第56話 月美曰く増えよカオス!
今日は授業で初めて体育が行われる日だ。女子は女子更衣室に移動するのだが、俺は着替える必要がないので、先に行こうとしたら転んだので、光ちゃんに抱っこされ女子更衣室に誘拐された。
「じゃあイリスちゃん。そこに座っててね」
光ちゃんが俺をソファーに座らさせた。
更衣室が新しいからっていうのは分かるが、綺麗過ぎないか? 絶対校舎よりも綺麗だろ。これが女子の優遇か……おまけに個人用ロッカー、ソファー付きとかふざけてるな。
男子を見習えよ! あいつらは今も尚、教室で着替えてるんだぞ!? 廊下から他のクラスの女子たちに見られながら着替えてるんだぞ!?
……あっ、俺の名前が書かれたロッカー発見。2段あるうちの下側で開けやすい。
「へぇ、スカートを吊るすハンガーまであるんだ……」
開けてみるとハンガーが2つとスカート用のハンガー、消臭◯、ファ◯リーズ、黒いビニール袋が入っていた。
「豪華すぎ……」
「ホント凄いよね。そういえば体育の先生ってどんな先生だろうね」
……俺の直感が正しければ間違いなく今まで登場することが出来なかったアイツだろうな。
「俺は『ルナー・ニッチョン・ミツバチ体育連合』CEOのスロルカ・ソーゴだ!
お前ら! 体育は大好きか!!!」
「「「…………」」」
「お前ら好きじゃないのか!? なら好きにしてやんよ! まずはグラウンド50周!」
違った。違ったけど色んな意味でヤバい外国人の先生だった。いきなりグラウンド50周とかアニメかよ……
でもみんな文句を言いながら走り始める辺り凄いな。まあ俺は見学だから関係ないけどな。頑張れみんな。
「おい、お前は何してるんだ。俺は見学なんて許さないぞ! お前もみんなが走り終えるまで走ってこい!」
理解不能。でも走らないと余計なことされそうだから走って、あとで小鳥に言っておこう。
お前の運命は決まった!
1分後……
「イリスちゃん、大丈夫?」
「はぁはぁ……」
光ちゃんはなぜ余裕なんだ……あっ、自衛隊だからこれぐらい他愛ないのか……
ばたんっ!
「イリスちゃん!」
俺は倒れると目の前が真っ暗になった。
……ここは、保健室か?
「お前クビ!」
「先生! これはおかしいですよ! 僕はただ体育が楽しいことを理解させたかっただけです!!」
「ドクターストップかかってる人を走らせるのはヒトとして問題よ!! お前クビ! 明日から来なくていいよ!」
小鳥強い……他の教師をクビにする権限持ってるのか。
「俺の19年間の教師生活がこんなにあっさり……よし、もうはっちゃけよう!」
はっちゃけるな! お前明日から来なくなるから最後の1日はふざけようという魂胆はやめろ!! 死人が出るわ! 確かにもうクビになったからハイパー無敵状態だけどさ、それは違うだろ!?
「ぱっかーん! いくぜ☆」
体育教師は高く飛び上がった。
輝け流星の……やめろ! つい癖で乗っちまったじゃねーか!?
「生徒の運命は俺が変える!」
変えるな! お前は家に帰れ!
「お前の運命は我輩が変える!」
ここにもめんどくさい奴が!!! つーかお前誰だよ!? モブは引っ込んでろ!
「貴様ら人類のFateは我が漆黒の……」
音色先輩は何故ここに……授業中だぞ。そしてやっぱり何を言ってるのかわからねー
「では千田先生! さらば!」
「ちょっ!?」
ニッチョンのCEOが校内に放たれてしまった……
「くくく……やはり悪魔だったか。ならばこのヴァンパイアネイロが退治してくれる!」
音色先輩……あんなのと同じにされる悪魔が可哀想ですのでやめてください。
「イリスちゃん、体調は大丈夫?」
「うん、ありがと小鳥お姉ちゃん。じゃあ授業中に戻るね」
俺はコートに付いた汚れを払い落として教室に戻る。
「…………」
「うえーい!!! ほらほらどうした!! もっとはっちゃけろよ! ひゃほーっ!!!」
頼むからウチのクラスでやらないでくれ……教卓の上に乗って授業妨害する教師とか最強だな。ネットにあげておくか。
「ほれ! ほれ! ほほほーれっ!」
服を脱ぎ始めるな! そんでもって投げるな! 臭いわ!!
「体育を好きにしてやんよ! してやんよ! してやんよ!」
その格好で言われると何か別の意味に聞こえるんだが……一体何をするんだ?
「してやんよ! してやんよ! してやんよ!」
「「「してやんよ! してやんよ! してやんよ!」」」
クラスメイトが一斉に真似をし始めた。
めっちゃ混沌!! お前らは小学1年生か!?
「イリスちゃん、凄い混沌だよね。私こういうの結構好きなの! もっとやってくれないかな?」
「あはは……」
月美ちゃんは混沌が大好きなんだな……
その後、俺と小鳥は下半身は愚か、全て丸出しで大事な所に『みせられないよ!』がかけられた自称『ルナー・ニッチョン・ミツバチ体育連合』CEOを警察につき出した。
そして数日後にその変態が『レバノソ』という国に国外脱出をして『スロルカ・ソーゴ』という名前が世界中に知れ渡るとは思いもしなかったのであった。
この物語は全てフィクションです。作中に登場する施設、人物、組織、および国家はすべて架空のものであり、実際の出来事とは無関係です。




