17 決 着
私が勝利するという形で、勝敗が決したかに見えたその時、ウルティマが不意打ちを仕掛けてきた。
何処かに潜んでいた彼は、私の背後へと転移してきたらしい。
防御は……間に合わない。
私は致命的な一撃を、受けてしまうことを覚悟する。
「グアッ!?」
「……?」
しかしその攻撃は、私に届くことはなかった。
むしろウルティマの方が、攻撃を受けている。
私との間に割って入った何者かによって、ウルティマは殴り飛ばされたのだ。
私なんかが繰り出すよりもはるかに重いその一撃は、彼を半ば地面にめり込ませる。
「ハーイ!!
大丈夫でしたかー、マルルぅ?」
「カプリちゃん!?」
私の危機に駆けつけてくれたのは、カプリちゃんだった。
いや、彼女だけではない。
眷属達が集合して、ウルティマにそれぞれの必殺スキルを撃ち込んでいる。
でも……なんで?
みんな遠くで避難していたはず……。
「私が『意識共有』でマルルの視覚を借りて、ずーっとウルティマを『鑑定』して、おかしな動きが無いか監視していたからね。
そっちの黒焦げが本体じゃないのは、分かっていたよ」
と、シルル。
「あ……そうか、『鑑定』か。
教えてくれれば良かったのに……」
「マルルも限界が近かったし、こちらで動いた方が早そうだったからね」
まあ、私も「鑑定」のことを忘れるくらい余裕を無くしていたから、たとえ「念話」で教えてもらったとしても、迅速に対応することができたのかどうか……。
それが怪しかったのは事実だね……。
「うん、ありがとう」
やっぱり私は、眷属の助けがあってこそ、生きていられるのだと実感する。
「それで……あのウルティマは、本体ってことでいいの?」
「たぶん間違いないね。
あの肉塊を全部燃やされちゃった所為で、かなり弱体化しているから、『鑑定』が前よりもハッキリ見えるよ」
そうか……。
でも、眷属達の攻撃を受けても、ウルティマはまだ倒れない。
弱体化してもなお、油断ならない敵だということだ。
一刻も早く、トドメを刺さなきゃ。
「ああ、後は私達に任せて。
マルルは休んでいてよ」
と、シルルはウルティマの方に向かって、歩いていく。
確かに「眷属の力」の反動で全身が痛いけど、無理をすればまだ……。
いや、ここはシルルに任せるか。
元々ウルティマと戦っていたのはシルルで、私は後からきて美味しいところを持っていったようなものだ。
決着は彼女に任せよう。
「ぐっ……この……!!」
ウルティマは、既にお姉ちゃんの「暗黒闘気」によって拘束されていた。
本来ならそれから抜け出すことは簡単だったはずだけど、それができないほど弱体化しているようだ。
「お姉ちゃん、上に」
「ああ!」
シルルに促されてお姉ちゃんは、「暗黒闘気」を触手のように伸ばし、それでウルティマの身体を上空へと高く持ち上げる。
放り投げるのではなく、「暗黒闘気」で拘束された状態で持ち上げているので、「転移」で逃げることもできないだろう。
実際、ウルティマも藻掻いているけど、抜け出すことができないようだ。
「こ、こんな……!!
こんなところで、俺が……!!」
悔しげになんか言っているけれど、ウルティマに殺された人達も同じように悔しかったと思うよ?
……でも良かった。
もしも彼が黒焦げの身代わりを置いて、そのまま逃走に徹していたら、こうはなっていなかったかもしれない。
彼が私を倒すことにこだわったからこそ、この結果に繋がった。
それは今この場で私にトドメを刺さなければ、将来に禍根を残す──そう思わせる程度に、彼を追い詰めてることができたからこそだ。
そして私達もウルティマを逃がしたら、「将来に禍根を残す」──そう思っているからこそ、絶対にここでトドメを刺す!
「じゃあ、永遠にさようなら」
「やめろおぉぉぉぉぉぉっ!!」
シルルが「天罰」を発動し、ウルティマ目掛けて撃ち放つ。
光の球がウルティマに触れる瞬間、お姉ちゃんの「暗黒闘気」が解除されて、彼の拘束が解かれるけれど、だからといって脱出することは不可能だろう。
ウルティマの周囲に、カプリちゃんが障壁を張り巡らして閉じ込めたからだ。
こうなると、「天罰」による爆発のエネルギーも外に逃げることはできず、そのすべてが彼の身体へと襲いかかる。
……下手をすると、私の「天罰」よりも、えげつない威力を発揮するのではなかろうか……。
実際、障壁の中では解放されないエネルギーが荒れ狂い、それが弱まるまで10分近い時間を要した。
あんな高エネルギーに長時間晒されるとか、万全の状態の私でも耐えられる気がしないよ……。
そしてすべてが終わった時、そこには何も残っていないかった。
あ、レベルが上がった。
今度こそウルティマを倒したかな?
「ふ~……」
安心した私は、脱力して地面に座り込んでしまった。
「今、治療を……!」
と、アイーシャさんが駆け寄ってくるけれど──、
「いや……先にあの人を、治してあげて」
「え……?」
私はウルティマが残した、黒焦げの分身を見た。
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