番外編 第7話 イリスのタイムスリップ! 1
……あれ? ここは? 昔のアリサの部屋か?
とりあえず鏡があったので、見てみるとそこには小鳥が選んだ服を着たイリスがいた。
「体変わってないじゃん……いや、コート着てないし骨折してないから変わったのかな?」
コートを着なくてもいいならこの体は新しいものになってるはずだ。……待てよ。確か俺とアリサは凄い似てる。というか全く同じだったような……つまりこの体は……昔のアリサの体かよ!?
コンコンっ!
ヤバっ! 誰か来た!? どうすれば!?
「アリサ? 居るのか?」
え? その声……
「アリサ?」
そこには昔の俺がいた。
……なんで高校生なんだ? 今の俺はどうみても幼女……年齢が合わないぞ?
「アリサ? ずいぶん小さくなったな! お前こんなに小さかったか! ……将吾どうした? 漏らしたか?」
「漏らさんわ! いや、俺たちの目の前に居る幼女がアリサなら今俺たちの後ろで転んでるアホは誰だ?」
将吾が指した方向を見るとアリサが転んでいた。
「え? えっと……アリサが分身したのか?」
「そんな訳ないだろ。君名前は?」
……どうすれば!? ここでイリスを名乗って良いのか!? 未来に影響しないよな!? 俺は変わらないことを信じるぞ!
「……イリス」
「無愛想幼女可愛いな!!」
昔の俺ってこんな奴だったのか? 全然普通じゃねーじゃん。よく普通とか語れてたな俺……だんだん恥ずかしくなってきた……
「顔赤いぞ? 大丈夫か?」
「う、うん……」
「アリサ、立てるか?」
「うん、ありがと琴道」
将吾、見習え。今絶対俺の心配じゃなくて、アリサの心配してたら好感度絶対上がってたぞ。
「ところで、イリスちゃんだったよね? 何処から入ってきたの?」
知らん! 未来からだ!
とりあえず首を振っておくか。あまり喋らないようにしよう。思わぬところでボロが出そうだ。でも小鳥にだけは会わないほうがいいだろう。アイツは一瞬で見抜きそうだ。
それに今回は前世の俺も気をつけておかないとな。アリサと将吾はどうでもいいが、前世の俺はアリサたちほど鈍くないしな。自分で言うのもなんだが、結構鋭いしな。
「(ふるふる)」
「え? 知らないって……お父さんとお母さんは?」
これも首を振るしかないな。……トイレ行きたいな。
「(ふるふる)」
「そっか……ん? どうしたの?」
「おトイレ」
「じゃあ私が「いや、俺が連れていく。お前が行くと転ぶだろ」……ありがと。じゃあお願いね」
こんなところでアリサと将吾をくっつけようとする計画が邪魔してくるなんて思わなかった。アリサならモノを適当に物色できたのに……
「ここがトイレだ。さすがにトイレぐらい1人で出来るよな?」
「(こくこく)」
「そうか、じゃあここで待ってるからな」
トイレがボットン!!!
懐かしいな。アリサの家は昔からボットンだったからな……何かさっき俺に怪しまれてたし、トイレの使い方がわからないふりでもしておくか。
ぎゅっ!
俺は昔の俺の袖を掴んだ。……前世の俺とか昔の俺とかいい加減やめるか。もう別人だしな。
「どうした?」
「流れない」
「やっぱり知らないか。教えてやる。ここのレバーを引いて足元のここを押すんだ。ほら流れた。じゃあ手を洗って戻るぞ」
手を洗い終え、階段を上がる途中……
「あっ……」
うっかり足を滑らしてしまった。
こういうところだけは変わっていて欲しかった……これは琴道にバレるのも時間の問題だな。
とりあえず今はアリサから生まれた分身にしとくか。
「おっと大丈夫か?」
さすが俺だ。アリサのする行動が読めるように俺の行動も分かるのか。
「……お前実は知ってるだろ? 自分が何者でお母さんとお父さんが誰かとかさ?」
鋭すぎないか? まだ出会って10分も経ってないぞ。コイツ本当に俺か?
「ほら、知ってるだろ? その顔は知ってるだろ? 言えよ」
怖っ……この圧迫感……アリサ、将吾助けてくれ……
「早く言わないと追い出すぞ?」
マズイ。我が救世主が来てくれないと俺の住む場所がなくなる。いや、小鳥にかくまって……もらえないな。だってこの時代の小鳥は冷たいもん。朱音も無理だな。過労で死ぬ。
悠司や啓介は……迷惑をかけても全く構わないが、未来でどう影響するかわからないからな。
それにもしかしたら未来に帰れるかもしれないし、戻った時にアイツらに弄られるのは困る。そもそもアイツらに頼むことが嫌だ。
「1分間だけ待ってやる」
3分じゃないのかよ。でもその間に我が救世主が来てくれるはず!
1分後……
「救世主は来なかったー」
「何言ってんだ? 早く言え。時間だ。追い出すぞ」
琴道はイリスを抱き上げる。
「言う! 言います! 言いますから離して!」
ドサッ!
「痛っ!」
落とすな!
「早く言え」
怖っ……漏らしそう……今ここでヤツが現れたら終わりだな。
「私はママの娘です……」
「そのママは誰だ?」
聞き流してくれませんよねー仕方ない、諦めよ。
「……アリサ」
「は?」




