第63話 お泊まり勉強会 2
1日目のテストが終わり、俺たちは光ちゃんの家に行った。
「ほら上がって」
「「お邪魔しまーす」」
俺と月美ちゃんは靴を脱いで、向きを揃えた後、手を洗いうがいをしたところで光ちゃんの部屋に突撃した。
「「たのもーー!!!」」
「ここは道場じゃないっ!!」
明日の科目は国語と数学だったな。一応帰りに家に寄って理科を置いて、国語を入れてきた。
「じゃあ、国語の問題集やらないとね」
提出課題か……ダルいな。まあ、すぐに終わるだろ。
2時間後……
「終わらない……」
「イリスちゃん頑張って、殆ど空欄だよ」
「え?」
俺は自分の問題集用ノートを見ると殆どの問題が空欄になっていた。
「もう諦めよ」
「お前に解答は渡さない! 解答はこの怪盗 怪童が街道にある街灯の上で解凍して快刀で切らせてもらった! 返して欲しくばきちんと該当する場所に回答しなさい!」
スパーンっ!
「やかましいわ!」
よく噛まずにすらすらと言えたな!? 怪盗 怪童って誰だよ!? あと俺の解答は凍ってないし、人の解答を快刀で切るな!
「でも月美ちゃんの言う通り、答えを写すのはダメだよ。自力で解いたら?」
「それが出来たら苦労はしない」
「まあ、たったの2ページなのに2時間掛けてるからね」
これふざけてるだろ。っていうか漢字が全然読めない。
「もういい!」
俺はシャーペンを置いて床でゴロゴロとし始めた。
「「…………」」
「……あによう」
なんで俺のことずっと見てるんだよ。
「いや、別に」
「ふてくされるイリスちゃんも可愛いなって……」
「なっ!?」
そ、そんなこと気軽に言わないでくれよ!
っていうかなんで可愛いにそこまで反応したんだ!?
「ふふーん、なるへそなるへそ」
「月美ちゃんどうしたの?」
「べつに? イリスちゃんは可愛いね」
「にゃっ!?」
なんで突然恥ずかしくなるんだよ! 今まで全然普通だったのに!
「イリスちゃんは攻めがいがあるね。お父さんから貰ったかいがあったよ」
「ん? 何を貰ったって?」
今のセリフは聞き捨てならないなぁ?
「あ、アロマだよ!」
「ホントかなぁ?」
「……すいませんでした! 幼女にしか効かない魔法の秘薬です!」
なんでそんなものがあるんだよ!? ここ異世界じゃないよな!?
「でもでも! 本当に幼女にしか効かないんだよ! つまりそれが効いたイリスちゃんは幼女なんだよ!」
「っ!?」
なんだと……俺はまさか秘薬によって幼女であることが証明されてしまったというのか……
ばたんっ!
「すでにゴロゴロしてるのに倒れるわけあるかいっ!」
スパーンっ!
俺は月美ちゃんにマイハリセンで叩かれた。
「じゃあそろそろ買い物行くけど、二人はどうする?」
「「家で漁ってるね」」
「じゃあ行こうか?」
スルーをしてきやがった!
「光ちゃんはそれでも漫才師なの!?」
「漫才師じゃないよ? ほら行こうよ」
光ちゃんはグラサンをつけた。
グラサンだと!? お前まだそこまで有名な子役じゃないだろ! あの探偵のドラマだって短編がいくつもある感じで毎回主人公が変わるやつだろ!
むしろ俺の方がネットで「合法幼女ちゃんかわゆすぎっ!」とか言われて人気あるわ!
