第34話 お泊まり会前日説明会
今日は毎年恒例の校外学習の説明の日だが、今年は6年生ということだけあって学校にお泊まりらしい。
「えー6年生の生徒諸君には沢山のレクを楽しんで貰います。その中でも夜の肝試しは毎年盛り上がってるので楽しんでください」
肝試しか……面倒だな。どうせ先生たちが教室かどこかに潜んでるだけなんだし、そもそも幽霊が見える俺には何の意味もない。はっきり言ってゴミ。
「イリスちゃん、楽しみだね!」
「そ、そうだね」
光ちゃんは浮かれてるな。そんなに楽しみなのかね?
「イリスちゃんとお泊まりなんて初めてだよ! もう死んでもいい!」
「いやいや、今死んだらお泊まり出来ないから」
こんなに浮かれてる姿を上司に見られたらどう思われるんだろうな。ん? 体育館の入口から見てるほっこりしたような顔をした二人のおっさんが……
「光ちゃん、光ちゃん」
「なにイリスちゃん!」
浮かれていらっしゃる。
「アレ……」
俺は入り口にいるニヤニヤしてる護衛たちを指さした。
「なっ!? これは違っ!?」
「お嬢もやっぱり小学生ですねーもっと普段からそんな感じに接してくれれば」
「うるさい!」
チーン!
「うぇ!」
バタンっ!
うわっ! 痛そ……
「おい、しっかりしろ! 戻ってこい! 小林! 小林ぃぃぃぃぃ!!」
あの人小林って言うんだ……
「あれ? お父さん?」
「「え?」」
まさかの蒼真くんのお父さん! 世界って狭いんだな。
「お父さん! しっかりして!」
「蒼真……俺は前を歩み続ける。だからお前も俺みたいに前を進んでくれ……とまるんじゃねーぞ……」
「お父さんーーっ!!」
小林ファザー……君のことは忘れない。今まで護衛ありがとう。
「……雄大。ありがとう」
小林ファザーは雄大っていうのか。どうでもいいな。
「えっと、話を再開してもよろしいですかな?」
oh……そういえば今は説明中だった……
「「「すいませんでした」」」
その後説明は終わり、今日は解散となった。
「お姉ちゃん! 帰ろ!」
「アリス……いい加減友達と帰りなさいよ」
「……アイツら屑なんだもん(ボソッ)」
おい今なんて言った! お前の方が屑だってことに気づけ! キモデブ風情が!
「まあ、いいや。帰るよ」
「うん!」
「全く、イリスちゃんはなんやかんや言ってアリスちゃんに甘いんだから……身長イリスちゃんの方が小さいのに……もうアリスちゃんがお姉ちゃんかな?」
「同感ですね」
「うるさいよ!」
そういえばイリヤちゃんはいつからそこにいた?
俺たちは下校した。そしてその途中……
「わんっ!わんっ!」
ん? 何故にルーシー? お前家にいろよ……
「きゃ!」
「わんっ!(主! これが私と主の長い生活で生まれた成果です!)」
ポフッ……
なんだこの成果は…絶対俺のことバカにしてんだろ…
「まさか犬にまで仕付けてるなんて!」
「さすがイリスちゃんです! やることが常に斜め上を行きますね!」
「別に仕付けてないんだけど……ところでイリヤちゃんは私がドジでないことを証明するんじゃなかったの?」
「ああ、アレですか。諦めました。貴女は正真正銘のくz……ドジです」
おい待て今なんつった! クズって言おうとしたよな! 確かにこの5年間で違うクラスだろうと関係なく毎日欠かさずにお弁当をイリヤちゃんを中心に引っ掛け捲ったが、わざとじゃないんだよ! 今じゃお弁当要らないんじゃね? とか思ってるんだからな!
「貴女なにか不満そうな顔してますけど、私はあのお餅を髪にくっつけた事件を忘れませんよ!」
「その件はたくさん迷惑掛けました。誠に申し訳ございませんでした」
「ちょっ! こんな所で土下座しないで下さい! 私が変な目で見られます!」
いやーあの時は壮大だった……餅つき大会で先生と餅をつくんだが、その時になぜか餅が爆発して、クラスメイト全員に引っ掛かったんだよな。それで俺だけ身長が低くて当たらないっていう凄い外道な感じがしたな。
ちなみに犯人は小鳥でした。アイツお餅の中にお餅に溶ける感じがするほどにまで小さい超小型爆弾をいくつか仕込んでやがった。もちろん痕跡とかを残すやつじゃないので、事件は迷宮入りになった。俺は事件が迷宮入りになったから犯人が分かったので証拠も何もないので意味がない。
結局その時餅をついていた俺が犯人扱いされ「まあイリスちゃんだから仕方ないね」とか言われる始末だった。けど、身内がやった事なので土下座をする。
それで、犯人が分かった日に俺は小鳥が大切にしていたメダル(という名の小銭)の隠し場所をタンスの中から照明の裏に移しておいといてやった。すると見事なまでに、翌日に俺のタイツとパンツとズボンが全て消滅していた。おかげで寒いのにニーソでノーパン登校する嵌めになった。
そして、体育の更衣中に転んでクラスメイト(女子のみ)にバレた。ちなみにその時の女子たちの反応は「まあイリスちゃんだからね」だった。その時ばかりは何も反論が出来ませんでした。
「わんっ!(主! どうぞ乗ってください!)」
「歩くからいいよ。ありがとうルーシー」
「くぅん……(主……こんな私に気を使って……)」
最近はルーシーもこんなことを言い出してる。さすがに犬に乗る訳にも行かないので、毎回断っている。
「イリスちゃんもしかしてルーシーの言ってること分かるの?」
やべっ! 隠してたのに……仕方ない、平然に答えよう。
「逆に分からないの? 人間も落ちたものね」
「わからないよ! あといきなり人間を見下さないで!」
「人間なんて下等生物、滅ぼしてくれるわ! このルーシーが!」
「「「ラスボス!? しかもお前がやるんじゃないのかよ!」」」
3人ともすっかりツッコミ癖が出来てきたな。
「でも凄いね。今なんて言ってたの?」
「私に乗れって言ってた……」
「へーそんなこと言うんだ。凄いね」
でしょ? ……うちのルーシーは優秀なんだよ! ……アリスよりもね!
「主が転ぶのを予測してるだけではないでしょうか……」
「同感! お姉ちゃんすぐ転ぶからね!」
「アリス黙ってなさい!」
帰宅後、俺は明日の準備を済ませ、夕飯を食べて、下着を含めた衣類が鞄に入ってることを確認した後に寝た。




