ルリアたちがいった謁見の間はどれ?」

『謁見の間のある王の宮殿はこれなのだ』


 それは離れから、千メトルほど離れているらしい。王宮はとても広いようだ。


「……とおいな?」

「陛下はそっちかな?」

「……そうかも」

「ぅぅ~」


 突然、ダーウが小さく唸った。


「どした? ダーウ」

「ぁぅ」


 ダーウは小さな声で吠えると、窓を見る。


「ん? あっ!」


 窓の外に、柵をよじ登るコンラートが見えた。

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