第27話 新しい家族~new family~
あの翌日に俺は退院した。光ちゃんはもう少し入院するらしい。なぜ俺の怪我が治ったのかは未だに謎である。
そして退院した翌日、つまり今日、俺は学校を休んだ。
「イリス、買い物行くわよ!」
「はーい!」
俺はアリサに連れられ、買い物に出掛けた。今日はたまたま将吾が休みだったので、アリスを含めて4人で買い物に行った。そう、断じて将吾が「俺もイリスとみんなで買い物に行きたい」とか言った訳ではない。
俺たちは車に乗って、たまにはということでデパートに来ていた。
「うっ、気持ち悪い……」
「ごめんね! 酔い止めのことすっかり忘れてたの! なにか買ってあげるから!」
おのれアリサめ……許さん……
「イリスは何か欲しいものとかあるのか?」
「うーん、特には……」
見た方向にはペットショップがあった。ペットか……どうやって飼えと? 俺が欲しいと言っても散歩以外のお世話とかは全部アリサがやることになるぞ? あの犬可愛いな……
「まずどこ行くの?」
「買い物は後にしてなにか見てまわろうか」
俺たちは適当な場所を見てまわった。
ちなみにここまでにあった事故の回数はこんな感じだ。
アリサ:躓き35回、転倒15回、アリスを落とした回数5回、俺に向かって倒れてきて俺が下敷きになった回数5回、鞄をぶちまけた回数5回。
俺:躓き20回、転倒2回、アリサがアリスを落としたことによって下敷きになった回数3回。
将吾:アリサと俺の転倒阻止回数38回、
アリサがアリスを落とした時にキャッチした回数2回、
アリサの財布が窃盗されるのを防いだ回数7回。
いやー将吾の有能さがよくわかるなーっていうかアリサの財布狙われ過ぎだろ……まあ5回も鞄ぶちまけた奴だから仕方ないな。
「お前ら、いい加減にしてくれ」
「「ごめんなさい……」」
仕方ないだろ、これは遺伝なんだからよ。
「まあそんなところも可愛いんだが……」
「将吾!! 嬉しい!! 今晩はごちそうにしましょ!」
相変わらずのバカップルだな。もう30超えてるのに……少し妬くな……
「むぅ……ご老人ども! 早く行くよ!」
「「まだそんなにいってない(わよ)!!」」
「まーま、まんま」
「アリス、お腹空いたのね。じゃあお昼にしましょうか」
アリス演技上手くなったな。
お昼はデパートにあるフードコートで食べることになった。
「じゃあ買ってくるわね」
「いやいや! 俺が買ってくるから!」
そうだな。アリサが買いに行ったらぶちまけて終わりだもんな。
「そう? じゃあお願いね」
「任せておけ! 『うどぅん』でいいか?」
「そうね。『うどぅん』でお願いね」
『うどぅん』!? ……うどんのことか。
こういう時はいつもうどんだな……俺が死んでからどんだけうどん好きになったんだよ……
数分後……
「待たせたなイリス、これが最近有名な『うどぅん』だ」
有名なのか…確かに見た目は『うどぅん』としか言えない見た目してんな……これは『うどぅん』だな……
「じゃあ食べるか」
「「「いただきます!」」」
ひょいひょいひょい……
俺とアリサはネギを将吾の『うどぅん』の中に入れていく……
「お前ら、ネギくらい自分で食え。それにイリスはともかくアリサは子どもの前だぞ?」
「そんなの関係ないのよ! 私は嫌いな食べ物は食べない主義なの!」
そういえばアリサの嫌いな食べ物って家じゃ出てこないな。たまに小鳥が作った時に出てくるぐらいだし。あとはお弁当の中に入ってるだけだし。まあ、お弁当なんて作るだけ無駄なんだよ。なぜなら、全部ぶちまけるからな!
最近クラスメイト達も「あーまた今日もやってるわー今日の被害者は蒼真くんかぁ……」って感じでフォローしてくるんだよ! しかもフォローする速度も上がってきてるんだよ! あの無言でフォローしてくる空気がマジで辛いんだよ! ……ん? アリス?
「まーま、まんま」
「「……」」
お前ら気づいてやれよ……
「……」
あっ、やべ。目があった……剃らそ……
「ねーねーまんま」
こっち見てくるぅぅぅぅ!!! やだなーーコイツの脳内じゃ幼女にあーんをされてるんだろうな……仕方ない。うどぅんってどうやって食べさせるんだ? ……無理だな。ガキには無理だ、諦めろ。ミルクぐらい自分で飲め!
「ねーねー」
「自分で飲まないとダメ! アリス! 自分で飲めるようにしなさい!」
俺はアリスにミルク瓶を持たせる。
「チッ」
おいっ!? 今完全に舌打ちしたな! 1歳児がすることじゃないぞ!
1時間後……
「さて、買い物も終わったし、帰ろうか……イリス?」
はっ! ペットショップの犬と戯れてる妄想をしてた!
「あの犬が欲しいの?」
「……」
「私は欲しいな……イリスはいらないの? いらないなら私だけ買って貰おうかな?」
それは汚いぞ……
「欲しい……」
「将吾、いい?」
「ちゃんとエサはやるんだぞ。やり忘れなんてことはやめろよ」
アリサにエサをやり忘れるななんて無茶なことを言うな……ついさっきもアリスにミルクをやり忘れてんだぞ?
「こ、小鳥が頑張ってくれるわよ!」
「自分で頑張れよ……まあ、せっかくのイリスの頼みだ。何かあったら小鳥に任せればいいか」
別に頼んでる訳じゃないんだが……
「すいませーん、あの小犬ください!」
「ありがとうございます! あの、ペットを飼うのは初めてですか?」
「はい」
そのあと店員さんのペットマニュアルトークは1時間掛かった。半分くらいはどうでもいいような世間話だった。ちなみに犬はクバーズという白くて大きな犬だ。ついでにいうとメスで産まれて数週間だ。
「この子の親はドジな人向けに調教された犬なんですよ。お客様にはぴっ……いえ、失礼」
今ピッタリって言おうとしたな。もしかして俺たちこの数時間で有名になったのか?
「ところで名前はどうします?」
名前か……そうだな……
「ルーシーで!」
「「「英語の教科書か! しかもそれ人名!!」」」
いや、この前ルーシーっていう名前の犬がいる英文あったぞ。
※マジです。ちなみに外国の犬だとルーシーは人気の名前だったりします。
「まあ、外国でしたらそういう名前も多いですし、本人が決めたならいいんじゃないでしょうか?」
「そうね……ルーシーでいいの?」
「うん!」
「じゃあルーシーね。よろしくねルーシー」
「ワンっ!」
アリサ、なついたって思ったか? 残念だったな。今はそっぽ向いただけだ。ところで何故この小犬は俺のことをずっと見てくるんだ? クバーズって警戒心が強いんじゃないのか? ちょっと見すぎじゃないか?
「わんっ!」
「えっ!? ちょっ! きゃっ!?」
ドサッ
「わん!」
「~~~~~~~~~っ!?」
ルーシーがいきなり俺を押し倒してきて、そのまま俺のことをペロペロしてくる。
「な、なんで私にはそっぽ向いたのに……」
「まあ、そのうち馴れるさ。すいませーん、ペット商品をとりあえず1セットください」
「わん! わん!(お前主! 大好き!)」
ん? 今なにか聞こえたぞ? き、気のせいだよな……別に幽霊が見えたからって犬の声がわかるわけないもんな。
「わん! わん!(主! 主!)」
……誘拐されて俺は頭おかしくなったのか?