……なんか自分で言ってて虚しくなってきた。
「イリスちゃんのネットでの呼ばれかたは合法幼女ちゃんだもんね」
俺のことをよく把握してくる光ちゃんは時々怖いことを言う。
俺のこと全て調べられてるのか? どこから漏れて……ヤツらか。無理だ。アイツらには勝てない。
「ほら合法幼女ちゃん、行くよ」
「合法幼女ちゃん言うな!」
「はいはい」
俺たちはネオンモールに行く……と寄り道しそうなので、スーパーに行くことになった。
「何か希望は!」
「焼き鮭!」
「……よく飽きないね。今日食べたら3日連続じゃないの?」
ふふふ、この俺を甘く見て貰っちゃ困るね。
「なんと今日食べれば3週間連続焼き鮭なのじゃ!」
これこそが焼き鮭教徒の鑑だ! 焼き鮭教徒の諸君! 君たちも毎日焼き鮭を食べるのだ!
「「そんなんだから身長が小さいんだよ?」」
「うっ」
確かに毎日焼き鮭は身長伸びないだろうな。
「なんで焼き鮭だけしか食べないのに太らないの? 嫌がらせ? お肉あったよ」
そんなことは知らん。俺の身長体重は常に平均を大きく下回るのだ!
「確かにイリスちゃんはほとんど動いてないよね。でもまだ成長期だからあまり太らないんだよ。あっ、じゃがいも発見」
せいちょうき? なにそれ?
「イリスちゃんは成長期なんてもう終わってるよ。はい、たまねぎ」
月美ちゃんがたまねぎをかごに入れようとした瞬間に俺はたまねぎを奪い取り、元の場所に戻して、かごを見るとたまねぎが入っていた。
「ふっ! 甘い。甘すぎるわ!!
ネット通販人気ランキング1位の超絶激甘々イチゴパフェチョコレートナッツ☆バナナアイスホイップ@ナナセリュウスイーツより、はるかに甘いわ!!」
基準がわからん!
「だからかごの中にカレーの材料が全て揃っているのよ!」
「ほへ?」
俺はかごを見るとお肉、じゃがいも、ニンジン、たまねぎ、パーモンドカレーが入っていた。
本当に全部入ってる! いつの間に!?
「今日は私が作るね」
このままいくと明日は俺が作る流れになりそうだな。はっきり言って何も作れないぞ。
「じゃあ二人は外で待ってて、買ってくるから」
俺と月美ちゃんは外で待つことになり、その後光ちゃんが買ってきたところで、光ちゃん家に帰った。
「じゃあ作ってくるからイリスちゃんは国語をやるようにね」
「はぁ……」
それから国語をやり、なんとか丸つけを行うことができ、全問不正解だったところで光ちゃんが呼んできたので、夕飯を食べて解答を確認して、光ちゃんとお風呂に入って身体を洗ってもらい、パジャマ(という名のワンピ)の上からコートを着て部屋に戻る。
ちなみに月美ちゃんは先に入った。
「今日は3人でお話できるね」
「昨日は野菜1つで気絶した人がいたからね」
二人揃ってこっち見んな! そもそも野菜を与えたやつが悪い!
「イリスちゃんは恋とか……するわけないか」
「失礼な、私だって1回ぐらいあるよ!」
「「えっ!? それ詳しくっ!」」
うおっ! めっちゃ食いついてきた。
「やっぱり蒼真くん? それとも士郎くん?」
「ママが大好き!」
「はぁ……期待して損した」
「イリスちゃん、それは恋じゃないよ」
なんかめっちゃガッカリされた! 俺の初恋だぞ!? その扱いは酷くね?
「ふにゃあぁぁぁぁ……」
俺としたことがまた人前であくびを……まあ女子同士だからいいか。
「イリスちゃんのあくびって可愛いよね」
「ふにゃっ!?」
いい加減アロマを捨てろ! 『ドキっ!』ってするから!
「イリスちゃん、その仕草は反則だよ。でも幼女はもう寝る時間だからね。仕方ないね」
「光ちゃん以外にイリスちゃんを幼女と本人の目の前で呼べるヒトって実はそんなに居ないんだよ?」
「え? そうなの?」
なんか眠いな……もう寝るか。おやすみ……




