第32話 ルーシーとお散歩
今日からはストックが尽きるまで毎日投稿します。
あれから冬休みなんてすぐに終わり、春休みになった。もう来月からは2年生である。
「早いね。もうイリスは2年生か……アリスもルーシーも大きくなったね」
「わんっ!(主も大きくなっ……何でもないです)」
「は?」
「わんっ!(何でもないですよ!)」
いや、絶対コイツ自分がたったの1年で俺の腰より少し上ぐらいにまで大きくなったからって調子に乗ってんだろ。
「どうしたのイリス?」
「何でもないよ」
「ああ、もしかしてしんちょ「何でもない」……そうですね」
「アリサ、最近イリスちゃんに敷かれて来てない?」
「…………」
そういえばそうかもな。アリサって結構アレだからそこを突いてるだけなんだが……
「イリス!」
「な、なに……」
アリサがガバッ! って感じで俺の肩を叩いた。
「お願いだから不良にはならないで!」
「…………」
ならねーよ。いくら何でも自ら幼なじみに迷惑なんぞ掛けねーよ。たまたま偶然的に迷惑を掛けた場合は知らんが……
「わんっ!(遊ぼ! 遊ぼ! 散歩行こ!)」
おっと、ルーシーが呼んでるな。行かなければ(使命感)
「ルーシー! 散歩行くよ!」
「わん! わん!(今行くナリ!)」
うおっ! なんだコイツ! 行きなり何言ってんだ!
「イリスちゃん、どうしたの?」
「小鳥お姉ちゃん……」
お前の仕業か。さてはルーシーに余計なことを仕込んだな。まあ、今はいいだろう。
「じゃあ行って来ます!」
「「行ってらっしゃい!」」
俺はルーシーに首輪を繋いで、袋を持って散歩に向かう。
散歩コースはまず、家から神無月公園へ向かい、神無月中学の前を通り、次に商店街、ネオン、水無月小学校で家
これが小鳥とルーシーの散歩コースだ。ちなみに俺の場合は
家、神無月公園、商店街、家だ。
俺は体力が少ないから仕方のないことだ。
「今の何の紹介なの! 絶対最初の小鳥先生の流れ不要だったでしょ!」
「光ちゃん……なんで私の心の声が聞こえてるの……」
「イリスちゃんの考えなんてお見通しだよ! でも光も商店街までお使い頼まれてるから一緒に行こうよ」
まあ、たまにはいいか。1人でいるよりは退屈じゃないだろうし。
「うん、そうだね。行こうか」
「じゃあ主発!」
俺と光ちゃんはまず、神無月公園に向かった。
「イリスちゃん、あれって先生じゃない?」
光ちゃんが指した方向を見ると全身タイツがいた。
「……スルーしよう」
「そうだね。先生って普段着あんな感じなんだ……」
気持ち悪いよな……あんなショッ◯ーの戦闘員みたいな服が普段着なんて……
「わんっ!(糞してぇ……)」
「言い方!!」
メスの犬が放っていい台詞じゃない! どう考えても中年親父の心の声だろ!
「イリスちゃんどうしたの?」
「あ、ごめん。ルーシーう◯ちだって、ちょっと待ってて」
「あっ、うん」
「(謎の効果音)」
汚いな……もう少しまともな音は出せないのか……
「終わったかな? よいしょ」
俺はルーシーの糞を処理するためにしゃがんだ。
プゥェェェ……
「ルーシー!!」
この野郎許さん! おっさんみたいな屁をこきやがって!
「イリスちゃん、ルーシーは犬だから仕方ないよ!」
「わんっ!(そうそう、犬だから仕方のないことだ)」
くそ野郎が! 次やったらメンチカツにしてやるぞ!
「全く……はぁ、回収しないと……」
俺は再びしゃがんでルーシーの糞を回収する。
「しろ……」
「光ちゃん? どうかしたの?」
「ううん、何でもないよ。じゃあ商店街行こうか」
今なんか失礼なこと言われてた気がしたが、なんて言われてたんだ?
俺たちは商店街に移動した。
「光そこ寄っていい?」
「だめ」
「うん、じゃあ行ってくるね」
行ってしまった……光ちゃんのスルーする回数が増えてきてるような気がする……
「ただいま、ところでイリスちゃんさっきダメって言った?」
「ん? 言ってないよ?」
「そう? ならいいや」
単純に聞こえてないだけか……
「おう、イリスちゃんじゃねーか。ルーシーちゃんのお散歩かい?」
「はい」
この人はよくいる商店街のよく会話する魚屋さんの店員Aといっても魚屋さんの店員はこの人だけである。
「そろそろ暑くなってきたな。イリスちゃんもそろそろ衣替えとかしたらどうだ?」
「私はこれで1年を過ごすんですよ」
「おいおい冗談キツイぜ」
いや、これマジなんだけどな。
このおじさんと知り合ったのは11月の時、アリサの買い物について行った時にアリサがお店の魚をいろいろやっちゃって、沢山謝った時だ。
「はっ! あの時は母が迷惑掛けてすいませんでした!」
「いや、もういいさ。気にしちゃいねーよ。ほれ、これ持って行きな」
おじさんは鮭を差し出してきた。
「いえ、貰えませんよ! お店に迷惑掛けてるのに!」
「そうか? 俺がやるって言ってんだから受け取れ。焼き鮭はうめーよな?」
「うっ……ううっ……やっぱりダメ!」
俺は鮭を受け取りながら言った。
「言ってることとやってることが逆!!」
「はっ!」
いつの間に! 俺はなぜ今、鮭の入った袋を手に持ってるんだ!
「イリスちゃんは焼き鮭本当に大好きだな」
うまいんだから仕方ないだろ。
「お友達かい? 学校とかでイリスちゃんはどんな感じだい?」
「毎日のように迷惑掛けてます!」
おい、今のはどういうことだ? 確かに迷惑掛けてるかも知れない……いや、絶対掛けてるが、そういうのは普通黙ってるものだろ!
「ハッハッハッハッ! さすが親子だな! ほら、ルーシーちゃんが暇してるぞ。早く行きな」
「はい! おじさん、鮭ありがとう!」
「おう、また買いに来てくれよな!」
「行くよルーシー」
俺と光ちゃんは家の前で別れて、家に帰った。
「ただいま! ママ! 魚屋のおじさんから鮭貰った!」
「イリス……また貰ったのね。仕方ないわね。今日も焼き鮭にしましょうか」
「やったー!!」
焼き鮭キターーっ!!
「イリスちゃんが子どもらしいのって、寝てる時かこういう時だけだよね」
「そうね。どうしてこんな娘になっちゃったのかしら……」
「……」




