第67話 三日月家の究極奥義
翌日……
今日から夏服だから着替えが楽だった。
「イリスちゃん、おはよ」
「おはよ、光ちゃん涼しそうだね」
「(毎年思うんだけど、真夏にイリスちゃんを見ても頑張って寒さに耐えてる幼女にしか見えないのが不思議なんだよね……)」
俺もこんな体質じゃなかったらな……いや、でもそれは体育に出なければならなくなるからやっぱりこの体質いるわ。
「イリスちゃん、行こうか?」
「うん! ルーシー、いってきます」
「わんっ!(いってらっしゃいませ! 主様!)」
俺たちはルーシーに見送られながら登校した。
「キミ、今日から夏服だぞ! コートなんて脱ぎなさい!」
俺を殺しにくる教頭……今日も(頭が)輝いていらっしゃる。
「イリスちゃんはコートが必要なんです! やめてあげてください!」
「そんな訳ないだろ! ほら、早く脱ぎなさい!」
ここでブレスレットはつけられないな……しかも脱いだら「脱げるじゃないか! なんで今までコートなんて着てたのかね?」とか言われて面倒ごとになりかねない。ここはコートを着たままでいこう。
「脱がないと力づくで脱がせるぞ!」
ピッ!
……ピッ?
「教頭先生? 今の発言を録音したので、教育委員会に送ってあげましょうか?」
「え? いや……その千田くん! それは言葉の綾というか……か、勘弁してくれ!」
「なら、その娘に関わらないでくれます?」
小鳥の犠牲者がまた増えた……でも今回ばかりは助かった。
「はい……」
髪の毛がなくて、輝いてる教頭は頭だけを輝やかせて立ち去って行った。
歩くたびに光るのはやめてほしい。笑ってしまいそうだ……あっ、転んだ。
「ふぅ、イリスちゃん大丈夫? 何かされてない?」
「うん、大丈夫だよ」
「アイツ次やったらクビにしてやるんだから」
ん? お前は教頭よりも強いのか?
「じゃあイリスちゃん、教室に行こうか? 先生ありがとうございました」
「どういたしまして」
俺と光ちゃんは教室に向かった。
「「月美ちゃんおはよー」」
「おはよイリスちゃん光ちゃん……」
なんか少し暗くね? どうしたんだ?
「月美ちゃん大丈夫?」
「うん、大丈夫よ……」
「悩み事なら聞くよ?」
「ありがとう、実はね。夏服にしてからみんな凄い私の胸を見てくるの……どうしたらいい?」
「…………」
聞かなければよかった……ここまでムカつく悩みは初めてだ。
「じゃあ私が削り取ってあげるね?」
俺はコートの中からやすりを取り出した。
「ちょちょちょちょ! 怖い怖い怖い怖い!! イリスちゃん、嫉妬もほどほどにしときなよ! っていうかそのコートどうなってるの?」
「むぅ……」
光ちゃんは俺を抱っこすることで俺の暴走を強制的に止めた。
俺はあの忌々しい胸を今すぐに削らなければならないんだ! 邪魔をするな!
「月美ちゃん、大丈夫だよ。私もみんなから見られてるから」
「光ちゃん……ありがとう!」
二人は俺をとあるブツで挟んで抱き合った。
「よし二人ともそこに並べ。削り取ってやる」
俺はコートからもう1本やすりを取り出し、両手で構える。
「だからそのコートはどうなってるの!?」
「いざ、参る」
「その勝負、受けてたつわ!」
俺が前に進むと月美ちゃんもマイハリセンで構えた。
「ちょっ! やめてよ! 月美ちゃんも止めてよ!」
俺は月美ちゃんに向かって走った。
「はああああああああ!!! 滅べ! 巨乳!」
「ふっ、甘いわ! 究極奥義! 三日月流 幼女切り!」
スパーンっ!
「うっ!」
ばたんっ!
俺はその場に倒れた。
「『三日月流 幼女切り』はご先祖様が迫りくる幼女に対抗するために編み出した伝説の究極奥義。これを受けた幼女は24時間立てなくなる!」
「くっ! やりおる……」
マジで立てない……恐るべし三日月家……
「それ作ったヒト絶対やましいことに使ったよね?」
「「光ちゃんって心が汚れてるね?」」
「よ、汚れてないし!」
はて、小1で18禁本を部屋に置いていたのは誰だったかな?
「イリスちゃん、床で倒れてるとアレだから座らせてあげるね」
光ちゃんは俺を抱き上げてそのまま抱っこした。
「座らせるんじゃなかったの?」
「いや、やっぱりこっちの方がよかったから……」
そして小鳥がホームルームをした後で今日も授業が始まった。
「じゃあここの英文をイリスちゃん読んで」
出席番号の日って本当に最悪だよな。めっちゃ当たるんだが……渡辺とかズルくない? ほとんど当たらないじゃん。
「はい、I am sexually attracted to little boys……って何読ませてんの!」
俺はショタコンでもホモでもないわ! 何が「私は男の子に性的に惹かれている」だよ! ふざけんな!
「まあ、イリスちゃんぐらいなら普通だから安心して」
「やめて光ちゃん!」
この前だって公園で同い年と間違えられて集られたんだからな! 絶対に恋することはないけど向こう側から告白されるの結構しんどいんだからな!
「イリスちゃんは光ちゃんの方が大好きだよね♪」
小鳥!? 今は国語の時間だぞ!?
「うええっ!? イリスちゃん……私もイリスちゃんのことは大好きだけど、イリスちゃんの気持ちには答えられないよ……」
なんでフラれてるの!? 別にそんなことないよ!?
「イリスちゃん、今日はごちそうにしてあげるからね」
「無駄に慰めるのやめてよ! 勘違いされるじゃん! っていうかされてるよ!」
「「「いいじゃないの~~」」」
だめよぉ……だめだめ! ってそれは古い! もうその時代は終わった!
「あの……授業中なんですが……」




