第77話 失われたイルカたん
今日、先輩たちの卒業式が終わり、家に帰ったら俺の大切なモノが消えていた。
「……え? あれ!? どこ!?」
「イリスなにしてるの?」
アリサが俺の部屋に入ってきた。それと同時に俺はある可能性に気づいてしまった。
「ママ、私のイルカたんは?」
「え? 汚れてたから要らないと思って捨てちゃったけど」
「…………」
「ちょっとイリス? 怖いんだけど、ちょっと落ち着い……きゃあああああああ!!!」
数時間後……
小鳥が帰ってきた時に俺の足元にはアリサが倒れていた。
「……どういうこと?」
俺はアリサが犯した大罪を小鳥に説明をした。
「まだ大事にしててくれたんだね。じゃあ新しいの用意してあげるよ」
「ありがとう小鳥お姉ちゃん」
これで新しいイルカたんが手に入るが、問題は今日だな。何故か1人だと落ち着かなくて眠れないんだよ。どうしたものか……
「わんっ!(主! これやって!)」
ルーシーはブラシを咥えて持ってきた。
まあ、気分転換にルーシーたちの毛並みをモフモフにしてやろう。
「はいはい、わかったよ」
このルーシーの毛を手入れしているのがまたなんとも心地いい……
「わふっ! わふんっ! わんっ!?(あっ! んっ! んあっ!?)」
黙ってろ。余計な演技なんて要らないんだよ。
「わふー(主が冷たい……)」
「あと少しやらせて」
数分後……
「ララ!」
『はーい』
次はララを呼び、手入れをする。
『あー極楽極楽……』
「左様ですか」
ララが終わったらロロ、ココを呼び、ロロ、ココの次にモモを呼んだ。
モモを手入れしてると小鳥がやってきた。
「あんた全員分のブラシできる体力あるなら階段とか余裕でしょうに……」
何故かこういう時だけ体力があるんだよな。階段とか全然無理なのに。
「はい、終わり。ララ、ココ、ロロ、ルーシー! 少し出かけるよ」
『『『はーい』』』
俺はルーシーに乗って『七星』に向かう。モモはお留守番だ。
「イリスちゃん、いらーさー」
「相変わらず変わってるね。ララたちは自由にしてていいよ」
『『『あざーす』』』
うん、俺はもうこの程度じゃ驚かないぞ。ロロが言ってても俺は反応しないぞ。
「イリスちゃんみたいな子のために新作出来たんだけど飲む?」
はいはい、幼女向けの飲み物ね。ふざけてるの?
「もちろん貰う。ちなみに名前は?」
「『リトルガールズミルクロリロリロリータアリスインヨウジョリヤンドロシアンプラナリアカプチーノ☆アルゴリズムアナスタシア@ナナセリュウパラレルココアラテエクストリーム!!』よ」
ツッコミどころが多すぎて何から言えばいいのか分からない。
「とりあえずプラナリアは入ってないよね?」
「淹れた方がいいかしら?」
「よくないけど!?」
「ふふっ、冗談よ。じゃあ淹れてくるわね」
月美ちゃんは奥に入って、少ししたら出てきた。
「はい、お待たせ。例のモノよ」
月美ちゃん実際商品名めんどくさがってるよな? まあ、とりあえず飲もう。
「……おいしい!」
「口に合って良かったわ」
普通にこれはいけるわ。旨いな。
「イリスちゃん、来月から3年生だけど大丈夫?」
「え? なにが?」
「部活よ」
ぶかつ? ナニソレ?
「そういえば後輩は?」
「ふっ、甘いわね。後輩なんて来ないのよ!」
だろうね。あんな厨二満載の部活に入るやつなんて居ないだろうな。
「じゃあ部活サボれるね」
「そうね。活動記録どうするの?」
「創設しとけば?」
「誰が書くの?」
「月美ちゃん」
そういうのはめんどくさいからな。
「部活動会議は?」
「寝てれば?」
「誰が出るの?」
「月美ちゃん」
そういうのはめんどくさいからな。
「部長は?」
「テキトーにやってれば?」
「誰がやるの?」
「月美ちゃん」
そういうのはめんどくさいからな。
「イリスちゃん? なにかしようか?」
「やだ」
「……そうだよね。イリスちゃんみたいな幼女には難しかったよね」
イラっ……
「まあ、幼女だし仕方ないよね? 5歳のお子ちゃま幼女にはなにも出来ないもんね」
我慢だ。これは堪えれば勝ちだ。
「イリスよーじょだからなーんにもできないの」
「そうね。幼女だもんね。じゃあ仕方ないね」
「うん! よーじょだからおかねもはらえないの」
ガシッ!
俺が席を立とうとすると、月美ちゃんが腕を掴んできた。
ちょっと痛い……
「イリスちゃん? さすがにふざけすぎよ?」
まるで小鳥みたいだな。お金に関する話が持ち上がったらこれだよ。
「心が狭いヒトはちんちんも入らないってママが言ってた」
「正気か」
これどういう意味だ? チ◯コって入るのか? どこに?(記憶は守護霊さんにより消去済み)
「私がこれだけイリスちゃんに手伝って欲しいって言ってるのに何もしてくれないなんてイリスちゃん心小さいね。
心が小さいヒトは胸も小さいってお母さんが言ってたわよ?」
命拾いしたな。身長について言ってたら貴様の命は無かったぞ。でも胸について言われても苛つくな。この巨乳風情が、死ねよ。
「仕方ないね。払ってあげよう」
「上から目線はやめなさい? そして何か手伝いなさい?」
「やだ」
俺はこの前ノノを取られたことを使って月美ちゃんを討ち取った。
「じゃあお金は払って置いたから、また来るね。じゃあね月美ちゃん」
「なんでウチのレジの使い方知ってるの?」
「さらばっ!」
俺はロロに乗ってルーシーたちを連れて颯爽と逃げて帰った。
その日の夜……
「眠れない……」
イルカたんが居ないだけでこんなに眠れないのか。仕方ない。
俺はコートを着て、手袋をつけてアリサのベッドに夜這いに行った。
「んっ、将吾。もう来たの?」
「……」
俺なんだが……アイツなにやってんの? もう子供が二人居て1人中学生になってるのにまだ作る気なの?
「あれ!? い、イリス!? ご、ごめんね。勘違いしてたわ。イルカちゃん私が捨てちゃったから眠れないのよね。ごめんね。一緒に寝ようか?」
「うん……」
その夜、将吾がやってきて、アリサと間違えて俺の服を脱がせようとしてきた時はマジでびびった。
まさか実の父親に殺されかけるとは思わなかった……




